第4話 街の事を知ろう
街の事を知るために情報収集します。
夕食の席において、タカは引き続きの情報収集だ。
またひょっこり、安藤語録が頭に浮かんできたからである。
『戦場の霧がどの戦場でもでるらしいなぁ。しかし、どれだけ集めても満足はいかねぇし、完璧に敵の裏をかけると確信に足る情報を持ってても、それがほんとかは分からねぇ。しかし、お偉方が決断するに信じられる情報を持ってくるのが、俺たち斥候の仕事だろう。その真偽はともかくな。』~安藤語録その2~
そういうことで、情報をとってくるだけの、今回は安全なお仕事です。
「メリー、隣町との取り引きはどうだった?やはり、厳しいのか?」
「えぇ、このコロン産の鉄鉱石が年々、産出減少してるのもよくないわね。あとは、この街特産の民芸品や雑貨なども毎回売れる訳じゃないの。」
「やはり、そうだよねぇ。街の税収も減ってるからなぁ。人が出ていくのは止められてないね。なにか目玉となるようなものがないもんかねぇ。」
どうやら、この街の先行きはまずそうだ。おいおい、優秀な兄上、帰ってこいよ、まじで。
なにか、この街でも使える物資で作れるもの、又はこの街に何か根付くような技術を作り出すしかないのではないか。とりあえず、タカは父上に聞いてみることにする。
「父上、この街の特産は鉄鉱石だけなんですか?他の鉱石がとれたりしないのですか?」
「お、珍しい。タカがこの街のことに興味を示すなんて。いや、鉄鉱石が一番売上げがいいからね。他にも銅や錫が取れるが、くず鉄同然の値段だね。あとは、よく分からない金属がとれるが、ほとんど捨ててるな。」
「そのよく分からない金属たちを精錬したらなにか金属を分離できるんじゃない?あとは鉄鉱石の精練技術を高めて、鉄のインゴットの値段をつり上げるとか?」
「ほぉ、勉強しているじゃないか。だが、その精練技術を高めるべき、技術者がこの間の流行り病て亡くなってしまってね。いまはその娘さんが鍛冶場を継いでやっているが、かつての技術者たちも都会にもどり、いまのところは普通に営業するだけでも一苦労なんだよ。ふぅ・・・どうしようか、ほんとに」
「あなた、だから都からいい腕の技術者を厚待遇で呼びましょうって言ってるじゃないですか。その後押しのために、我がコロン商工会としては都でロビー戦略をとり、森と湖の綺麗な高原地帯って謳い文句で、疲れはてた有能な官吏や技術者を呼び込もうとしてるんじゃない♪」
母メリッサは恐ろしいことを言っている。前世の俺なら落ちているな、その謳い文句に。なるほど、俺は有能ではなかったが、生活に疲れて逃げ出したくなっていた。そんな人間を都会から田舎へと誘おうとするなら、そのよえな言葉が必要であろう。言葉の魔力は恐ろしい・・・。
「しかし、なかなかその成果も芳しくないな。成果はゴロリを都の冒険者ギルドから得たのみだ。」
おお、冒険者ギルドといったか、父上!しかもあのクマさんが冒険者ギルドにいたと。いやー、いつか冒険者というのもやってみたいもんだが・・・、いや、やめておこう。のびのび生活じゃなさそうだしな。
母上はそれに笑みを浮かべつつ、答える。
「それはギルドの謳い文句というよりは私たちの単純な人付き合いの成果でしょ(笑) 持つべきものは昔の仲間よねぇ。」
お、両親は昔からゴロリと知り合いなのか?ということは、ゴロリが冒険者ギルドにいるときからの知り合いなのか、はたまて、ゴロリも含め、両親も冒険者をやってたことがあったのかな?
新情報をゲットだ!
とりあえず、気になることを聞いてみた。
「母上たちは冒険者をやってたことがあるのですか?」
「そうだぞぉ。17歳から27歳の10年間だけな。お前のじい様、つまり先代の街長が引退するまでの間はいろいろやってたんだわ。メリーだって先代の商工会長が引退するまでな。」
「あれ、お二人の父上たち、つまりお祖父さんたちは亡くなったんじゃないんですか?」
「生きてるわよ、バリバリ。引退して、悠々自適に、好きなことして大陸をまわってるらしいわ。あなたのおばあちゃんたちは、都の近くで、家建ててお茶飲んでくらしてるわ。」
よし、隠居しよう。
「ねぇ、父上・・・」
「ダメだからな、隠居は。後継者決めて、弁護士に証明してもらわんといかんからな。さらにそれを相手ともう一人保証人が認めんとできん。よって、お前が勝手に隠居することは不可能だ。」
・・・
封じられてしまった。おかしい。まだ、俺の夢は誰にもこの世界の人には漏らしてないのに。
「あなたはよく、仕事をしたくない。早く隠居したいって言ってたものね」
おどろいた。タカレーンは隆康と似た思考の持ち主であったみたいだ。少年でこの考えはダメなやつだな。
・・・
・・・
なんか誰かがお前が言うなと言ってる気がする。まぁ、いいや。
「とにかく、真面目に働きますよ。この街が豊かになるまでは。」
「それでこそツアード家の男だ!次世代は頼んだぞ。」
父はそういうが、あいにくこちらは隠居(夢)の実現のため、待ってはいられない。 その足がかりを探そうとしよう。
「ところで父上、母上。いま、この領内で、あったら便利なものや、無くて困ってるものってありますか?」
「あったら良いものかぁ。うーん、機織り機が壊れてるので、布が作れないのと、作れたとしても、どれも同じ色の布になっちゃうのよねぇ。足りないものは有りすぎてすぐには言えないわ。」
「うーん。必要かは分からんが、この街には旨いものが少ない気がする。それさえあれば、街に人が呼べるんだがなぁ。」
ふむふむ。暇があれば、そのあたりから取りかかるとしよう。
タカは不敵な笑みを浮かべつつ、夕食を終えるのであった。
情報収集の結果、母親は策士なようです。
そして、隠居のみちが現在は閉ざされているので、そのためにやらねばならないことを見つけました。