第25話 盗賊の暗躍
ホグリーム商会の暗躍に対して隆康が抹殺を決意した頃、街の外、街道から外れた荒れ地の一角に集結した男たちがいた。
身なりはあまり良くなく、着ている武具もあちこちが擦り切れている。
男たちが取り囲むのは、黒いローブをかぶり顔を隠す謎の男。男はまわりの荒くれものたちに言った。
「報酬は一人辺り金貨5枚は最低限保証する。しかも前金だ。あと街のものは思うがままだ。可能ならこの街のお針子を確保しろ。」
「へっへっへ。いいねぇ、街ひとつ襲うんならメリットがねぇとなぁ。んで、最後のお針子を拐えってのは生きてりゃいいんだな?俺らはちぃとばかし荒いぜぇ。俺らに拐かされて、そいつらが正気を保ってるたぁ、思えねぇなぁ。」
荒くれもの達のリーダー格が下品な笑いととともにそう答えると、黒ローブは事も無げに返答した。
「なんでもいい。連れてこれたら追加報酬金貨10枚だ。お針子の証明はこの街の布製品、または反物等の知識を持ってるか確認する。連れてこれなくとも構わん。街さえ襲撃できればな。」
「野郎どもーー!話はまとまったぁ!!明日、あの街の奴等をあの世にぶちこみ、すべてをかっさらえぇーー!」
荒れ地には荒くれもの達の三百人分の鬨の声が響き渡ったのである。
時は少し進んで、隆康とその母は街役場まで来ていた。セシリアとオリビアも同様である。アンにも声をかけ、役場に行くことを伝えていた。
行き先は父である街長の執務室である。
「んで、タカレーンがイザコザを力で解決したのか?」
「そうなのよねぇ。確かに王都からの査察にしては急だったし、ここの領主様がこれまでこんな不義理をしたこともなかったから、怪しんでたの。そして、この街の衛兵を集めてる間の時間稼ぎしてたら、この子がすっときて、バーンとやっちゃったのよねぇ。あ、この可愛らしい娘たちも手伝ってくれたのよぉ」
母は嬉しそうにオリビア、セシリアに抱きついている。
「ふむ・・・解決が早かったのは非常に喜ばしいが、やはりあの商会がこちらに目をつけてきたか・・・。あの商会は王都の服飾関係の一大勢力なんだが、よからぬ噂がつきまとう商会でねぇ・・・。どうにも不安なんだ。」
へー、そんな大きな商会の手下だったんだな、あいつら。だったら、もう少しまともなのを雇えばいいのにとも思うが、まぁ、捨てゴマのさらに捨てゴマだった可能性もあるしな。
しかし、それなら、非常事態の準備をやっておくべきだろうか。
まだ、攻撃用の創作物はなく、屋敷にいくつかのゴーレムしかいない。これを機に防衛準備をするのもいいかもしれない。
すると、その思考をかき消すように執務室に役人の一人が駆け込んできた。
「街長!!!大変です。コロンの街と隣街を結ぶ隊商の一団が夜盗に襲われ、壊滅しました。生き残ったのは二人で、命からがら逃げ帰ってきたようです。」
「なんだと!? すぐさま衛兵隊を招集して、現場確認に当たらせろ!敵の数が分からないから単独行動はさせるな。あとは騎兵を使え!!」
ふむ。父は決断力のある良いリーダーなのかもしれない。情報の価値を認識し、指示も的確だ。すこし手伝ってやろう。
おもむろに隆康は執務室の後ろで創造力を発揮する。もやの中から出てきたのは、鳥形のドローン。動力は隆康の魔力、撮影映像は隆康の手元にあるコントローラーへ送信され、その映像はさらに3次元プロジェクターによって、隆康の前の空間に投影できる代物である。
「父上、この魔道具によって偵察は簡単にできますよ。優秀な騎兵たちを情報収集のために斥候として出す判断は英断ですが、ここは相手の常識外をぶち抜いてやりましょう!」
隆康が映像を壁に投影しながらそう進言すると、街長である父はすぐさま計画を修正し、伝令を走らせた。
「斥候は中止、街の外壁周囲の城壁の警備に当たらせろ!装備は第1種戦闘装備。ロングボウと投石機も配置につかせろ!!」
役人たちは驚いて街長の顔を見る。それは完璧な戦争準備にほかならないからである。
「いいから行け!この治安のいいコロンの街道の状態が急変するのは、紛争もしくは軍団崩れが流れてきたしかあるまい。うちの戦力では警備兵だけでなく、衛兵を投入してもギリギリだ。」
役人たちは納得してかけていく。
隆康はその様子を見ながらも、ドローンをさらに30機ほど複製し、それらを執務室の窓から発進させた。
後にこの街長の執務室の窓から、大量のカラスが飛び立った出来事は、何かの凶兆の前触れであると、街の歴史書に書かれたとか書かれなかったとか。
隆康は30機のドローンを5機ずつの6個グループに分け、それぞれのグループのドローンにリーダーを指定した。そう、これらの鳥形ドローンはすべてAIを搭載しており、というよりも実はゴーレムであった。4個グループがそれぞれの受持ち区域を探索し、 1個グループが街を中心として同心円状に旋回、警戒し、最後の一個は予備として、隆康が知りたい任意の地点へ急行させることにした。
最初に作った1機は、すべてのリーダーとして、屋敷の上空で警戒しつつ、すべてのドローン班長を統括する。
執務室はさながら、防衛省の危機管理センターのように、数多くの映像が投影される部屋へと様変わりした。
一同はあきれながらも、隆康の作業を見守っていると、ドローン班の一機が警報を発してきた。
「コロンの街の南東から武装した一団204人、東から158人が捕虜らしき民間人を連れて接近中。捕虜は隊商のメンバーたちとみられる。」
そういう報告のあと、画面は捕虜達の映像が斜め上からアップされた。
ボロボロで血まみれの男性が縄でひきずられ、若い女性は裸のまま先頭を歩かされている。しかも耳が尖って長い。エルフというやつか、初めて見た。
あとは人間や獣耳を持った女性やなんかも引き回されているようだ。
うん、ギルティだな。
しかし、賢しら(さかしら)の正義を掲げて奴等をぶちのめすのではない。この街に害をなそうとするものが気に食わない。逆らうものが気に食わないという、完全なる自分のエゴのために奴等を潰そう。
俺は勇者でも聖職者でもないんだから、高貴な振る舞いなんぞ知らんぷりである。
セシリアから声をかけられて、ハッと我にかえる。
「タカレーン様、すごい怖い顔をしてましたよ。あまり思い詰めないほうがよろしいかと。」
「あー、そう?顔に出ちゃってたか。うん、やつらを自分のエゴのために潰そうと思う。この街に害をなす悪党とみなして。」
素直に白状すると、皆から肯定された。
「当然です。それはエゴではなく、善良な街の人なら皆が抱く感情です。盗賊に落ちるというのはよく言ったもので、心が落ちるとそうなるのですから。そのような輩は、悪即斬です!」
セシリアから好戦的な言葉をもらって少し驚きつつも、心が非常に軽くなった。
よし、それでは次の創造に取りかかろう。
そして、悪党たちが街の門にたどり着くまでに決戦兵器ともいうべきものをいくつか創る隆康なのであった。
ついに戦闘シーンを書くことができます。
のびのび生活もメリハリがないと小説は続かないということに気づきました。作者が続かない・・・
サザエさんのすごさが分かりました。
次からは戦闘が続きます。




