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第14話 報告と換金

鉱山から下山し、コロンの街へ戻っていると、鉱山の管理組合の人間があわただしくしているのに遭遇した。

なんかまた起こったのかな?


「どうしたんですか?何かあったんですか?」


近くにいた背の低めの初老男性に声をかける。


「あぁ?なんじゃ、街長マックの息子かい。いや、今な、鉱山坑道奥でガスが噴出してきとるんじゃわ。それで皆を対比させとるとこなんじゃが・・・、前回起きたときな、あれは5年前だったか、ガスに追いたてられた坑道内のモンスターが大挙して麓の町まで溢れてきてな。大損害を負ったんじゃよ。今回もそうなりそうだと思って、冒険者を雇う準備をしとったんじゃ。」


あー、これはあのオークやゴブリンたちのことかな?

まさか、火口内にいる龍のことも頭に浮かんだが、龍だったら大災害としてこのあたりは消し飛んでいるはず。なので数年前の件はまちがいなく、ゴブリンとかのことだろうな。


今回も火山性ガスでゴブリンたちが地下から這い上がってきたと。


うん、これはおじさんたちに討伐証明を渡して、さっさと帰ろう。


「おじさん。そのモンスターで、ゴブリンやオークなら殲滅しましたが、他にもいたりする?これ、討伐部位。」


ついっと、討伐部位がはいった袋をおじさんに差し出す。まぁ、差し出したのはゴロリだけども。なぜなら、臭いし、血とかで汚れた、耳やらなにやらを持っていたくない。


だって、元現代っ子だもの。 前世ではおっさんだったけども・・・。


おじさんは一瞬かたまり、つぎには笑いながら隆康の肩を叩いてきた。いや、こっちとしては殴られているほどの衝撃だ。


「はっはっは。ツァード家の次男はふらふら遊んでばかりいると言われとったが、それがどうして、いや、優秀に育っとるなあ!この街も将来安泰じゃわい。」


とにかく、喜んでくれているらしい。


「げほっ、とりあえず、このモンスター以外には気配が感じられなかったから、大丈夫だとは思うけど、もうしばらくは警戒しといたほうがいいね?」


「あぁ、そうだな。若いのに大した奴だ。大体、何かをなしたあとが危険なんだ。こういうときは。こっちも気を付けておくよ。


あ、冒険者たちを雇う経費が浮いたから、討伐報奨金に上乗せしてやるよ。まずは街の役所に取りに行きな!連絡はしといてやるから。」


初老の男の後ろを若い衆が駆け足で去っていった。さっそく知らせてくれるのであろう。


よくしつけられた部下たちである。


「あと、今日は酒盛りじゃー!お主らも来いよ!主賓がおらんと盛り上がらんからの?夕方からやっとるからいつきてもいい!それじゃーな。がはははは。」


強引に飲みに誘われてしまった。しかし、久しぶりに飲んでみたい気もする。いや、子供の身としてはまずいのか?


うーん、とりあえず、飲み会の中盤くらいにちょろっと飲んでみればいいだろう、誰も気がつきやしない。


「さて、僕らも行こうか?役所に。あとは、早く家に帰って体を綺麗にしよう。」



隆康たちは馬車で街の中心地まで戻ってきた。


おや、なにやら寂れているのは変わらないけど、人の往来が少し増えたかな。いい傾向である。ゴーストタウンよりは賑やかな方がいいに決まっている。


早々に、街を発展させれば後継者を指名してやるのだ。それが隆康の秘めた野望なのだ。


その第一歩は鉱山に行く前からすでに歩き始めていることを、このときの隆康は知らない。



役所につくと、なかでは人があっちこっちへと忙しそうに走り回っていた。


ちょっと人混みが落ち着くまで入れないか・・・


入り口で少し待っていると、奥の方からこちらを呼ぶ声がする。


「タカくーーん、こっちよーー!☆」


すごいハイテンションで、キャピキャピ騒ぐ女性がいる。


よく見てみるとうちの母上だ・・・。


無視するのもあれなので、大人しく出頭する。


ここは商工会ではないはずなのだが、なんで役所(ここ)にいるんだ?

「母上、お疲れ様です。なぜこちらにおられるのですか?」


「あら、商工会長が役所にいるのはよく見る光景だと思うわよ。税やらこの街の施策との兼ね合いでいろいろ協力しているし、評議会にも名を連ねているのだし。


あら? そちらの可愛い女の子を紹介してくださるかしら?」


「こちらは、鍛冶屋のアン。


アン、こちらは商工会長のツァード・エルル・メリッサ。私の母上だ・・・」


「よろしく、アン。」

「宜しくお願いします、メリッサ様!!」


アンはガチガチに緊張してしまっている。まぁ、そりゃ仕方ないか。

「母上、僕らは鉱山で退治したモンスターの懸賞金を受け取りに来たのです。役所内のこの騒ぎはなんなんでしょう?」


「あー、これね。あなたのやったことの影響がで始めてるの。まだ序の口だと思うわ。」


ん?俺、何をしたっけかな。モンスター退治でここまで早く騒ぎにはならないだろうし、喜んでる感じではない。しかし、役所内の人間たちに負の感情は見受けられない。


鍛冶屋のアピールはまだこれからなのであるし、どうもやったことの影響って言われてもピンとこない。


「あなた、よくわかってない風に見えるわね。呆れた・・・。

まぁ、これらはこの街にとって嬉しい悲鳴なのだから、問題ないわ。


あなたが作った織機によって作られた反物、絨毯等が都で大人気なのは先日言ったわね?


もう、それが大人気ところじゃすまなくなってきて、この反物だけでなく、布切れ端切れにも高価値が付きはじめたの。既存の服にこの反物の端切れを混ぜるのがトレンドらしいわよ。」


大変賑わってるようでいいじゃないか。


「ここまでは街の収入が増えて純粋に喜んでたんだけとね。

そうしたら、今度はお針子や、布地を扱う商人、はたまた、服装に最も関心のある大貴族の方たちがこの街に移り住みたいと言いはじめてね。それでこの役所は移住申請祭りなわけよ。あとは商業申請、商工会への加入申請、建築申請、それから・・・数えるのがバカらしくなるくらいの種類の申請書が、それぞれ相当数同時に入ってきてるわけ。


それも今現在、どんどん増加中です。」



「母上・・・ファイト!父上はどうしてるのですか?」



「簡単に言ってくれるじゃないの、この息子は・・・


あの人は都に招聘されて、根掘り葉掘り尋ねられてるはずよ。当然、あなたのことは伏せてね。だってじゃないとあなた、拉致監禁、誘拐されちゃうわ、きっと。」



恐ろしいことである。まぁ、誘拐されるほどヤバい攻撃も効かないし、薬も効かないみたいだし、大丈夫だろう。


「まぁ、出歩くときはこのゴロリを連れることにします。

それでは報酬を頂きに参りますので・・・」


「あー、それならいいわ。ここに呼ぶから。マーサ。マァーサァー!!」


母は大きな声で役所のカウンター奥へ向かい、人を呼ぶ。すると、書類の山から人影が急に現れ、こっちに向かってシャカシャカと動いてきた。


うわ、変な動きだ。


「タカくん、この人はマーサ。これでも役所の市民相談課の課長よ。この人に言えば一番早いわ。」


この変なお偉いさんは髪で顔が隠れていて見えない。お偉いさんが口を開く。

「メリッサ、この忙しいときにアタシを気軽に呼ばないでくれる?見て、あの書類の山・・・いっそ経費削減でこの冬の暖気燃料にしちゃおうかしら。」


「ダメよ、マーサ。それにあなた温暖(ウォーム)の魔法を使えるじゃない。燃料なんてあなたはいらないわ(笑)」


「そこはほら、職員のためよ、職員の・・・」


母上たちのおしゃべりが止まらなくなりそうなので、割ってはいる。


「あの、鉱山のモンスター退治の報酬をここで貰えと言われて来ました。これが証明部位や素材です。」


マーサは急にキリッとした顔に変貌し、その部位になにやら魔法のようなものをかける。


しばらくすると、顔を上げ、髪をかきあげながら笑顔で口を開く。


「お疲れ様でした。証明部位も確認が終わり、あなた達の功績が認められましたので、報酬はこちらです。」


マーサの顔が見えたのであるが、母上に良く似た、綺麗な顔立ちである。つまり凄い美人だ。

普段の格好と動きが残念すぎる。


「あのタカ坊がこんなに成長するとはねぇー。ほとんどこのモンスターを倒したのはタカ坊でしょ?」


「え、どうしてわかったんですか?」


純粋に不思議である。見てた訳じゃあるまいし・・・


答えはすぐに言ってくれた。


「だって、詳細の魔法をかけて、少しは状況が見えたもの。あなたの魔法は不思議な感じがするわね。なにか体系立てられてない、独創的というか・・・」


また話が脱線しそうなので、貰うものをもらって中身を確認した。


報酬は銀貨三枚と銅貨二枚だった。銀貨1枚で銅貨100枚ぶんだから、銅貨302枚分の報酬である。ゴブリン一匹あたり銅貨10枚・・・

これは相場的にどうなんだろう?


「一匹に銅貨10枚はだいぶ奮発してるからね。普通は2~3枚だけど、規模や街への貢献度も加味されるのよ。またなにかあったら宜しくね。」


そういうとマーサは奥へと戻っていった。



「ちなみに、タカくん。私も行くわね。これでも忙しいの。」


そういうと、母上も建物の奥へと戻っていった。何やら会議らしいな。



さて、貰うものももらったし、家に帰ろう。


「アン、ゴロリ、一度家に戻って身綺麗にしてから、宴会に参加しよう。アン、また迎えに行くからね。」


「分かったはタカくん。私はすぐそこが鍛冶屋だからまたあとでね。」


アンと別れ、隆康は家へとのんびり、ゴロリと戻るのであった。





お金をもらい、母と会い、マーサと出会いました。

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