第11話 鉱山内を探索
鉱山探索をします。
馬車に揺られてのんびり進む。屋敷のある丘をくだり、街へと入るため、街の馬車用の門へと向かう。 少し大きめの門だ。この街の外観を言っておくと、街長の屋敷を中心に西へ商業地区、東と南が農業地区、北が鍛冶屋等の工業地区だ。
基本的に『街』というと、それらをぐるっと柵やや壁で囲ったものを言うが、この街で『街』というのは商業地区と工業地区のことである。
かつて、商業地区はひとつの小さな町であったとき、その町並みを柵で囲っていたことから、いまでもその名残で柵と門がある。
この街『コロン』はいくつもの小さな町を合併した集合体なのである。
なので、鉱山へ向かう場合は本当は北東の工業地区と農村との間の門から出るのが近いのであるが、アンをつれていく手前、商業地区と工業地区の間辺りに向かっているのである。
ゴロリが声をあげる。
「工業地区の門に着きましたぜ。馬車を入れると時間はかかるし、鍛冶屋へ行くのがむしろ遅くなっちまう。ここからアンの嬢ちゃんを呼びに行ったほうがいいですぜ。」
「分かった。俺が行ってくるよ。ゴロリは馬車を門の側の停車場に停めておいて。ソフィーは馬車で待機。馬車の警護をしといてくれ。」
「分かりやした。」「承りました。」
二人の回答を聞きつつ、隆康はアンを迎えに工業地区へと足を進めた。
「おーい、アーン!行くぞー!」
アンの鍛冶屋作業場に大声で声をかける。すると、中から元気よくアンが小走りで駆けてきた。
「お待たせー!待った?」
アンは頭に工事現場の安全ヘルメットのような黄色い帽子?と、ツルハシ以外は、大人し目の娘が着るようなブラウスと淡い青色のフレアスカートを着てとても可愛らしい。
「おはよう、アン。さっき着いて声をかけたんだよ。荷物はこれだけ?あるなら運ぶよ。」
「大丈夫よ、そこはこれ。この腰の図納が収納の魔法がかかっていてね。見た目の何倍もものが入るの!これに鉱石とか入れて帰りましょ。タカくんも入れてね?」
見ると、アンのまぁるく形の整ったすこし大きめのお尻の上に、少し茶色の鞄が取り付けてある。
冒険者がよくつける場所であり、一般的なのだが、他人が出し入れをするには、特に女性の臀部付近は不味い・・・。たとえ、こちらの見た目が少年でも、中身はおっさんだ。
これは自主規制だ。
「アン? 他の人に絶対、鞄に出し入れをしてもいいなんて言っちゃだめだからね。変な妄想をする馬鹿が出るぞ。」
「ん? 妄想?なんでよー。」
アンはどうやら分かっておらず、素でそんなことを言っているようだ。
「ヒント。アンがその収納バックはどこにつけているでしょうか?ヒント2、成人男性はときに年若い女性のある部分に目が釘付けになることがあります。この2つの解を結びつけると、高確率でアンのお尻に目が行きます。嫌でしょ?そんなの。」
アンが顔を真っ赤にして、慌てる。
「なっ、なっ!?あ、あたしみたいな魅力のない娘に、そんなことあるわけないでしょー!?」
「いや、ほんとに気を付けなよ。変態はどこでもいるからね。それにアンは可愛いらしいと思うよ。」
隆康はいきなりシレッと可愛らしいというキザったらしい言葉を言ってのけた。耐久力(鈍感力)の調子は絶好調である。
「かっ、可愛らしい・・・」
もう、アンは真っ赤っかである。
ほっといて、強制的に連れていこう。
アンの手を引っ張り、馬車までの道を急ぐ。隆康の強引な連行により、そんなに時間がかかることなく、二人は馬車上の人となった。
普通に戻ったアンはまず馬車に驚き、次いで馬車内にいたソフィーに目を見張り、こちらをジトーっと見てきたが、なにやら勘違いしてそうなので、彼女は俺が作ったオートマタで、自律思考と行動ができる旨を伝えると、むしろ驚きは驚愕となり、悪化したようだ。
こんな感じで鉱山までの道は退屈することなく、賑やかに過ぎていった。アンのお陰である。
街を出て、鉱山までの道のりはほんとに何もない唯の草原であるためここでは割愛する。魔物も出なかったのでやはりこの辺りは定期的に魔物を駆除でもしてるのだろう。
結構な労力であろうが、それで都から冒険者を呼ぶのであるから、立派に雇用を産み出しているのである。冒険者たちは街にも金を落とすしな。
そういえば、このアンの鍛冶屋を軌道に乗せれば、間違いなく冒険者たちは刀剣を求めて集まってくるはずだ。包丁や大工道具の次は、武器・防具だな。
そうやって思考に沈んでいると、馬車は目的地の鉱山入口へと到着した。入口の馬車置き場のような広場からは当然歩きである。
馬車は鉱山ではたらく者に交渉して、1日何銅貨で預ける、飼葉のエサヤリつき、という感じで金銭を支払う。
隆康は、急に先行させたゴーレムたちを思い出した。感覚を探ってみると、土と水のゴーレムは坑道内に、砂、岩、木のゴーレムは鉱山表層部を探索しているみたいだ。それぞれ鉱石の含有が多い場所や休憩ポイントとなりそうなところを押さえている。
そういえば、どの鉱石を採りたいかもアンと認識統一しといたほうがいいな。
「さて、アン?鉱山についたわけだけど、どの鉱石を採るべきかな?俺もよく分からないが、金銀をとろうと思ったら坑道内がベストだけど、鉄だけでいいなら鉱山表層に良いところがあるみたいよ。アダマンタイトやそれ以上の金属になると、さらに少しヤバいところ、火口のしたの方にあるよ。」
そう、この山は火山である。火口それ自体は少し気を付ければ死んだりとかはないはずだが、隆康は先行する岩のゴーレムの見つけた情報から、結構ヤバいということを確認した。
火口にはヤバい理由・・・ 龍がいたのである。
亜竜や、他種族と交配の進んだ「竜」ではなく、混じりっ気なしの、正真正銘の「龍」がいたのである。
隆康は考えた。俺1人の場合は龍でもヤバくなったら逃げ切れそうである。しかし、ゴロリやアンを守りながらというのは正直技量も武器の威力も何一つ足りない。はっきり言って、覚悟も足らない。仲間や親しい人を失う覚悟というものを、前世でも持てていなかった・・・自衛官としては反省である。いまは少年といえども・・・。
なのでここは安全パイだ。火口に行きたきゃ、1人で行くことにしよう。
「アン、ゴロリ。坑道内の序盤くらいで適当に採掘をしよう。いいかな?」
「ええ。いいわよ。」
アンは元気よく返事をする。
「構わないぜ。でも、のめり込みすぎて迷子にならないように、坊ちゃん?」
ゴロリにはいまだに放蕩息子だと思われているので、正直信頼感が得られていない。ここらで挽回をせねば。
「よし。それでは行こう。」
坑道内は、ひんやりとしてなかなか涼しい。いまは春先だから
いいものの、これが冬とかだと厳しいかもしれない。
採掘の時期とかでも鉱石の値段は変わるのかもしれないな。物が年がら年中買えた前世日本の感覚は忘れた方がいいなぁ。
おっ?さっそくあの角のところに鉱石だまりがあるな。あそこを掘って落盤とかないか、ちょっと見てみよう。
『観察』
無詠唱で観察の魔法で、鉱石周辺及び岩盤を見渡す。どうやらちょっとやそっとじゃ崩れそうもないほど硬い壁らしい。
「アン。あそこの角のところを掘ってみよう。なんか出てくる気がする」
「分かったわ、タカくん。1発目はタカくんが掘る?それともアタシ?」
「ん、気にせず掘っていいぞ。どっちが掘ったって、その金属はアンの鍛冶屋作業場で加工して売り出すんだからな。」
「それだとタカくんの取り分がないじゃない?」
「先行投資だと思ってほしい。それに・・・」
ちょっと意図的にちゃかしてやろ。
「それに、腕のいい鍛冶士を抱えるのが将来的に最も利益になるんだよ。それが可愛い女の子ならなおさらね。女性は育てなきゃ。」
もちろん、前世ではそんな経験はないし、そもそも女性と付き合ったことすらない。前世の某古文、○○物語の主人公、光○氏の兄貴が素で行っていた行為である。ほんとにリスペクトである。
光○氏に尊敬を捧げているうちに、アンは完全に真赤になっている。
「あぅぅ。も、もう、なに言ってるのよぉ。」
照れてるのがなんか可愛い。
「さっ、照れてないで、掘ろうね。」
「わっ、分かってるわ。」
アンは慌てて堀り始めた。
ざっくし、カッキン、ゴロ、ザックザック、ゴロゴロ、カッキン。ゴロゴロゴロゴロ。
順調に鉱石入りの岩が採れている。お目当ての鉄鉱石、錫、銅、鉛等、前世ではあり得ないほどいろいろな種類の鉱石が同じ場所から採れている。鉱脈とかっていうよりも、確率の問題なのか?
まぁ、楽でいいや。
そうこうしていると、目標の量くらいまで達しそうになったので、一息つくために、アンとゴロリに声をかける。
「そろそろ運搬袋に鉱石を入れて一休みしようよ。アンのお尻にある袋に入れてもいいかい?(笑)」
「もぅ、わざわざお尻とか言わなくていいでしょ!エッチ。」
和気あいあいと採った鉱石を袋にいれていると、急に斥候ゴーレムから報告が入った。 坑道内に入った土、砂、水のゴーレムたちである。
水のゴーレムからタカたちから500メートル先の坑道で火山性ガスが噴出し、坑道内にいたわずかなモンスターたちがタカの方へ向かって移動を開始したとのことである。
モンスターの数は30数匹。ほとんどゴブリンみたいだが、中に数匹、ホブゴブリンとオークが混ざっているらしい。
普通の鉱山労働者や少数の冒険者、はたまた駆け出しなどは簡単に殺戮されてしまうだろう。
前世のゲーム知識通りならば、ゴブリンたちは女を殺さないらしい。犯して繁殖の道具にするためらしい。間違いなく、奴等はアンの匂いに釣られてこちらに来るだろう。
さて、こちらに来るまで少し時間はある。どうしたもんか・・・。
隆康は考え込むのであった。
順調に鉱石はとれました。
そして、お約束の問題生起で、ゴブリンが湧きました。
アンがゴブリンほいほいとなっているようです。




