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第28話 戦後処理2

地下牢への道をこつこつと降りていく。隆康は初めて通る道であるが、こんな感じであろうなと想像はしていた。

そこはしっとりと湿度があり、夏場は暑く、冬場は寒いであろう空間である。また、例に漏れず薄暗いため、等間隔に並んだランプがなければ足元が見づらく、奈落へと落ちていくような錯覚を起こす。

少なくともこのような場所には収監されたくないものであるが、隆康は耐久力のおかげで、自分が思っている以上に平気な気がする。


そうこうしていると、階段のしたの方に明るい部屋が見え始め、そこから悲鳴と無機質な尋問の声が聞こえてきた。


隆康は部屋の前に到着すると、そーっと部屋の中を覗いてみた。


中では、すごく外見の怖そうなゴーレムが、盗賊で捕虜となった哀れな男一人に尋問を行っていた。ちなみに、拷問ありでだ。


男は手足が大きく腫れ、顔も血の気が引いている。


隆康はゴーレムに制止の魔法をかけ、尋問内容の読み取りを行った。要領はゴーレムの背中に隆康の魔力を通せば、記録した尋問内容が頭の中に流れるよう設計していたのである。


それによると、この盗賊たちはコロンよりもっと東で活動していた賊で、ある男から資金と武器を融通されるとともに、コロンの街を破壊、蹂躙する際に、お針子を確保するように言われたらしい。

されど、そのお針子も必ず連れてこいというわけではなく、コロンの街が崩壊するならそれでいいとも言われていたらしい。


命令をした男の顔や名前は分からないようで、黒いローブ、フードを被った男らしい。


あとはどれだけ拷問しても命乞いしかしなくなったので、別のやつに尋問をし、他の捕虜四人に確認したところ、どれも同じような感じらしい。


ちなみに、このゴーレムには捕虜の中で女を陵辱した者や、生死不問(デットオアアライブ)の犯罪者は殺していいと命じている。何よりも屈辱的で凄惨な殺しを他の捕虜に見せろとインプットしている。


その成果もあって、四人の捕虜があっさり口を割ったのである。


処分された捕虜には指名手配が二人いた。盗賊団のリーダーで、それぞれの地域で殺人、強盗、強姦、放火のなんでもありを6年~10年も続けた輩であった。この二人には手足を砕いたあとに、下から上まで風穴をあけてもらった。


今回、救出された隊商の女を強姦した者三人は、ケツから燃えた鉄棒を突っ込み、さらに煮えたぎった湯を流し込んで苦しみながら死んでもらった。ちなみに、本人の下半身であるムスコは2度と使えぬよう切り落としたのは当然である。


隆康はこれらの事項もゴーレムから受け取った。さすがに眉をひそめる内容であったが、これもまた耐久力でなんとかなり、隆康の中ではスルーされた。


「よし、とりあえず、大体のことは分かったね。尋問した捕虜は奴隷商人に売却、死体は指名手配のやつを役所に提出後、他の死んでるやつとあわせて焼却。灰は街の外に五メートルは穴掘って埋めときな。」


ゴーレムは了承の意味も込めて軽く会釈すると、男たちと死体を一気に運び去っていった。


隆康も父の待つ役場へと戻ることにした。


「ちょっとやり過ぎたかもしれんが、この街を狙ったやつについてはさらなる調査が必要だな。」


隆康は鳥形ドローンのように偵察活動に任ずるゴーレムの必要性を感じたのであった。




隆康が役場の父の執務室へ通されると、衛兵隊ドルハと父の秘書が部屋にいた。

「おお、タカレーン殿。この度は大勝利でしたな!あなたのお陰で街のだれも死ぬことなく、盗賊どもを一網打尽とすることができました。しかも、私たちにも手柄をたてるチャンスを進言してくださったとか。ありがとうございました。」


ドルハが顔に似合わぬ殊勝な態度で礼を述べてくる。


「いえ、必要な采配を父上に申しあげただけです。それよりなにより、ドルハ殿指揮下の衛兵隊、警備隊は御勇戦でしたね。」


「ときに、タカレーン殿、私の記憶では鳥形のゴーレムを魔法で作り出していたように見えたのですが、あの技はどのようにして身に付けられたのですか?」


珍しく父の秘書が隆康に尋ねてくる。この女はミーヤといったか。できる秘書感が半端ないいい女である。


まぁ、ここでも当然、隆康の下半身は不動であったが・・・。


いい女になにか聞かれるというのは大変気分がいいので、差し障りのない答えをする。


「自力で考え出したものと、諸外国の魔法を調べたものとがありますよ。まぁ、いまも研鑽中で大したことないです。」




「はあ、それでもすごいです。尊敬します」


なんだか、秘書さんの評価がやけに高いぞ。これは俺に惚れてるんじゃなかろうか・・・、とは思わない隆康である。


久しぶりに悪友、安藤語録を思い出していた。


『お前は自分がモテると思ってるのか?ほんとに思ってるならめでたい野郎だな。この先、困らんようにお前に言っておくことがある。「俺はモテない」を10回言ってみろ・・・・・・、そうだ、お前はモテない。だから、ハニートラップにはかからない。良かったな。』



・・・


・・・。


思い出して、悲しくなった。


そうこうしていると、父が執務室に戻ってきた。


「タカレーン。よくやったな。この街は防衛に成功した。いちおう、被害がないか、各所を見て回ったがどこも被害は報告されておらん。王都には盗賊の襲撃に対する防衛戦の報告をせねばならん。その報告にお前が行ってきてくれないか?

手紙を王都の役人に渡し、いくつか言伝てをこちらに持ってかえってくればいい。王都見物や旅行をしてきて構わないから。頼む。」


隆康には願ってもない依頼であった。いずれは行ってみたい町の一つであるからだ。


「分かりました。いいですよ。同行者はこちらで選んでもよろしいですか?」


「あぁ。こちらからは道案内兼護衛の人間をつけるが、他は好きにするといい。出発は明日だから今日は一週間分の荷物を準備しなさい。質問は?


じゃあ、行きなさい。今回はほんとに助かったよ。また屋敷でな。」


隆康は父や衛兵隊長ドルハ、秘書のミーヤに別れを告げ、執務室を後にしたのであった。




この日の夜、コロンの街の一角で、人知れず密会する一組の男女がいた。


男は女から何かを受けとると、足早に立ち去り、女は反対方向へと歩きだした。月は出ていない夜のことであったが、一羽の鳥が上空を飛んでいるのに、男女は気づかなかった。


歓楽街の街灯の明かりに照らされた女は、秘書のミーヤであった。



場所は変わって、屋敷の隆康の部屋にて。


「ふーむ、ミーヤが誰と会って、何を渡したかだが、大体想像はつくな。十中八九、この街の情報や俺の防衛手段だろうが、あれは序の口だし、多少はビビってもらわないとハッタリもきかんことだし、泳がせようかね。」


とりあえず、男とミーヤには上空を絶えず鳥形ドローンの1個班が付きっきりで監視している。


さて、明日出発前までにさらなる諜報型ゴーレムを創ろう。

そう言って隆康は創造の力を使い、手先から靄を出してゴーレムを次々と作るのであった。

戦闘が終わりました。


次は王都への冒険のはじまりです。

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