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第1話 新たな世界へ

隆康は乳白色の景色のなかひとりぼっちです。

目の前が乳白色に覆われた隆康は、よく分からないまま、周りを確認する。


しかし、周りはあいかわらず白一色。 何も手がかりはない。


自分の服装を確認する。


戦闘服に鉄帽、サスペンダー、弾帯、弾倉、小銃、すべて装着されている。


「なんなんだ、これ。安藤もいないなぁ。」



そうするとおもむろに頭の中に綺麗な鈴のような声が響いた。


「やぁやぁ、まずは自己紹介から。私は世界と世界の狭間を司るもの。名前をグレイシオス・マクワイア。女神です。君はいま世界と異世界との狭間にいるんだよね。」


「えっと、あなたは何を言ってるのでしょうか?これはどういうことでしょうか?私ともう一人の安藤はどうしたんでしょうか?」

「もう一人はこちらには来ていません。この狭間に来れるのは、もとの世界に未練や、心残りのないある意味ぶっ壊れた人だけです。」


「おい。酷すぎないか、その言い種。心残りくらいあるわ!! 旨いもんもそんなに食べてないし、良い女だって抱いてないのに・・・。」


「はい。それらは今生では諦めてください。いえ、そんなしょうもないことではなく、あなたは正直この世界に飽きていた様子。そこはもう、私たち神様の暇つぶ・・・、ゴホン。仕事の対象者になるわけです。」


「この女神、暇潰しって言おうとしたぞ。おい。」


隆康は非常に心外である。確かに仕事はそんなに乗り気ではなかったが、定年退官を日がな1日待ち、のんびるすんだという夢があったのだ。


「んで、俺はどうなったんですか?死んだんですか?」


こんなありえない場所で、ありえない場面に遭遇したというのに、隆康はいたって平常心であった。そういった面でいえば、確かに隆康は他人に比べて心が壊れ気味といってもいいかもしれない。

とはいえ、認める気はないが。


「貴方がいた世界では、貴方は死亡したことになってます。死因を聞きたいですか?笑えますよ。ププ(笑)」


「聞かせてください。(イラ)」


「貴方は訓練中、自分の拠点に帰ろうとして、猪にはね飛ばされ、谷底へ滑落、持っていた小銃の先が腹に刺さった状態で空砲が連射で暴発。内臓から破壊されてあえなく御臨終ですぅ。ナムー。」


そういって、女神はお経っぽい声色で話を締めくくる。

酷い死に際だ。ほんとに、俺が何をしたんだと言いたくなるような死にかたに隆康は泣きたくなった。


そうしていると、女神様の声はさらに続く。



「さて、そういうわけで、選ばれたあなたには二つの選択肢があります。まず1つは大人しく自分の死を受け入れ、この世界での輪廻を待つ、です。」


「じゃあ、それで・・・」

即答しようとすると、食い気味に遮られた。


「ちなみにこの転生の順番は人気のネズミの遊園地の待ち行列なんて目じゃないくらいの順番待ちですからね。まぁ、400年くらい待てば動物くらいには転生できます。」


「ネズミの遊園地って・・・、しかも、人間には転生してくれんのか。参考までにもう1つの選択肢を聞いても?」


何やら誘導されてる感がビンビンである。


「はい。もう1つは、別の世界でやり直す、です。ちなみに、星の大きさや歴史、地形などはこちらの世界とよく似ている世界ですが、大きく違う点があります。」


そういうと声だけの女神様は暴風と花吹雪のなか、隆康の前に登場した。


その女神は桜色の衣を纏い、現代風のスカートと胸元を強調したぴっちりした服を着ていた。某48人のアイドルグループのような装いである。


隆康はもうちょっと威厳のある女神様がよかったと内心ひとりでごちながら、女神に尋ねる。


「違う点というのはなんです? 意外と若作りの女神様?」


「えっと、若作りってのは言わなくてもいいんじゃないかな? まあいいや。  違う点は魔法と魔導です。時代はあなたの世界の中世でしょうか?その世界の力の源は、精霊が司る魔力がすべてです。


その魔力を使って意思を世界に顕現させる方法を魔法と言います。そして、魔法を使用するにはとてつもない意思の力が必要なのです。 


 また、その意思の力が未熟な者が魔法を使うために開発されたのが、魔導であり、魔導道具です。魔導は、魔力がほとんどないものや、魔力があっても意思の力が弱いものでも安全に使用することができます。    

楽しそうな世界でしょう??」


「確かに楽しそうな世界ですね。 でも、私はそこに行ってやっていけるのでしょうか?」


隆康は純粋な不安を女神にぶつけてみた。


「大丈夫ですよ~~。せっかくのヒマつ・・・、ゲフンゲフン。選ばれし者が簡単に死なないように、こちらからも色々な支援をしますし、アフターサービスも万全です。任せてください。」


「また、暇つぶしって言いかけてるし・・・。で、その支援を頂けるんでしたか? 何をくれるんです?」


女神はにんまりとどや顔をする。普通にしていれば、結構妙齢の美女といってもいいのに、色々残念な女神様だと隆康は思う。


「まず一つは、創造の力です。これは、魔力を使い、あちらの世界にこちらの世界のものを顕現させる力です。その顕現の際に、必要となるのが想像力です。つまり、意思の力といっても過言ではありません。


これは非常に使い勝手がいいものですよ。はじめのうちは慣れずにいろいろ大変でしょうが、慣れです。慣れ。少年よ大志を抱け? でしたっけ?」


「その言葉を言ったとされる先生は、そんな疲れたおっさんが言い捨てるような意味で、大志について言ってないと思いますよ・・・。」


隆康がツッコミをいれても女神は意に介していない様子で続ける。


「もう一つは、私があげるというよりは元々あなたが持っていたものをちょっと強化しています。それは耐久力ですね。 鈍感力ともいいます。 向こうの世界ではちょっとやそっとじゃ死なないですよ、あなたは。 どれくらいかっていうとですね~~。


こんな感じです!!そ~~ぃ!!」


ドブシッ


女神にいきなり切りつけられた。それもすごい禍々しいオーラを発する青龍刀のような刃物に・・・。


「ぎゃ~~、やられた~~~。死ぬ~~。



・・・・



・・・・


痛くないね、んで、死んでないね・・・。」




「ね? 死んでないでしょ? こんな感じで、傷がつきませんよ。それに耐久力はほんとにすごくて、土に生き埋めにされても、たぶん30年くらいは苦しくないし、死にませんよ。」


「それはそれで、死ねなくて嫌そうだな? 精神的に死にそうだよ、それ。」


隆康はドン引きでそう言い返す。


「大丈夫ですよ~~。鈍感力とも言ったでしょ? 土の中、まったくの無音の闇の中でもあなたは快適に寝れますし、快適なのんびりライフが送れるでしょう。そこは保証します。☆彡」


そう言われれば、隆康はのんびりとした定年の生活を夢見ていた。それが叶う一番の道なのか、と本気で考えてしまった。


「まぁ、そういうわけで、こちらの選択肢にしましょ? ね? 決定?」

 

・・・・


・・・


・・



「分かりました。もう好きにしてください。」


「は~~い。 暇つぶし要員一人かくほ~~~~!」



また隆康の周囲を乳白色が覆い、意識が遠のいていった。


『もう、暇つぶして完璧に言いやがったなぁ~~ 怒』


という叫びは声になることはなく、隆康は意識を失ったのである。





隆康はいろいろな力をもらって、異世界へと転生するようです。

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