第29話 準備と出立
隆康は準備を進めながらも、鳥形ドローンにミーヤと別れた男を上空から追跡させていた。彼が何者か判明すればよし、しなくともなにがしかの繋がりをもつ輩に接触するだろうと踏んで、オートで追跡させているのである。
動きがあれば知らせを出すように命じ、隆康は旅の準備をしていた。
パンツは一週間分とその予備、着替えも7着と、薬関係、馬車移動中の暇潰し道具、本類などなどを用意すると、とてもではないが鞄1つでは収まりきらない。
仕方ないので、隆康は異世界の御約束。収納魔法を創造の力で作り出した。 隆康の左側に亜空間が出現し、左手を突っ込むと、そこに物が出し入れできるようになった。
さらに、隆康は旅行鞄にも収納の魔法をかけ、容量を倍増どころか、10倍にした。
鞄だけでもいい気はするが、鞄だと盗られてしまうかもしれないので、当たり障りないものは鞄、大事なものは亜空間にいれることにした。
さて、準備も整ったが、まだあの男は街道を進んでるところか・・・
なにか動きがあればいいな。ミーヤは同じように監視しているが、まぁさほど重要ではない。街にとって死活問題な情報漏洩でもなし、多目に見ることにしよう。なにせ美人だし(笑)
それに、あれから諜報に重点をおいた創作物をいくつか作った。
ネズミ型、ハエ型、彫刻型、馬車型など、日々の生活でどこにでもある生物、道具、物品に紛れ込ませ、町中にはなったのだ。
その情報統括を司るゴーレムを屋敷の地下(勝手に作って、隆康の部屋から隠し扉で行ける)に配置、そこに情報統括本部を設置して、 日々、念話又は音声で報告させるようにしている。
あとは、隆康の不在間に街に驚異があった場合に、直接的に対応するゴーレム部隊を1000体、街の四隅に配置、これは壁の下に地下(これも勝手に作った)を創り、四方の壁の守りとして配置したのである。
加えて、脅威を未然に防止する諜報上の実行部隊を100体創りだした。これは、アンドロイドと言った方が正しく、百人十色な容姿と能力を持たせた。
最後に、これらのことを考えるのもめんどくさくなった隆康は、AI搭載のマザーコンピューターを情報統括本部に据えて、必要なことは全てそのマザー(隆康命名)にさせ、指示させることにした。
これで万全!!
隆康は、時計を見ると、すでに朝の8時となっていた。徹夜してしまったが耐久力のおかげで眠たくはない。
あとは皆で一緒に朝食の時間である。
隆康は食堂へと向かい、階段を降りる。食堂内にはすでに父、母、みんなが揃っていた。
「おはよう、タカレーン。昨日遅くまで荷造りしてたみたいだが、大丈夫か?」
父母は心配そうである。
「おはようございます、父上、母上。ええ、少し荷造りに手間取りまして・・・。でも今日は元気一杯ですよ。」
まぁ、まったく寝てはないが、元気なのは確かだ。
「今日から王都までの道程は約一週間だ。そこまでの街や村を見て、見聞を広めてきなさい。」
「はい、わかりました、父上。」
さすが、街長は仕事の話から入るな。
「身体に気をつけて、風邪を引かないように、無理をしないようにね。」
「はい、気を付けます。母上。」
母の心配はありがたいな・・・前世の母は隆康が小さな頃に亡くなっているが、母の気遣いが愛なんだろうなくらいは分かる。
皆での食事は終え、出発の時間となった。
父がつけてくれると言った案内兼護衛は、やはりうちの護衛ゴロリであった。
「よろしく、ゴロリ!」
「はいよ、若!じゃあ。馬車に乗ってくれや。」
「向こうについたら、王都の役人で、ムローラ・ラムズというものがいるので、訪ねなさい。役場か酒場にいると思うよ。」
「タカレーン、健やかにね。」
「わかりました。父上、ゴロリが抜けた守りの兵力は屋敷に置いているゴーレム10体をお使いください(ほんとは地下にいっぱいいるけど。)。私の部屋の机に操作用の腕輪を置いてます。父上と母上だけが使えるようにしてますので、庭の草むしりなり、護衛なりにお使いください。では、父上、母上行って参ります。」
こうして、隆康は王都へと旅立つ。
ちなみに、街の中心でセシリア、オリビアと、アンを拾っていく。セシリア、オリビアは準備のため、昨日から街で買い物をしてアンのうちに泊まっていた。アンも王都の鍛冶屋を見に行きたいとのことで、同行することになった。
こうして5人組のパーティーとして、王都へと出発したのであった。
話の王道。
王都への出発です。
いやー、こういう展開が書いてみたかったんです。




