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第24話 怪しい査察団

オリビアとセシリアを弟子にしてから一週間がたった。


はじめ、屋敷に二人を連れて帰ったとき、父は固まり、母は笑いながら目で俺を射ぬいてきた。


そのような状況のなか、オリビアが冗談で、


「タカレーン様の愛人でーす」


とやったもんだから、屋敷の中の温度が絶対零度となった。それは母の怒りのプレッシャーとでもいうべきか。


そのあとなんとか説明して、二人は俺の隣部屋へ居候することが決まったのであった。


一ヶ月たったところ二人の腕は格段に向上したのに加え、二人ともなにより美人なことから、アンの鍛冶屋で販売してるポーション系は大盛況である。


そしてもうひとつ大盛況すぎて品薄なのが、ジャガード織機でサフィアが作った布製品である。

サフィアが普通の機織りの300倍で作成し続けているのであるが、これがこの街コロンの名声を高め、名産のひとつへとのしあがったのである。


このコロン産布製品は、王都の貴族たちの心をつかみ、お針子達はもれなく駆り出され、新しいドレスの作成に勤しんでいるらしい。


まぁ、このコロンには関係ないがね。


隆康はセシリア、オリビアといつもの道をアンの鍛冶屋へ向かっていた。


すると、街の中心部を差しかかったころ、商工会議所あたりでギャーギャー騒いでいる。


なんだなんだと野次馬のひとりに加わった3人は、そこで隆康の母と、小うるさいチビオッサン、それに文官のような秘書のような小賢しそうな痩せ型の男、あとは護衛らしい下品な男たち数人を目撃した。



「ですから、こちらの街へ査察が入るというのは連絡がなかったので、確認が必要と申し上げているでしょう。」


「ふざけるな。これは賢くもこの地の御領主様の命令書なるぞ!田舎街の商工会長風情が逆らうのかー!」


まったく話を聞かない輩に、母困るの図であった。



野次馬により耳を済ませて話の内容を聞いてみると、どうやら男たちはこの街の織機を査察させろということらしい。


母は新しく出来た名産品をこのタイミングで査察はおかしいと勘ぐっているようだ。


なんだ、こいつらただのタカりで、儲け話に食いついてきた羽虫かぁ。ならば、どうとでもなるな、こいつらは。


あのチビ男が持ってる命令書を魔法『鑑定』で調べてみる。


『鑑定』:偽の命令書。紙質はその辺の商店で扱っている古文書と同質であり、一般的に命令書で使用される王紋紙(おうもんし)の1000分の1の値段である。記入者はゴロツキのネロ


はい、ギルティー。


隆康はおもむろに進み出ると、一番近くにいた護衛の男に声をかける。


「ねぇ、お兄さん。なんで、そんなに急いで査察をしたがるんですかー?

普通は査察団の先触れが来て、こちらが準備を整えたくらいに査察団が20~30名くるはずですが?」


「なんだ、このガキは?うるさい、領主様から速やかに調べてこいと命令されたんだよ、あっちにいけ!」



「えー、でも、あの人が持ってる命令書、紙質が悪くないですか?命令書にしては紙の色が黄ばんでるし、命令書を作成する文官が書いたにしては字が汚いですよねぇ?」


「はっ、これだから田舎者は。命令書は御領主様自らが書かれたのだ!だから、早く査察させろ!」


「うーん、ますますおかしいですね。普通、御領主が書いたものはこんなちんけな査察に使うようなものじゃないと思うし、それに汚い字と言ったのにそれを領主様のせいにするなんて、ほんとに貴方たちは領主様の配下ですか?」


男たちは分かりやすく狼狽え、小賢しそうな男をちらりと見る。


はい、隠れたボス発見!


困ったときはリーダーを見てしまうのが部下あるあるだよなぁ。

俺も自衛隊の演習で、ミスって車を脱輪させてしまったときなんか、営内班長の顔をちらちら見たもんですよ。


しかし、そこからどういう対応をするのかがリーダーとしての力量だ。どういう対応に出るか、メガネの男を観察していると、この男はもっともアウトな行動を選択したようだ。


「えーぃ。お前らまとめて領主様に逆らうのか。反逆者とみなして、全員ぶちのめしめしまえ!野次馬どもも一緒だぁー!!」



何をとちくるったことしてるんだ。しょうがない・・・。すぐにかたをつけよう。


隆康は創造力を発動。


鉄の槍を10本空中に浮かべ(魔法のレビテーションで浮かせている)、護衛の男たちに飛ばし、死なない程度で突き刺した。


バタバタと倒れ伏す男たちは、うるさくないように魔法サイレントで周囲の音を奪う


チビ男とメガネ男はそれを見て固まってしまった。いや、オリビアも魔法を使っているようで、物理的に凍らされてるな、下半身のほうが。


これでこいつらは逃げれない。



「あれ?さっきぶちのめすと聞こえた気がするけど、何て言ったか、もう一度言ってくれるかな?」


男たちは青ざめてアワアワと言っている。


「なんだ、話せないのか?なら、次の質問を最後に永久にしゃべれなくしてあげるよ。何の目的でここに来て、それは誰に命じられたのかな?」



男たちの一人、チビ男は完璧に白目をむき気絶している。


メガネ男のみがかろうじて意識を保っているようだ。


「コロンの布製品の利権を奪えと言われてきた。ホグリーム商会の会長、ホグリーム・ドン・ガバチョだ。」


何?その名前。ガバチョ? ひょっこりひょう○ん島か!?


「それで?利権を奪うだけか?」

「・・・うぅ、機織りの職人を連れ去るか、それが無理なら殺すか、機織り機を壊してこいといわれている。」


ふーん。商業妨害か。ホグリーム商会とかいうとこがコロンの街産の布製品が目障りだったんだろうな。


「そうか。理由は分かった。とりあえず、これ以上用はない。去れ!」



男たちは方々の体で退散していく。


「あ、母上。この街の脅威は未然に摘み取りましたよ。ホグリーム商会ってのが敵対したみたいですね。潰しますか?」


母はあきれた様子でこちらをみている。


「もぅ。貴方は気にしなくていいわ。ただし、ホグリームかぁ。やっかいねぇ。都の大商会なのよ・・・」



とりあえず、いずれ都に行ったときは目にもの見せてくれる・・・


そう、隆康は心に刻むのであった。

新たな敵がでてきました。

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