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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:02 THE GATEWAY OF HELL 「地獄のゲートウェイ」 ── 異世界の使者と対峙せよ。
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ラスト・エスケイプ (2)  ──「容赦なく焼き殺し、切り裂き、撃ち殺した」


 冷酷な目つきで彼女はそう言った。

 篠巻は戸惑いながら、ゆっくりとSIG556を構える。


 片膝立ちになり灰色の血を流し続ける男が視線を上げ、凶悪な顔つきで篠巻を睨みつけた。

 銃を構えながら、篠巻は問いかける。



「答えてくれ……どうしてこんな惨いことをやった?」



 男は無言で睨み続ける。



「答えろよ……。みんな、生きていたんだ。自分の生活があって、家族がいて、みんな、クリスマスイブを幸せに過ごしていたんだ。


 でも、お前たちが、全て壊した。容赦なく焼き殺し、切り裂き、撃ち殺した。

 こんなことをやって、どうして、お前らは幸せでいられるんだ? お前らには、家族が居ないのか?


 何故、殺したんだ! ────答えろよ!!」



 篠巻は怒りに満ちた声を上げた。


 すると男は、口の中の血混じりの唾を吐き捨てて、聞いたことのない言語で何かを言って、床に落ちた凶器に右腕を伸ばした。



「やめろ!」



 篠巻は叫び、引き金を絞った。

 男の顔面に銃弾が炸裂した。一瞬、満足そうな笑みを作り、男はそのまま息を引き取った。


 SIG556のボルトが、後退位置で停止していた。弾切れだ。

 篠巻は銃を投げ捨てた。


 初めて人を殺した。実弾で撃ち、確かに殺した。


 だが、こんなものか、と思う。

 テレビや書籍の体験談で見たほど、大袈裟なものではない。


 それは既に自身の存在が、この凄惨な煉獄に飲まれ、受け入れられてしまっているからなのだろうか。



「こいつは最後……何て言ったんだろう」



 その疑問に、天城が答えた。





「『それが、私の任務だから』」 





「……え?」



 篠巻は驚きの視線を向ける。



「……いやですね、篠巻くん。想像ですよ。この男は、そんな冷徹な軍人を思わせる目をしていました。戦って死ねて本望なんでしょうかね。だから、篠巻くんは気に病まなくて良いと思います」



 天城は篠巻を励ますように、背中を叩いた。


 そこで突然、ジュウウと何かが溶けるような音が鳴った。

 驚いて見ると、二人の男の身体が装身具もろとも石像のごとく灰色に固まっていき、ボロボロと崩れてただの灰の山へと変わっていく。



「こいつら、いったい、何者なんだ……!? 人間じゃない……!」



「少なくとも、この世の者ではないでしょうね。けれど、詳細な研究は学者に任せましょう。とにかく私たちは、早く出口を見つけて脱出するんです」

 


 篠巻は、視線を窓に移した。

 そこには、あの邪悪な蒼い光が相変わらず煌々と光っている。


 …………まだ、あと一人、いる。

 

 『三人目』の気配は感じられない。いったい、何処にいるのだろうか。

 この世の者であろうとなかろうと、その最後の一人を倒さなければ、この光は解けない。篠巻は、そう直感していた。



 篠巻は陰鬱な表情で、天城と保安検査場をくぐり抜ける。



 濃厚な血の匂いが鼻を刺激した。


 大量の死体が、もうすぐ近くにある。



 無人のラウンジを慎重に通過し、ゲートを抜け、その先にある搭乗ホールの景色を見つめる。



 ……ああ。



 篠巻は、悪夢に苛まれるかのような非現実感に、ただ茫然と立ち尽くした。



 朝に見たあのSFチックで夢が広がる白いホールは、今や血の海に覆われ八つ裂きの肉片が辺り一面に転がる、醜怪で陰惨な、この世の地獄と化していた。



 切り刻まれた警官隊の死体があちこちに転がり、通路の窓枠には人皮や腸が引っかかって垂れ下がり、オブジェのように大量の切断された頭部が落ちている。



 多数の薬莢が床に転がっていた。

 激しい戦闘の末、彼らは全滅したのだ。



 ノアズ・アークの周囲にも、夥しい量の血と肉片に紛れて、灰の山があちこちに積もっていた。

 警官隊と戦ったテロリストたちも、多くが銃弾を受けて死んでいったのだろう。



 篠巻は、床に転がっていたMPXサブマシンガンを右手で拾い上げ、左手で天城の手を握った。


 そしてノアズ・アークの船体の上に立つ、たった一人の女を見据える。



 腰まで伸びた真っ白な髪。

 病的なまでに白く透き通った肌。

 ゴシックロリータ風の装飾が施された、真紅のドレス。



 彼女こそ、『三人目』。

 最後のテロリスト。


 その女は、篠巻と天城の姿に気が付いて、赤い唇で笑みを作りながら、行儀よくお辞儀をした。




「はじめまして。わたしは、ミイと申します。



 ──────まだ、ニンゲンが、イタンデスネ」

 


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