第10話 鉱山出発前
鉱山へ行く前に準備やら何やらやります。
気がつくと、隆康はベットに横たわっていた。 昨日はゴーレムとオートマタを作ろうとして、そのままどうなったんだっけ?
寝ぼけてぼーっとしていると、横から声をかけられた。
「おはようございます。タカレーン様。よくお眠りになられましたでしょうか?」
横を見ると、サフィアによく似た顔立ちで、髪は黒髪、目は青色の少女がこちらを見ながらたたずんでいる。
「君は?」
「私はタカレーン様に昨日作られました、オートマタでございます。昨日、同じときに作られましたゴーレムたちは勝手ながら統制下におかせていただき、現在はこの屋敷の警備や薪割り、荷物運搬、親方様、奥方様の御者等をやらせております。」
「あー、成功してたんだね、昨日の創造は。君の名前は何て言うの?」
「はい。私の名前はまだ頂けておりません。あなた様がお作りになったので、あなた様がお決めになるのがよろしいと、親方様、奥方様は仰せです。」
「あー、そっか、うーん。どうしようかな。」
サフィアに似た顔立ちである。名前を少しあやかろうか。よし決めた。
「うん。名前はソフィーだ!今日から君はソフィーを名乗れ!」
「はい、私はただ今からソフィー、ツァード・ノル・タカレーン様の従者ソフィーです。以後よしなにお願い致します。」
深々と優雅で見事な礼を行うソフィー。どこで学んだのだろう?創造ではそんなものを入力した気がしないのだけど・・・
不思議そうにしてたのが伝わったのか、ソフィーがそれに答えてくれる。
「奥方様と、メイド長のサフィア様が礼儀作法については教えてくださいました。また、あとはこの屋敷にあった書物をすべてコピーして、検索・閲覧できるようにしていますので。」
すごいハイスペックである。
あ、もしかしてこのハイスペックが祟って、意識を刈り取られるほどの疲労が蓄積したのか!?
忘れていたけど、創造力はこの世界にその時、その場所で顕現させることが困難なものほど、労力がでかくなるようだ。
まぁ、意識がぶっ飛ぶくらいで済んで良かった、良かった。まあ、慣れとかでだんだん疲労の度合いも減ってるみたいだし、いずれはもっと大きく、文明的に高度なものも作れるようになるだろう。
「そうだ、ゴーレムたちのほうも見てみようかなぁ。」
「では、タカレーン様、こちらにお着替えになってください。あと30分ほどで朝6時になります。アン様、ゴロリ様と鉱山へ行かれるのでしょう?」
ソフィーは山へ入るための装備から食料、携行品などを準備しておいてくれたみたいだ。すっかり忘れていた。ソフィーには今後とも予定やらを管理してもらう秘書的な役割もお願いできそうだ。
「ありがとう。 じゃ、行こうか。」
自室の扉を開け、階段を下りる。一階のエントランスには鉄色の輝くゴーレムが剣を持ちつつ佇んでいる。よく屋敷とかにある鎧兜の置物みたいに全く動いていない。
人と違ってゴーレムにはこういうこともできるわけだ。すごく便利!
次は調理場である。 調理場では少し細身のゴーレムを発見。今朝の朝食を用意しているみたいだ。包丁捌きが非常に早く、食材が速攻でみじん切りとなっている。
次はゴロリの部屋の付近に掃除をしてるゴーレムがいた。このゴーレムはホウキ、はたき、スポンジ、雑巾、バケツ、たわし、ブラシ等、あらゆる掃除用具を身につけ、一心不乱に掃除をしている。朝からこの勢いとはいずれこの屋敷はチリ一つ落ちてなくなるにちがいない。
「すごいもんだ。オートマタのソフィーと3体もゴーレムを創るとなるとは、そりゃ意識も切れるわ・・・。」
「3体だけではございませんよ。この屋敷の庭の敷地内に約120体の兵隊ゴーレムを潜ませています。ほとんどは土に埋まっていますが、展開に速度を求められるようなときのために、庭石や池の水、植木など、すべてゴーレムの核を埋めて起動前の状態を維持しております。ですので、タカレーン様が意識を失われたのも、その数が原因なのではないでしょうか?そしてそのお陰で、このツァード家は、近隣の領主や諸侯より軍事的に強固な屋敷と言っても過言ではないでしょう。」
うわぁ。思った以上に創造をしてたんだなぁ。
これで話が屋敷への狼藉ものは排除できるだろう。
「あと、タカ様は「通視」の魔法により、すべてのゴーレムの視点をご覧になることができます。地下や、視界がないようなゴーレムの視点は見ると言うより、感じることができるようになります。やってみますか?」
言われた通りにやってみると、確かに土の中や岩、木などの中に自分の意識がいる感じがある。
これは使える気がする。前世は斥候等の偵察部隊にいたのが長く、偵察方法等、その手練手管を日々考えることは半ば職業病の域に達していた隆康である。ニヤニヤといろいろな活用方法を思案していると、ソフィーが再び語りかけてきた。
「タカレーン様がお望みならば私の視角にも接続は可能です。また、通常はゴーレムマスター等の役職を持つものしか制御不可能な同時視野の確保も私を通して頂ければ、最大50体まで可能です。」
なるほど、複数のゴーレムの感覚が、ソフィーの目を通して、同時に頭へと流れ込んでくるようだ。
これも、対人戦や対魔物戦において、圧倒的なアドバンテージとなるに違いない。今回の鉱山行きにも何体か連れていって、アンのために周囲へばら蒔いておこうかな。
「ソフィー、鉱山へ行くのだが、アンの周囲をこのゴーレムたちで警戒させたい。ただし、アンや周囲の人間に出くわすと魔物として退治されてしまうから、目立たず、隠密性の高いゴーレムを5体ほど起こせ。んで、早速、偵察として先行させろ!」
「承りました。土、木、岩、池、砂のゴーレムたちよ、主の命に従い、直ちに起きよ!」
周囲の景色が震えだし、突然ぼこっとゴーレムが身体を起こした。ソフィーは続けて、魔法を行使した。オートマタは人工知能だけでなく、魔法も使えるんだなぁ。
「あまねく音を鎮め、光を抑え、闇の力を増幅し、姿をくらましたまえ。「隠密」!」
詠唱つきの魔法は初めて見た。すると、さっきまでそこにいたゴーレムたちの存在が薄まり、形がすごく見えづらくなった。
「これはいいな。よし、ソフィー、先行させてくれ。」
「分かりました。ゴーレム1~5、目標鉱山、坑道内の中間地点。到着後は各個で探索せよ。前進。」
ゴーレムたちの気配が消えた。しかし、配下のためか、存在が動いているのは分かる。よし、俺もそろそろアンの店に行こうか。
屋敷の前にゴロリが馬車を用意してる手はずである。
「さぁ、ソフィー、俺らも出掛けよう。」
「はい、タカレーン様。」
そして隆康たちは馬車へと乗り込み出発したのであった。
結局、鉱山へ行く前に作ったゴーレムを確認すると、思った以上に作れていました。
そして、鉱山への道程の先触れ、いわゆる斥候のため、隠密性のあるゴーレムを起動し、先行させました。
あと、ソフィーは魔法を使えるオートマタです。( ̄∇ ̄*)ゞ




