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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:01 OPEN SEASON 「解禁期」   ── 敵を探し、殲滅せよ。
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プル・ザ・トリガー101 (2)  ──「また、胸の下着を着けてこなかったな?」


 カメラの映像が切り替わる。

 古淵の隣の射座に立つ、国産アサルトライフルである89式小銃を持った半田が映し出された。


挿絵(By みてみん)



「さて……人体の弱点についての説明を行ったが、もちろん、敵よりも強力な武器を使用することも重要になる。

 このアサルトライフルは、サブマシンガンの優れた連射性能と機動力、ライフルの高い威力と命中精度を、バランス良く両立させた優秀な火器だ。敵に対するダメージが高いだけでなく、防弾装備や遮蔽物の多くを無力化できる。先ほど俺は完全万能な武器は無いと言ったが、それに近いのはこのアサルトライフルだ。……よし半田、出番だ」



「了解」



 基本的な拳銃弾を防ぐ防弾レベル2の防弾チョッキを装着したマネキンに向かって、89式小銃を構えた。

 一際鋭い銃声が、連続で轟いた。フルオート射撃だ。

 左腕を伸ばし、ハンドガードをしっかりと包むように保持して銃身の跳ね上がりを抑え込み、猛連射をマネキンに容赦なく叩き込む。

 撃ち終えた時には、防弾チョッキはマネキンごとボロボロの有様になっていた。



「……おい半田、三発で良いと言っていたはずだが?」



「すみません。しかしさっき、『完全に死ぬまで全身に弾丸を撃ち込め』とも学びましたので」



 俺は溜息をついて、説明に戻る。



「とにかく……この通りだ。ピストルやサブマシンガンよりも貫通性能が高いライフルは、敵にとって大いに脅威となる。

 我々が使用するNATO規格の5.56ミリアサルトライフル弾は、法執行機関専用のスチールポイント弾。これは鉄製の鋭い槍状のパーツと、柔らかい鉛部分の二層で構成された弾頭で、標的の防弾装備を突き破り柔らかい人体へ着弾すると、鉛の部分が弾けて大きな損傷を与える仕組みになっている。脳や心臓を一撃で破壊するのに、充分たる威力だ。

 ……たとえ相手がバケモノだったとしても、人型ならこの弾で倒せるだろうな」



 軽いジョークのつもりだったが、六人の新人たちにとっては違ったようで、一様に怯えた表情になる。



「続いては、ショットガンだ」



 カメラの映像が変わる。

 モスバーグ社製のM590ショットガンを持った宮潟が、カメラ目線で、左手に握ったフォアエンドを前後にジャキンッと動かした。


 彼女はタクティカルベストを身に着けておらず、ぴっちりとしたアサルトスーツのみの姿で豊かな胸が強調されて見えて、新人たちの目に自然と力が入っていく。


挿絵(By みてみん)



「ショットガンは、さらに大口径で破壊力に優れるショットシェルを発砲する。散弾を封入したショットシェルを発砲した場合、銃口から飛び出た後に拡散して標的に致命的なダメージを与える。射程は短いが、近距離戦では非常に有効な火器だ。……宮潟、撃ってみろ」



「オーケー」



 宮潟はショットガンを構え、マネキンに向かって発砲した。

 腹に響く重い発砲音が轟いて、同時にマネキンへ大粒の弾痕が蜂の巣のように一斉に穿たれた。

 反動を受け流しながらジャキンとフォアエンドを引いて薬莢を排出、そのまま前に押し戻して二発目を撃った。

 マネキンの顔半分が砕け散って吹き飛ぶ。


 六人の新人はというと、ショットガンの強い反動で揺れる宮潟の豊かな胸に視線を釘付けにされていた。



「……宮潟、一発で良いって言ったはずだよな」



「そんなこと言ったかしら?」



「あと……言いにくいが……また、胸の下着を着けてこなかったな?」



「だって、撃つたびに食い込んでちょっと痛いのよ」



 そう言って宮潟はもう一発撃って、マネキンの頭を完全に粉砕した。


 俺は大きめに咳払いをして、説明に戻る。



「ショットガンには、高い威力を持つということ以外にも、場面に応じて多種多様な弾薬を選択できるという利点がある。基本的な散弾や、一粒弾で射程が長いスラッグ弾の他に、今から見せる次のような特殊弾もある。……宮潟、言う通りに撃ってくれ」



 宮潟は首を後ろに傾けて俺にウインクを見せてから、弾を込め直したショットガンを構え、二体目の防弾チョッキを着たマネキンに狙いを定めた。



「フレシェット弾。鉄製の小さい矢を複数封入した弾で、防弾装備を撃ち抜ける」



 発砲と同時に、マネキンの防弾チョッキに弾痕が開いた。



「フレアー弾。着弾するとマグネシウムの燃焼が始まり、強い光と熱を放つ。合図を送ったり、敵を陽動する目的に使用される」



 二弾目の発砲。マネキンの股間にフレアー弾が刺さり、間もなく煌々とした光を放って炎上を始める。



「ワイヤー弾。鉄の弾にワイヤーソウを接続した弾を発射する。草木などの簡単な障害物の除去に使用する」



 発砲と同時に、高速で飛翔したワイヤーがマネキンの腕を鋭利に切断した。



「フラグ弾。18ミリ口径の徹甲グレネード弾を発射する。軽装甲車両や機械への攻撃に使用する。無論、対人用としての使用は厳禁だ」



 着弾したグレネード弾が爆音と共に派手に炸裂し、マネキンの上体を粉々に消し飛ばした。

 六人の新人たちは、銃声のみを遮音する射撃用イヤープラグを装着しているとはいえ、その威力に面食らって思わず竦み上がった。



「この他にも色々な弾薬が存在するが、このくらいで割愛する。ショットガンは、アサルトライフルよりも取り扱いが特殊だが、訓練を積むことで汎用性に富んだ便利な火器となるだろう」



 俺はペンを置いて、再びスポーツドリンクで喉を潤す。



「最後の実演だ。アンチマテリアル・ライフル。『銃』と呼称できる中では最大級の弾丸を使用するカテゴリだ。第一次世界大戦で初めて戦車が実戦に投入された際に、歩兵用の銃をスケールアップし威力を高めることで有効な対抗火器としたのが、この種類の銃器の源流だ」



 モニターが、最後の柚岐谷に切り替わる。


 その手に抱えているのは、バレット社製M82A1アンチマテリアル・ライフル。

 巨砲を思わせる無骨で大柄な銃で、12.7ミリNATO弾を使用する。これは重機関銃に使用される弾で、有効射程は一キロメートル以上に達する。


挿絵(By みてみん)

 

「別に、敵戦車との戦闘まで想定してこんな『怪物』を配備しているわけじゃない。航空機のハイジャック犯の狙撃に使用するための銃だ。通常のライフル弾では飛行機の風防ガラスを撃ち抜くことは出来ないから、こういった特殊な銃が必要になる。……さて柚岐谷、実演だ。一応言っておくが、一発で、充分だ」



 柚岐谷は無言で頷くと、素早くバレットの二脚を展開して地面に設置して、伏せ撃ちの姿勢を取った。

 モニターには、縦一列に並んだ三体のマネキン。この射撃場の一番奥、百メートルの位置に設置されている。


 古淵、半田、宮潟の三人は咄嗟に、イヤープラグを着けた耳を両手で覆った。それを見た新人たちも、慌てて耳を塞ぐ。

 俺だけは、手を後ろに組んだ姿勢で発砲の成り行きを見守った。


 柚岐谷がバレットの引き金を絞った。

 恐ろしい砲声が地を揺らし、銃口から噴き上がった爆炎が、周囲の埃を猛然と噴き上げる。

 白色に発光しながら飛翔する曳光弾の弾道が見えた。


 先頭のマネキンの腹部を粉砕、後続のマネキンも貫通した弾丸で派手に砕き、三体目のマネキンも易々と撃ち砕いて、そして最後は射撃場の壁に激突して噴煙を散らした。


 六人の新人は、初めて肉眼で目の当たりにしたその凄まじい威力に、目を見開いてひたすら凍り付いていた。



「……と、まぁ、このような形だ。強烈な一発だったろう。さて……ここまでで、何か質問がある者は?」



 新人たちは互いに蒼白な顔を見合わせて、その内の一人がおずおずと手を挙げた。



「こ、このような重火器が必要となるような凶悪犯と……今後、我々は戦うことになるのでしょうか……」



 それに対し、俺は首をゆっくりと傾げ、「さて、どうかな」と答えた。



「この備えは、いつか現れるであろう、我々の力を恐れぬような邪悪と対峙する為だ。通常の警察官では到底手に負えない凶悪事件に対処することを任務とする、日本警察の最後の盾であり、最後の切り札。

 それが我々────警視庁特殊部隊【SAT】だ」

 



【Pull the trigger 101】-【射撃入門】(直訳:トリガーの引き方講座)

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