東京異世界事変
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本作品はフィクションです。
実在の人物や組織などとは一切関係ありません。
特定の思想や団体を批判あるいは讃美する意図や、法律や条例の違反を推奨する意図も一切なく、全て架空の物語の設定上によるものです。
また、本作品には暴力的、猟奇的な記述・表現が多数含まれています。
未成年の方や、残酷表現が苦手な方は、予めご注意ください。
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東京。
日本国の首都であり、人口は一千万人を超える、世界有数の経済力を持つ大都市。
十二月二十四日、クリスマスイブの夜。
街のあちこちでクリスマス用のイルミネーションが灯り、厚手のコートを羽織って外を歩く者たちを温かく照らしていた。
ある者は恋人と共に、ある者は家族と共に。それぞれが、クリスマスの時を幸せに過ごしている。
突然、凍えるような冷たい突風が、東京湾の方角からやってきた。
大通りを激しく吹き抜けていき、歩行者たちは一様に顔を背けてその寒さを堪えた。
歩道に捨てられていたコーラの缶が浮き上がり、カロン、カロン、と小気味良い音を立てて、車道に転がり出た。
風に遊ばれ陽気に車道を転がりまわる缶は、次の瞬間、やってきた約十七トンのジェネラル・ダイナミクス社製ストライカー軍用装甲車の車輪によってグシャリと踏み潰された。
重機関銃を搭載した三両のストライカー装甲車が次々と缶を潰していき、さらに続いて、警視庁の銃器対策警備車と九六式装甲車の群れが騒々しく通過していく。
彼らの上空では、クリスマスイブの静謐な空を掻き乱すヘリコプターが飛んでいた。
それはテレビ局の取材ヘリなどではない。
30ミリ機関砲、ヘルファイア対戦車ミサイル、スティンガー対空ミサイル、ハイドラ70ロケット弾を搭載し完全武装した、ボーイング社製AH64Dアパッチ・ロングボウ対戦車ヘリコプター。
この東京を戦場へと変移させていく兵器の行軍を見つめていたのは、【人間】だけではなかった。
日本中枢の地に杭打つようにそびえ立つ赤の巨大電波塔、東京タワー。
その最上部、特別展望台の屋根の上に、漆黒の軍服を身に纏った一人の女性が立っている。
彼女は銀色の髪を風になびかせながら、金色に淡く光る瞳で東京の街を見下ろしていた。
「……我々に、退却という選択肢は無い。対峙する全ての敵を斃し、進撃を続けるのみである。
命尽き、故郷より遥か遠く離れたこの異世界の地で、冷たく朽ち果てる……その時まで」
右腕を、ゆっくりと天に向けて掲げる。
「全部隊、行動を開始せよ。──────この地を、奪い取れ」
彼女の言葉と共に、東京上空に次々と赤い光を放つ巨大な魔法陣が出現する。
燃えるように鮮やかな赤色の泉を湛えた魔法陣の内環から、生み出された黒き怪物たちが、徐々に体を浮き上がらせていく。
大翼を広げた、黒の竜の群れ。
天空を揺るがす無数の悪魔の声が、戦争の幕開けを告げた。





