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第15話 遭遇 その3

ちょっと長くなったので2つに分けました!

第16話は19時にアップシマス!

 今の僕達にあの化け物を破壊することは不可能だ。レベルも足りなければ、有効なダメージを与える武器もないし、数の暴力で攻めることも出来ない。

 できることはひとつ。逃げる事。

 だけど、何も策無くただ隠れながら地下3階に上がれる坑道に向かっても、周囲にひしめく地人じびとに見つかって終わりだ。

 そこから導き出される作戦。

 奴らを撹乱し、欺き、そして隙を作る。


 悠吾はトレースギアに表示されたメニューのスキルメニューから、「兵器生成Lv1」をタップし、生産リストを表示させた。

 兵器生成Lv1は一番レベルが低い「素人クラス」の兵器やアイテムしか生成できない。生成できる数もわずかだ。

 悠吾はリストを確認し、急いで、だが慌てずそこから生成するアイテムを選択した。


『悠吾、方法があったってどういうこと?』


 小梅が多脚戦車パウークの動向に目を配りながら小隊会話パーティチャットで静かに言った。


『待ってください、直ぐに説明します』


 まずは必要なアイテムを作らせて下さい。

 そう言って悠吾はまず一つ目のアイテムをタップした。


 一つ目は「フラッシュパン」という非殺傷型の投擲武器だ。爆発時に強烈な破裂音と閃光を放ち、周囲の人間に一時的な盲目状態と難聴を引き起こさせる「スタングレネード」や「閃光発音筒」とも呼ばれるものだ。

 生産するアイテムを選択し、続けて素材を選択する。

 僕の記憶が正しければ、さっきのユニオンプレイヤーが残したアイテムの中に素材があったはず。

 そして悠吾の記憶通り、表示された所持アイテムリストの中から、文字が明るくなっている素材を2つ選択した。続けて表示された「生成しますか」という質問に対しても即「はい」をタップする。


『フラッシュパンを1つ生成しました。アイテムポーチに転送します』


 トレースギアが生成完了のアナウンスを告げる。アイテム生成によって経験値が入ったのか、「レベルアップしました!」の文字がトレースギアに表示されたが、無視して悠吾は続けてもう一つのアイテム生成に移る。

 次のアイテムが重要なカギだ。


『お待たせしました小梅さん、作戦を説明します』


 リストに表示されたもう一つの目的アイテムが生成出来ることを確認して、悠吾が呟いた。


『これから行う行動の目的は、あくまであのレイドボス達を倒すことではなく、逃げる事です。それをまず覚えておいて下さい』


 小梅さんは喧嘩っ早いから、特に。

 その言葉は口にださず、心の中で囁いたが、流石に悠吾が言いたいことが判ったようで、小梅はすこしむっとしたものの大人しく頷いた。


『あの多脚戦車パウークだけだったらどうにでもなったんですが、後から現れた地人じびとが居る以上、隠れてこの場所を抜ける事は難しいです』

『……それはあたしも同意見よ』


 流石に戦闘経験豊富な小梅さんだ。そこを説明する必要が無いのはありがたいです。

 少し笑みを浮かべ、悠吾が続ける。


『なので、地人じびとを排除する必要があります。ですが、僕達にその力はありません』

『……それは……うむむ……あ、あたしも同意見よっ!』


 あ、少しプライドが邪魔しましたね。

 だけど、ここで「生意気よ!」って言わないのは、この短期間で少しは変わったって事なのかな?


『なので、多脚戦車パウーク地人じびとを誤射してもらいます』

『……それはよくわかんない』


 どういう事? と小梅が首を傾げる。

 

『まず最初にこのアイテム、フラッシュパンを使い地人じびとの足を止めます』


 そう言って悠吾はトレースギアからアイテムポーチを開き、そこに追加されていたフラッシュパンをタップした。

 いつものキラキラと光る光の粒が収縮し、小さな円筒形のアイテムを形成する。


『それで?』

『続けて使うのは、このアイテムです』


 悠吾が今度は、生成リストから1つのアイテムをタップし、生成ボタンを押した。

 

『ECMグレネードを生成しました。アイテムポーチに転送します』

『ECM……グレネード?』


 悠吾のトレースギアから発せられたアイテム名に小梅が再度首を傾げた。

 聞いたことが無いアイテム名。そんなアイテムあったっけ?


『僕もこんなものがあるなんて知らなかったんですが、現実には存在しない手榴弾です』

『ECMってどっかで聞いたことがあるわね』

『ECMは、簡単にいえばノイズ・ジャミングによるカバー妨害の事です』

『……ぜんっぜん簡単じゃない』


 あんたわざと言ってるでしょ? と眼を細める小梅にあわてて悠吾が続ける。

 

『え、えっと、電波を妨害して電波障害を起こす事です』

『……ノイズみたいなもん?』

『そのようなものです』


 流石飲み込みが早い、と愛の手を打ちながら悠吾がこくこくと頷いた。


 機械に対して有効な攻撃方法は3つ有る。

 1つは物理的な攻撃。先ほどからプレイヤー達が行っていた「対戦車兵器」で装甲を破壊し、装甲の中に居る操縦士やパーツを破壊する方法だ。

 そして2つ目は、電磁波によって装甲に保護された内部の電子機器をショートさせ破壊する方法。電磁パルスやEMPという名称で、非殺傷・非破壊兵器として米国を中心に開発が進められている。高高度核爆発によって強力な電磁パルスを発生させる事ができるらしい。

 そして最後の3つ目がECMだ。これは人間で言えば「目」や「神経」に当たる部分を攻撃する方法で、一般的にはレーダー妨害や通信妨害、赤外線や熱探知によって自動追跡するミサイルに対して高い効果がある手段だ。

 多脚戦車パウークがRWS(遠隔操作式砲塔)を使っているのを見てピンと来た。遠隔操作しているんだったら、ECMが効果的かも。


『ECMの効果の1つに「誘惑セドューション」という効果があります。敵の目標を本当の目標から誘導して別のものに転換させるというものです』

『……! 成る程、それを使って標的を地人じびとに移すというわけね!』


 やっと理解できた、と言いたげに小梅の表情が明るくなった。


『そのとおりです。ですが、「誘惑セドューション」が起きる確証はありません』


 やったこと無いし。

 そう言う悠吾の言葉に、明るい表情から、一転して訝しげな表情に変わった小梅を無視し、悠吾が続ける。


『でも、遠隔操作式砲塔を使っている多脚戦車パウークが行動不能に陥り、地人じびと達が混乱する可能性は高いです』


 その隙に逃げる。

 どちらに転んでも隙はできる。


『発砲の必要はありません。投げたら逃げる。それだけです』


 悠吾の作戦が理解できた小梅はゆっくりと頷いた。 

 できうる最良の方法は考えた。あとは運を天に任せるだけ。

 そう思った悠吾は笑顔を浮かべ、小梅に頷き返すと、まずは右手に持ったフラッシュパンのピンを外し、多脚戦車パウーク達の方へと勢い良く投げた。

名前:悠吾ゆうご

メインクラス:機工士エンジニア

サブクラス:なし

称号:亡国者

LV:4(up!)

武器:Magpul PDR、M9ベレッタ、ジャガーノート(用途不明)、フラッシュパン、ECMグレネード

パッシブスキル:

生成能力Lv1 / 兵器生成時に能力が+5%アップ(エンジニアがメインクラス時のみ発動)

アクティブスキル:

兵器生成Lv1 / 素人クラスの兵器が生成可能

兵器修理Lv1 / 素人クラスの兵器の修理が可能

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