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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:02 THE GATEWAY OF HELL 「地獄のゲートウェイ」 ── 異世界の使者と対峙せよ。
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ノアズ・アークの漂流 (1)  ──「死ぬのはお前の方だったな」


 同刻、東京テレポーター、『ノアズ・アーク』内。


 一般乗客のスペースとは仕切られた小部屋に、武装した四人の男が円陣を組んで待機していた。

 テーブル越しに全員が、互いに殺意を込めた視線をぶつけ合う。


 男の一人が、静かに右手を掲げた。

 


「…………これで、お前は『死』だ」



 テーブルの上に、一枚のカードを置く。

 

 ────『ワイルド・ドロー4』。


 SAT第一小隊隊員、小野寺勝巳は、ニヤリと笑った。


 隣に座っていたSAT第一小隊隊員、綾継義雄が顔を真っ赤にして、口の中の喉飴をバキベキッと噛み砕いた。


 このUNOカードが出された次の人間は、山札から四枚UNOカードを引いて取らなければならない。

 しかも、場に出されたワイルド・ドロー4カードは一枚ではなく三枚。

 つまり綾継は三×四で計十二枚引く必要がある。


 これで、綾継のUNOの勝利は絶望的となった。


 満面の笑みを浮かべる小野寺の手札はもう残り一枚。今のところ一番リードしている。


 綾継は頬をプルプルと震わせながら、十二枚のUNOカードを引いた。



「へっ。悪いなぁ、綾継」



 すると綾継は、真っ赤な顔をゆっくりと小野寺に向け、今にも噛みつきそうな恐ろしい表情で睨みつける。



「……ってない」



 ボソボソと、何かを言った。



「なんだよ、文句があるのか?」



 すると今度は、よく聞こえる声で綾継は言った。



 ────「『UNO!』って言ってない……!」



 ようやく小野寺は自分のミスに気が付いて、あんぐりと口を開く。

 UNOでは、手札が残り一枚になった時点で『UNO!』と宣言しなければ、リーチは無効となりペナルティが課せられるのだ。


 綾継は相変わらず顔を真っ赤にしたまま、鬼か般若か悪魔の形相で笑い始める。



「ペナルティはカード追加十二枚だ……! 死ぬのはお前の方だったな、小野寺ァ……!」



「あぐッ……うぁあああ……!!」



 絶望のどん底に落とされた小野寺は、呻きながら泣く泣くカードを十二枚引く。


 UNOをプレイしていた銃器対策部隊の隊員、西生(にしお)悟郎(ごろう)警部補は、腕を組んで深々と頷く。



「なるほど。プレイ前に、宣言失敗ペナルティはカード追加十二枚と念押ししていたのは、この伏線だったのか……」



「UNOでもSATの実力を見る羽目になるとは……同士討ちだけど」



 もう一人の銃器対策部隊の隊員、加座(かざ)昭典(あきのり)警部補も、やれやれと首を振る。

 

 小野寺、綾継、西生、加座の四人は、ノアズ・アーク内のトラブルに対処するために待機しているチームだ。

 短時間とはいえ完全な密室になるノアズ・アークの内部で、何らかの事案が発生した際には、彼らが初動対応を行うことになる。


 しかし今まで、このエリアに関しては急病人の救助くらいしか事案は発生していない。

 悪事を行おうと目論む者にとって、この密室はあまりにも不都合が多い。当然のことだ。


 だから毎回、この場所に割り当てられたメンバーはこうして暇つぶしに興じている。



「くそっ……こんな凡ミスで……。しかも十三枚かよ……縁起も悪いな」



 小野寺は、カードを憎々しげに見つめた。



<皆様、東京テレポーターをご利用いただきありがとうございます。間もなく、テレポーターが起動します>



 テレポーターの始動アナウンスが掛かった。もうそんな時間か。



「よし、残念だがゲームは中止せざるをえない。みんな、シートベルトを着けよう」



 小野寺はごくごく自然な立ち回りで、十三枚のカードを山札に戻す。



「おい、お前何をしてるんだ?」



「起動したらカードが無重力でバラバラになるだろう。早く片付けなきゃ」



 抗議する綾継を宥め、小野寺はさっさとカードとテーブルを片付け、着席してシートベルトを締める。



「覚えてるからな? 十三。十三枚だ。再開したら、十三枚から始めてもらうからな?」



「はいはい。お前こそ枚数を誤魔化さないでくれよ。一番多いんだからな……」



 四人ともシートベルトをしっかりと身に着け、転送に備える。



<テレポーターが、起動します>


 

 アナウンスが流れ、ノアズ・アークの下降が始まった。



「……さらば、東京の地」



 意味もなく、小野寺は独りごちた。


 やがて重力が弱まり、浮遊感を身体で感じられるようになる。

 綾継は持ったままでいた手札を宙に浮かし、両手の間で弄び始める。



「一回くらい、シートベルトを外してフワフワ飛んでみたいもんだ」



「流石にそれは危険だからやめとけよ……」



 小野寺が呆れ笑いを浮かべてそう言った刹那。




 激しい轟音と共に、ノアズ・アークが大きく振動した。




「なっ、何だ!!」



 船体の軋む音が響き、天井の照明が明滅する。



「地震か? 勘弁しろよ……!!」



 途端に、シートベルトが急激に締まって、小野寺は苦痛に叫んだ。 


 急速な下降が始まった。


 感覚で分かる。


 ────このノアズ・アークが、『落下』しているのだ。


 支柱が外れた船体が穴の奥底へと落ちていく光景が頭の中に浮かび、小野寺はたまらず悲鳴を上げる。


 乗客全員の悲鳴の波が奔流となって、ノアズ・アーク内を駆け巡った。


 四人はシートベルトを必死に掴み、絶叫する。



「ぁああああああああああ────!!」



 全ての照明が、火花を噴いて弾け飛んだ。


 真の闇に覆われる。


 何かが唸るような轟音が船体の外を過ぎ去り、そして、巨大な衝撃が襲い掛かった。



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