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東京バトルフィールド <東京を奪還せよ。異世界の魔法使いの手から>  作者: 相山タツヤ
STAGE:01 OPEN SEASON 「解禁期」   ── 敵を探し、殲滅せよ。
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厳戒態勢  ──「俺たちは、巨大な爆弾の上に立っている」


 同刻、東京テレポーター。


 建物の裏手に設けられた、一般客用とは異なる地下駐車場の入り口から、一台の車両がゆっくりと進入してきた。


 青色のボディに白色の横帯が塗装され、赤いパトランプが載った、重厚な迫力を醸す大型の防弾装甲車両。警察の銃器対策警備車だ。


 駐車された多数の警察車両の間を抜け、奥の駐車スペースに停車した。


 後部のハッチが開き、重武装の男が一人降り立つ。



「こちらS1。予定通り、東京テレポーターに到着。これよりS5と交代し、警備に移る」



 警視庁特殊部隊SAT、第一小隊長の永友(ながとも)裕史(ゆうし)警視は、無線で状況報告を終えた。


 永友の手に握られているショットガンは、イタリアのバルトロ社製、PM5。


挿絵(By みてみん)


 銃身下のフォアエンドを手動で前後させて連発するポンプアクション式で、速射性能こそ劣るものの、堅牢な設計で悪条件下でも作動信頼性が高く、迅速な弾薬交換が可能な着脱式マガジンを持つ。


 右太股に取り付けたサファリランド社製SLSレッグホルスターには、S&W社のM&P9オートマチックピストルが収納されており、後ろ腰のバックサイドホルスターにも護身用のグロック社製G26ピストルを差してある。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


 永友は車両の脇に避け、降車する小隊の面々を迎えた。


 まず出てきたのは、丸顔を不機嫌そうにしかめた小野寺(おのでら)勝巳(かつみ)警部。


 ケルテック社製のKSGコンバットショットガンを抱えている。


挿絵(By みてみん)


 KSGは最近SATに配備され始めた銃で、二連のチューブマガジンを内蔵しているおかげで、効果の異なる二種類の弾丸をあらかじめ装填しておくことで、ワンタッチで発射弾を切り替えることが出来るようになっている。


レッグホルスターにはS&W社製のM586マグナムリボルバーが収まっていた。


挿絵(By みてみん)


 続いて、PM5ショットガンを手にした、大柄で浅黒い肌をした三条(さんじょう)利男(としお)警部が自信に満ちた顔つきで降車した。

 不満な表情を隠さない小野寺の隣に立ち、その背中を思い切り叩いた。


 それから、アジア系の濃い顔立ちをした綾継(あやつぐ)義雄(よしお)警部補が、口の中で喉飴を舐めながら、H&K社製のMP5Kサブマシンガンを抱えてのそりと降りてきた。


挿絵(By みてみん)


 MP5Kは取り回しの軽さが利点で、使用する弾は比較的威力が低い拳銃弾だが、その代わり反動が少なく連射性能に優れている。


 その後、綿貫(わたぬき)巡査部長、新藤(しんどう)警部補、福泉(ふくいずみ)警部補の順で降車し、最後に髪をポニーテールでまとめた背の高い女性隊員、栗沢(くりさわ)(あさひ)警部が降りて、銃器対策警備車のドアを閉めた。



「総員、銃器の最終点検!」



 永友は言いながら、マガジンの抜いてあるPM5ショットガンの点検を始めた。

 左手でフォアエンドを引き、後退位置で止める。開いた排莢口から弾が入っていないことを目視確認して、フォアエンドを前進させ、最後に引き金を引いてカチンと空撃ちした。



「……全く、こんな厳重警備、大袈裟すぎじゃないですか」



 無愛想な顔でM586リボルバーのシリンダーを点検する小野寺が、ボソリと呟いた。



「所轄の警官を配置すれば済む仕事なのに、わざわざ俺たちが出る幕ですかね」



 東京および大阪のテレポーターの施設警備には、警視庁特殊部隊SATから一個小隊、警視庁銃器対策部隊からも二個班が派遣されており、異例の厳重体制を誇る。

 一部の官僚から『過剰警備だ』という批判が出るのは日常茶飯事だ。


 そんな小野寺の愚痴に対し、三条は鼻で笑って答える。



「お上の命令だ。俺たちの意志は関係ない。それに、楽な仕事の何が悪い。毎日毎日キツい訓練ばっかりしてる方が良いのか?」



 綾継も大きく頷いて彼に同調する。



「平和以外に望むものは無い。俺はこの任務が好きだ」



 一連の会話を聞いていた栗沢が、KSGショットガンの点検を終えて、気だるそうに首を傾ける。



「言うほど、この場所って平和ですっけ? 小隊長?」



 視線を受け取った永友は表情を引き締め、低い声で言う。



「この中に、東京湾に沈みたい奴はいるか」



 突然投げかけられた言葉に、隊員全員が硬直する。


 数秒の沈黙の後、綾継が「ふむ」と鼻を慣らし、MP5Kのコッキングハンドルを平手で打ち下ろしてボルトを前進させた。



「永友さんに沈めてもらえるなら、喜んで。身も心も清めて帰ってきます」



 真面目な顔つきで答える彼を見て、永友は口の端で微かに笑ってから、首を横に振る。



「心がけは結構だが、あいにく、沈めるのは俺じゃない。どうやら、重大なことが頭から欠落している奴が多そうだな」



 間を置いて言った。



「俺たちは、巨大な爆弾の上に立っている。絶対に忘れるな」



 地中深くに横たわる、巨大な円型の陽子加速器。太いパイプ状の装置で、この建物を中心として一キロ四方の地下に巡らされている。これが、テレポーターの発生装置だ。


 加速器の中では、光速まで加速された陽子同士の衝突爆発が繰り返されており、極めて高いエネルギーで押し潰された陽子は、極小のブラック・ホールを形成する。それが無数に繰り返し重ねられることで、空間を歪める絶大なエネルギーが蓄積されるのだ。


 十年前、この力を利用して、世界で初めて物体の瞬間的な遠距離移動を成功させたのが、物理学者でありJTEC社の現・会長の中嶋(なかじま)稔道(としみち)だ。



「もし、極大なパワーを貯め込んだ陽子加速機が、故意に一カ所でもヒビを入れられたらどうなるか。JTECの説明では、何重にも備わった安全装置が稼働し、百パーセント安全に停止する……とのことだが、果たしてどうだろうな」



 敷地内で不審物が発見されたり、爆破予告を受ける事案が今年だけでも二十六件。

 その内の二件は本物の爆発物が使われていた。

 イタズラ程度の威力のもので、犯人は二件とも既に逮捕されているとはいえ、今後、本気でこの施設を地獄に葬ろうとする人間が出てくるのは時間の問題に思われた。



「本当に安全なら、小野寺の言う通り所轄の連中に任せれば済むだろう。だが現実には、対テロ部隊の俺たちが派遣された。これがどういうことか、分かるな」



 敵は国内の愉快犯だけではない。

 テレポーターの技術を奪うべく、いくつかの近隣国が動き始めている。

 不自然な業務提携を名乗り出て、それがJTECに断られたとなったら、裏で従業員の抱き込みを図ったり、立ち入り禁止のエリアに『外国人観光客』を送り込むような悪知恵を仕掛けてくるようになった。

 本格的な武力衝突はまだ発生していないものの、相手が相手だけに予断を許さない状況だ。


 一人一人に視線を配り、全員が事態の深刻さを理解した顔つきになったことを確かめてから、永友は声を張り上げる。



「全員、思い出せ。あらゆる日本の技術が時代遅れとなり果て、惨めに引き離されて行こうとした時、輝かしいニュースが世界中を巡り回ったあの日のことを。


 初めてテレポーターの実用化に成功したのは、日本だ。日本中が歓喜した。俺は、同じ日本人として誇りに思った。また日本は蘇るんだと、強く思った。


 この場所は、未来への希望であり、多くの日本人の心の柱だ。絶対に死守するんだ。

 日本警察最高の精鋭である俺たちにしか出来ない。

 懸かっているのは、日本人としての誇りだ。────分かったな!」



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