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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:01 OPEN SEASON 「解禁期」   ── 敵を探し、殲滅せよ。
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警視庁特殊部隊第四小隊 ──「あらゆる脅威の芽は、我々の手によって摘み取られるのです」



 演習評価室。


 この窓のない広い一室では、スクリーンに訓練の一部始終の映像が中継されており、東京都知事ほか、警視庁と警察庁の幹部、国防軍関係者、防衛省役員たちがそれを注意深く見守っていた。


 東京都知事、早河(はやかわ)真司郎(しんじろう)は、椅子に深く腰掛けたまま難しい顔つきを固めていた。


 

「これが……宰河弘樹警視が率いる、警視庁特殊部隊SAT第四小隊です」



 スクリーンの脇に立っているSAT中隊長の鶴騎(つるき)恭一(きょういち)警視正が、精悍な表情で解説する。



「『死』を想起させることから、本来では欠番扱いとなっている第四の小隊ですが……私の進言を発端として、新たに編成された秘密の少数精鋭攻撃部隊です。刑法の中で最も重罪とされる『刑法第八十一条』を犯した者に対しての法執行部隊として組み上げました」



 早河知事の隣に座った、国防陸軍の陸上幕僚長である瀧波(たきなみ)岳人(がくと)が、静かに拍手をする。



「随分、型破りな作戦を行ったものだ。二階の床を爆破して奇襲するなんて、警察がやる事じゃない。煙幕弾を仕込んだ人形を使ったり、ロシア製のショットガンを使ったり、敵を盾にしたり……とにかく、全てが規格外だ。恐れ入ったよ。これでは、どちらがテロリストか分からなくなるな……」



「し、しかしですね……」



 早河知事は、気後れしながらもおずおずと発言する。



「この作戦行動は、流石に問題があるのでは……? 人質が居た場合は巻き込んでしまう可能性が高いですし、一般市民の家屋をこう簡単に爆破するなんてとてもじゃないですが……」



「早河知事」



 瀧波陸幕長は、わざと大きめの声を出して遮る。



「これは、訓練ですよ。人質は居ないし、爆破が許可された建物での模擬戦です。いま、現実問題と短絡的に結びつけるのは、ナンセンスですよ。そもそも、第四小隊が出動する状況、すなわち、『刑法第八十一条』が適用された犯罪は、今まで一度として起こったことはありません」



「まあ……それは、そうですけども……」



「大丈夫、ご安心を。早河知事の任期の間は、この第四小隊が出動するような事態はまず起こらないでしょう。それに……この日本には、我々、国防軍が居る。あらゆる脅威の芽は、我々の手によって摘み取られるのです」



 国防においては警察の活躍の場はないと言いたげな口振りに、鶴騎中隊長は一瞬だけムッとした顔つきを見せた。


 それに引きかえ、警察庁長官官房長の宮潟晴十郎は、何処に感動する要素があったのか、強く握りこぶしを作って感動の涙を流し続けている。


 早河知事は溜息をついて、椅子のドリンクホルダーに挿してある紙コップの緑茶を一気に飲み干し、緊張で乾いた喉を潤す。



「早河知事……この東京には、【東京テレポーター】があります」



 鶴騎中隊長は、おもむろにそう切り出した。



「常々、私どもは警鐘を鳴らしてきておりますが、この場で改めて申し上げますと、その【東京テレポーター】が、国会議事堂や原発施設に次いで、新たなテロの標的になる危険性が高い重要施設と考えております」


 

 早河知事は「ううむ」と唸り、額の汗をハンカチで拭ってから答える。



「……その危険性については、既に承知していますが。だから、あそこに警視庁特殊部隊SATと銃器対策部隊の特別警備チームを配置することを認可しているじゃありませんか。まさか……まだ戦力が足りないとおっしゃるのですか」



「その通りです。【東京テレポーター】の敷地内で不審物が発見されたり、爆破予告を受ける事案が今年だけでも二十六件。その内の二件は本物の爆発物が使われていました。世界から、狙われているんですよ……あの場所は」



「そう言われましてもね……ならば、どうすべきと?」



「国防軍と警察の、強力な共同警備体制を敷くべきです。【東京テレポーター】があるのは、お台場。つまり、巨大な島です。あの場所で有事が発生した際に、現状では、応援を迅速に派遣することが出来ません」



「うーむ……。気持ちは分かりますが……既に現時点で、重武装の警官を置くことに抵抗の念を示す市民の声が少なくない。あの場所は、日本技術を世界にアピールする象徴、観光地という側面も持っています。そこに軍隊を配置するのは、流石に……」



 早河知事は、横目で瀧波陸幕長をちらりと見た。


 瀧波陸幕長は腕を組んで、値踏みするような視線を鶴騎中隊長に向ける。



「鶴騎警視正……それはつまり、民間施設を一つ守るのに、警察では力不足だと言うのですかな?」



「……あそこは、ただの民間施設ではありませんよ。知っているでしょう。あんな『怪物』、誰にだって手なずけられるものだとは思いません」



 そこで、この模擬戦を主催する警視庁警備部長の鷹橋(たかはし)教彦(きよひこ)が、パンパンと大きく手を叩く。



「まあまあ、そのくらいで。本題から外れる話はまた別の機会に。今日はクリスマスイブです。テロリストだって、今日は大人しく家でケーキやチキンを食べたいものでしょう。まさに今日、東京が攻撃されるなんて、有り得ないことですよ」 



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