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第18話 広場での展示即売会

あれからアンは休む間も惜しんで鉄を打ち続けた。


うまくいかなかったショートソードは形を整え直して、包丁へと姿を変えた。当然それら失敗作にも、隆康の創造力で『切れ味倍増の古代魔法(永続)』をかけておく。


『観察』ででき具合を確認してみると、大造(おおつくり)級の乙から丙くらいの出来になっている。


これらの包丁は都の一流シェフでもそんなに持っていないようなものらしい。


なぜ、そんなことが分かるって? さっき頭の中で勝手に説明が流れ始めたからだ。


それは古代魔法『万物の叡智』が発動したからで、普段の生活の細かなことから王宮の諸事情にまで、急に情報通になった感じだ。結構急にできるようになるのはびっくりする。



それはともかく、つぎは大工道具である。

大工道具のノミだけでなく、カンナや彫刻刀、小刀(ナイフ)など、職人が好きそうな武骨なデザインの道具をガンガン作って、隆康はガンガン『切れ味倍増の古代魔法(永続)』をかけまくる。


大体が中造(なかつくり)級の甲~乙の出来になっており、これだけで一財産つくれるだけは用意させることができた。


時計の短針は12を周り、1時へとなろうとしていた。


「アン、そろそろキリのいいところで休憩しないか?何も食べてないだろう?」


アンはハッとした顔をして、時計を見る。


「ほんとね、もうこんな時間。作るのが楽しくなっちゃって、時がたつのは早いわ。それに、タカくんのお陰ですごい良品がいっぱい出来たわ!」


アンは非常に嬉しそうに頬を赤らめながら笑う。


数を作ったのはアンで、そのスピードはでたらめな速度なのであるが、隆康はそれを知らない。そのときは創造の力や、古代魔法『万物の叡智』は働かなかったみたいだ。


「お昼はなにがいいかな?よければ外に食べに行かないか?」


「賛成ー!アタシ、もう料理する元気ないのぉ。」


アンはどこかくたびれた感じで、それでも嬉しそうに言う。



アンが片付け終わったらお出かけである。


その間、隆康はそこら辺にあった小刀を使って暇潰しをする。


「小刀に、使い手に対してなにか役得みたいなものを与えられると面白そうだよなぁ。癒し?それとも作業効率化?テンションがあがるってのは刃物使ってるときはなんか怖いし・・・」


とりあえず、付与効果として、リラックス効果と自傷・他傷防止の効果をつけよう。

この小刀で指切って血判とかはできなくなるけど、そのほうが安全でいい。


あ、これを子供用の小刀とか言って売り出せばどうだろう?


よし、付与の種類が決まった。


頭の中で思い描く。創造の力が魔法の仕組みを頭に流してくる。


手から小刀へと霞が移動し、それが収まった。魔法『観察』を使用すると、小刀には癒し(ヒール)小(対人)と傷害防止大(対人)の効果がついていた。


試しに自分の手のひらに小刀を押しあて、グッと引いてみた。するとまったく切れず、むしろリラックスした気がする。


ただし、これがまったく物も切れないと困るので、近くにあった薪に刃筋をたてて、引いてみる。


すると、まったく抵抗なくスーッと両断されたのである。


「ありゃ、これには切れ味倍増の効果はつけてないけどなぁ・・・。」


アンの力作だろうか?だとすると、これは相当な品物だったものを勝手に魔改造してしまったことになる。


やばい、怒られるか!?


ドキドキしながら隠蔽するか、付与効果の解除魔法がないか頭の中に思い描こうとしているところに、支度を終えたアンがやって来た。


「お待たせー!って何してるの??」


バレた、素直に謝ろう。


「アン、ごめん。大したことないと思ってたナイフを暇潰しに改造したんだけど、その切れ味がとんでもなかったから、もしかしたら大事なナイフだったのかなって思って。」

アンは隆康が持つ小刀に目をやる。

「あぁ、そのナイフね。確かに父さんの作品で、小さいときに使えって渡されたものだし、気に入ってはいるんだけど、別に構わないわよ。なんの改造をしたの?」


興味本意に聞いてくるアン。正直に白状した。


「癒しの効果小と、傷害防止の効果大をつけました・・・」


アンは目を見開きビックリしている。


「えっと、ナイフに癒し(ヒール)ってどういうこと?切ったら、治るの?」


「いや、まず傷害防止のせいで人は傷がつけれないようになってる。それで加えて少しリラックスする程度だよ。癒し効果大をつけることもできるんだけど、ナイフで切ったり突いたりして治るってのも絵面的におかしいからやめといたんだ。」


「変な暇潰しの仕方するね、タカくん・・・」


アンからじとっとして目で見られてしまった。


「でも、子供向けのナイフとして良いかもね?それ。」


「そう、俺もそれは思ったよ。他の失敗作のナイフ3割くらいにもかけようか?」

「うん、いいよ。かけたら広場だね。」


隆康は5、6分で付与し終えるとアンの作品を鞄に納め、仲良く鍛冶屋を出る。当然この鞄は収納量増加と保存の魔法がかかっているのは言うまでもない。




広場では人はパラパラと行き交っている。まぁ、悪くない人数かな。

そこで、隆康は創造の力で広場の片隅にテーブルと椅子、それに幟を作りだす。その幟には「一級品から日用級の展示即売会」と書いてあった。


テーブルの上に包丁、大工道具に加え、急遽作った、子供用のナイフを陳列して、お客さんを待つ。


すると通りがかった主婦らしきおばちゃんが足を止めてくれた。


「可愛い子達が包丁売ってんのかい?この包丁はどこがいいんだい?」


「お姉さん、非常にお目が高い。この大根を切って見ます。ほれ、この通りスパッといけます。あとですね、この大根を2段重ねでも・・・ほらスパッといけます。

あとは切りづらいこんにゃく。これもあっさりスーッと切れるんです。」


隆康はどんどん物を切っていく。おばちゃんはじっと真剣に見いっている。


これは押すべき時だと判断した隆康は、さらに奥の手を出す。


「この包丁と同程度の切れ味で、子供用に作った包丁がこれです。ほら、これ、このようにしても人には傷がつけれないようになってるんです。」


いきなり、手や腹、首を横に引っ掻いた隆康におばちゃんは仰天しながらも、興味深そうに尋ねてくる。


「すごいね、それは。子供用じゃなくても、アタシら主婦でも欲しいね、それは。ただ、効果をつけてるような刃物にアタシら庶民が手をだせるわけがないだろう?」


「いえ、いえ、この包丁。鍛冶屋の代替わりと、その女主人アンの技量をアピールするための販売会ですので、お代は鉄の素材分、銀貨2枚でいいですよ。どうです?買ってみませんか?満足いかなければ、鍛冶屋に持ってきていただければ、さらに使いやすいように打ち直しますよ。」


「本当かい?なら、2本ほど傷がつかない包丁をおくれ。娘にも持たせるから。」


おばちゃんは嬉しそうに銀貨を4枚渡してくれ、ニコニコ顔で買ってかえったのであった。


さぁ、二本売れたぞ。販売会はまだまだこれからだ。




二本包丁が売れました。


クレームが来ないことを祈ります。

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