第26話 タカレーン自重せず
隆康が創造による戦闘準備?でなんやかんや作っていると、街の防衛準備は完了し、それと同時に南東の壁の物見が鐘をうちならして、賊の接近を知らせた。
「さて、父上。この街の防衛はだれが責任者なんです?」
「最終的には私だが、直接的には衛兵隊の隊長ドルハだな。警備隊は壁の防衛で衛兵隊の指揮を受けることになっている。」
「では、そのドルハに命じてください。敵が門を攻撃開始しても、すぐには応射しないで、頭上からの火矢に気を付けるようにと。」
「それはいいのだが、なぜだ?すぐ反撃しないとあとがなくなるぞ。それに投石機は壁にとりつかれたら意味がなくなる。」
「理由はいろいろありますが、投石機は奥の手ですし、初っぱなに見せてしまうのももったいないですよ。それに、矢を応射してしまうと捕虜の人たちが死にますよ。
せっかく油断して近づいてきてるんだから、こっちは一人も姿を見せずにやってみましょう。」
隆康はニヤリと不敵な笑みをこぼし、創作した兵器の起動ボタンを押した。
「ほいっ、ポチっとな」
隆康の手元に丸い青色の水晶がスイッチの代わりに現れた。
隆康はそちらに手を添え、魔力を流す。
「さぁ、戦闘開始だ。」
隆康たちコロンの街側の防衛戦が人知れず始まった。
場面は変わってコロンの街の南東門。
盗賊の集団は捕虜を前面に立たせつつ、火矢を街に射かけてきた。しかし、街からはなんの反応もない。
盗賊のサブリーダーは街の防衛準備が脆弱だと判断し、破城槌を6人に持たせ突撃させた。
まさに破城槌が門にぶち当たる寸前、破城槌を持った6人がバタバタと倒れた。
呆気にとられた盗賊たちはもう一度破城槌へと手下を走らせるも、またバタバタと倒れ、最後の一人は体をまっぷたつに血を大量に撒き散らしてやられている。
と、偶然にもその鮮血により門の前に紅い物体が見えた。
それは大刀をさげた大男であった。さっきまで見えなかったのに急に見え、そしてまた見えなくなったのである。
盗賊たちは動揺した。あれは透明で見えない何かがいるんじゃないか。あそこには実は兵隊がたくさん隠れているんじゃないか。
盗賊たちは恐怖のあまりそこに釘付けとなってしまった。
捕虜達のことをすっかり忘れて・・・。
場面は変わって、執務室の隆康たち。
隆康は水晶に逐次魔力を送り、兵器へと指示を出す。
この兵器はインビジブルゴーレム(試作型)。特性として、不可視のボディに人間の20倍の力を持つゴーレムだ。
また、魔力を最低限にすれば力をただ振るうだけの一般兵卒となるが、魔力を多量に注ぎ込むほど、手先が器用でいろいろな技術も高く、なにより自立行動が可能となるのだ。
そのインビジブルゴーレムの班長から、隆康は捕虜の救出完了を報告された。
男2人、女8人の計10人を救出。男二人と女の3人は骨折に内蔵破裂といった重症で死にそうであったので、大造級のポーション(ハイポーションともいう)を与え、セシリア、オリビアたちに救護所へ行ってもらい、万一に備えてもらっている。
他の女7人は軽症だがいずれも乱暴のあとが見受けられたため、避妊の処置も含めて大造級の解毒薬と普通のポーションを渡して飲ましておく。
「あっ、父上!捕虜の救出終わりましたよ!10名を助けて現在は救護所です。暇ができたら見舞いをしたげてください。」
「さっきは何をしたんだ?鳥形の偵察による映像から門の前で何人も盗賊が倒れたように見えたし、最後に何やら門の前にいた気がするが・・・」
父は当然のように気になっているようだ。
「見えないゴーレムを並べて攻撃させただけですよ。せっせと準備してたうちのひとつです。あ、そろそろ南門にも敵が来ますね。そっちはさらに面白いものを用意してますよ!」
そう言うと隆康たちは再び鳥形ドローンの映像を皆で見つめたのであった。
そこにはこの世界の者ならば一様に目を見張る光景が広がっていた。
南門の前にも盗賊の集団約100人がせまっていた。
先頭の者たちは大盾を揃えて進む重装備の部隊である。その後ろに南東門と同じように破城槌の男たちが続いているようだ。
敵の先駆けが門まで20メートルに近づいたとき、敵の足元が爆発した。次々と閃光があがったあとには、大盾もろとも両足を吹き飛ばされた盗賊の男たちが、分けもわからず呻いている光景であった。
場所は変わって、隆康たちの執務室。
「な、何をやった?」
父上が聞いてくる。
「はい。南門に兵力配置が間に合わないと思いましたので、門前に地雷を埋設しました。地雷というのは本来、踏んだものを無差別で殺傷するのですが、その仕様は戦闘後に危なくて仕方ありませんので、少し改造しました。」
「えっと・・・その仕様を聞いてもよろしいでしょうか?タカレーン様・・・」
父の秘書が遠慮がちに訊ねてくる。この秘書は仕事のできる女性風の涼やかな美人だ。
「あぁ、いいとも。対人地雷を少し改造して、敵味方識別機能を持たせたんだよ。識別は何て言うのかな。この街内にいる生命反応をすべて登録し、今戦闘間に限り、登録されていない反応に対して爆発するように設定した。ちなみにいうと、僕の指示で一斉に爆発も可能だから、戦闘後に取り残して民間人に被害を与えることもないんだよ。」
この回答を聞いた父と秘書は絶句しているようだ。
まぁ、そうだろうね。
「父上。まだこれからですよ。次に奴らが打てる選択肢は限られてますから。この映像をご覧ください。」
そして、執務室の者は再び映像に注目した。
南門の現場は・・・
控えめに言って大混乱であった。盗賊たちの先頭は精鋭だったのであろうか。大盾か破壊されていなくともそれを拾い上げて進むものは皆無であった。
そんな動かぬ的たちに対し、隆康は更なる出血を強要した。
盗賊たちの方から見るとコロンの壁の向こうから、無数の黒い物体が上空に撒かれたかと思うと、その物体に突然翼が生え、滑空を始めた。その飛翔体から更なる子弾がばらまかれ、それらが地面に接地すると・・・
無数の閃光と煙があたりを埋めつくし、耳をつんざくような爆音が繰り返された。
そう、もとの世界の条約で禁止されたクラスター爆弾である。元祖は飛翔体ではないが、こちらの世界用に少し改良を加えさせてもらった。
ちなみにもとの世界で禁止された理由は、クラスターの子弾がある一定数は不発でそれが地雷となるため、戦後に大きな問題となることから、人道的に問題であるからである。
一方でこの兵器は、面で制圧するという大変画期的な武器であるため、アメリカ軍などはその条約を批准しておらず、現在も使用されている兵器である。余談であるが、日本のような島国で長大な海岸線を防衛するにはこのような広域制圧可能な兵器が必要なのであるが、日本の政治家、もしくは官僚たちはそのことをよく考えないまま、人道的にという名のもとに防衛能力を放棄したようなものである。
話はそれたが、南門はこの新兵器の投入により制圧され、残されたのは死体とズタズタにされ死にそうな2~3人の残党だけであった。
場面は変わって、敵主力がいる南東門。
見えないゴーレムが門を守り、拘束されている200人の盗賊たちは内輪揉めを始めた。
誰が先に攻めるのか、そもそも俺たちは乗り気じゃなかったなど、見苦しい罵り合いが続いた。
そんな中、街の門が開き、中から衛兵隊の騎兵が100騎ほど出てきた。
衛兵隊隊長のドルハに出陣してもらったのである。
このまま、隆康だけの手柄で戦闘を終えると逆に不満がでそうであるからだ。
しかし、コロンの街の人間に死傷者が出るのを防ぐために、もうひとつ何かしようと思う。
それは、南門と同じように爆撃である。しかし、こっちは投石機を使わしてもらって、普通の爆弾(手榴弾)を大量に投入してみた。
盗賊たちの中央に上手いこと落ち、次々と爆発していき、盗賊たちは大混乱、もとい、大恐慌に陥った。
そうした中、ドルハたち衛兵隊の騎兵が突入し、大勢は決まったのであった。
混乱したまま首を跳ねられる者、我先にと逃げ出して後ろから槍で突かれる者。
ほとんどが討ち取られるか、捕虜となるなかで、騎馬で逃げる数騎を映像で確認した。
隆康は一人も逃がすつもりはなく、最後のダメ押し。
鳥形のドローンの予備隊に爆装させ、発進させた。
逃走する騎馬は南にどんどんと駆けていくが、鳥形ドローンの方が速く、逃走経路の先を早くも抑えた。
「よし、投下。」
隆康の指示のもと、五機のうち二機が爆弾を投下し、騎馬の五メートル先に着弾、猛烈な爆風と破片を撒き散らして、騎馬にダメージを与えた。
馬がもんどりうって倒れ、それに潰されるもの、馬がおびえ振り落とされるもの、それぞれがこちらの予想通りとなった。
そして、隆康は残りの3機に対しても投下を指示し、逃走した者たちの息の根を止めたのであった。
「さて、父上!勝鬨をあげられてよろしいかと。ドルハたちもよくやってくれました。こちらの大勝利です。
ひとつ提案がありますが、生き残りの敵盗賊を数名ください。尋問と、黒幕への罠に使いたいと思います。」
「あぁ、タカレーンもよくやったな。捕虜については好きにするといい。戦後の後片付けはこっちでやっとくから。あと、セシリア嬢、オリビア嬢にも感謝を伝えてくれ。救助者の看病をしてくれたようだからね。」
「了解しました。あぁ、あと、南門には近づかないでください。いまから残りの地雷をすべて爆発処理しますから。」
「分かった。南門には近づかないよう徹底しよう。確認がとれ次第やってくれ。」
こうしてコロンの街VS盗賊300人の戦いは、コロンの街の圧勝で幕を閉じたのであった。
戦闘が終わりました。
ドローンとクラスター爆弾が登場しました。




