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天狗の仕業じゃ!  作者: ねこぢた
序章:彼女が来た理由
3/15

これって夢だよな?

 これまでに起こった一連の物事を、簡潔に整理していこうと思う。


 俺は公園近くの道路にうずくまっていたお年寄りを助けた。⇒その

お年寄りから「お礼をする」と言われて一週間後、俺の身の回りで

おかしな事が立て続けに起こった。⇒もう一度、お年寄りを助けた場所へ

向かった俺の前に、「天狗の末裔」を自称する少女・鈴音が現れ

「実はあのお年寄りの正体は、天狗の頭領――つまり大ボスみたいなもん――」

だったと告げる。⇒頭領さんは俺をえらく気に入ってしまったようで

俺を満足させない限り彼女は戻ることが出来ないから「暫く俺の家に

厄介になる」などと訳の分からない結論づけをした。⇒俺失神。今ここ。



「……う、ううん……」


目を覚ますと、俺は何故か自分の部屋のベッドの上にいた。しかも寝間着姿で。

辺りはすっかり暗くなっていて、カーテンの隙間から差し込む月明かりが、幽かに

部屋を照らしていた。


(……ん、待てよ?ってことは、俺を家まで運んできた人がいて、俺は

いつの間にか着替えさせられたってことに……?)


 虚ろな記憶の中で、状況を整理しようとするがうまく纏まらない。

そりゃそうだ。あんな事を言われた後なんだから混乱して当然――


「はっ!そういやあの子は!?」


俺は直ぐさま起き上がり、辺りの様子を確認した。

 何の変哲もない、いつも通りの自分の部屋……。

件の「天狗少女」の影は、どこにも見当たらなかった。


(ふぅ、良かった。きっと頭領さんに事情説明に行ってくれたんだな。

けど、俺をここまで運んでくれたんなら、お礼くらいは言っておきたかったなあ)


 自己完結するや、俺はベッドを下り階下へ向かう。

しかし、問題はここからだった。

階段を下りていく最中、やけに賑やかな話し声が聞こえると思った。

おまけに、何やら良い匂いまで漂ってくる。


(……親戚が来る予定なんて、今日あったっけ?)


 いや、絶対にない。うちの親戚は、何の連絡も寄こさず上がり込んでくる

某フーテンの人のような不躾な真似はしない。


……じゃあ、一体下で何が起こってるんだ?

おかしい、なんかおかしいぞ!?



 俺は、ゆっくりとリビングの扉を開き、中を覗いてみた。すると――


「いやあ、鈴音ちゃん料理上手だねぇ!特にこの味噌汁、なんだか分からないけど

凄く美味しいよ!」

「ふふっ、それには我が一族秘伝の隠し味がしてありますので♪」

「お料理が上手で、それに美人……羨ましいわねえ」

「いえいえ、奥様の卵焼きも絶品でした!どうやって作るのか

後でご教授願えませんか?」

「あらぁ、お上手なんだから!

私なんかでよければ、いつでも教えてあげるわよぉ!」


……嫌な予感は的中した。

 どうして!俺の両親と!あの子が!食卓囲んで和気藹々としてるんだ

コンチクショー!!

堪りかねた俺は、その場に飛び入った。


「親父、おふくろ!その子が誰だか分かってんのか!?

あと君!なんで俺ん家に上がり込んでるの!?説明して!」

「あら晃儀、気がついたのね!丁度良かった!」

「ほら、お前も一口食べてみなさい!とっても美味いから!」

「え、まじで?そんじゃあいただきま――じゃねえよ!!」


危ない危ない、あと少しで両親のペースに乗せられるところだった。

その様子を向かいで見ている鈴音は、何故か困惑した様子を見せている。


「あ、あの……晃儀様?」

「おいおい、どうしたんだ晃儀?鈴音ちゃんが吃驚してるじゃないか」

「きっとまだ混乱してるのよ、あなた。ほら、お水でも飲んで落ち着きなさい」


変なのはあんたらの方だ、と思いつつも、母から差し出された水を一気に

飲み干して、俺はテーブルの椅子に腰かけた。

 たしかに、さっきよりは落ち着いた気がするが……この状況の説明は

早急にして欲しい。主に何故こんなに打ち解けあっているのかを。


「で、俺が気を失ってる間に何があったわけ?」

「あれ、晃儀は知ってるんじゃないのか?なあママ?」

「そうねえ……どこから話せばいいかしら。

いつも晃儀が帰って来る時間になかなか戻ってこないものだから、私

ここで待っていたのよ。そしたら、急に電話がかかってきて」

「電話?」

「ええ。電話に出たら、おじいさんの声がしてね……」



――母の回想――


「はい、もしもし」

『お忙しい所申し訳ない。秋葉様のお宅ですかな?』

「ええ、私は秋葉ですが……」

『そちらにアキヨシ殿はおりますかね?』

「あら、息子に何かご用ですか?実は、まだ戻って来ていないんです」

『ふうむ、左様ですか。では、お手数ですが伝言を預かって頂けますかな?』

「ええ、構いませんが……」

『では「うちの孫が暫しそちらで世話になる」と、アキヨシ殿へ

伝えておいて下され』

「お孫さんが……?はい、承りました。

あの、ところでどちら様でしょう?」

『おお、そういえば申し上げておりませんでしたな!失敬失敬!

儂は「鞍馬」という者です。どうかお見知り置きを』

「鞍馬さんですね?分かりました。息子が帰り次第、伝えておきますね」

『宜しくお頼み申します。それでは失礼をば』

「はい、失礼致します」



「最初はいたずら電話かと思っていたんだけど、その電話があって

数分後だったかしら、彼女――鈴音ちゃんが晃儀を担いで来たもの

だから、最初は驚いたわ」


そりゃあ驚くだろ、普通。か弱い少女が男担いでくるなんて。

というか、頭領さんそんな根回しまでしてたのか!?

何より天狗が電話使えるって事が驚きだよ、こっちは!


「それで、晃儀をベッドに寝かせた後お父さんが帰って来たから

私、電話でのことを話したのよ」

「親父、変だとは思わなかったの?」

「いやあ、なんていうか……ママに言われた時は流石に悩んださ。

見ず知らずの家のお孫さんを預かるなんて、信じられない話だろう?

けど、鈴音ちゃんみたいな可愛い子を路頭に迷わせたら、可哀想だなと

思ってね……」

「私からも、晃儀様のご両親に申し開き致しました!

そうしたら、お二人とも快く受け入れて下さって……感謝の言葉もございません」

「そりゃあ、三つ指立てて「不束者ですが、一身上の都合でお世話になります」

なんて言われたら……なあ?」

「そうよねえ。放っておけないわよねえ?」


若干困った顔をしながらも、顔を見合わせる両親。

ぬあぁー!このお人良し夫婦!後でどうなっても知らないからな!


「それで、鈴音ちゃんには晃儀の隣りの部屋を使ってもらう事にしたから」

「ふーん、そう……ってえええ!?」

「何そんなに驚いてるんだ?一緒の部屋で暮らせとは言ってないぞ?」

「い、いや、俺も色々と準備が……」

「大丈夫です!私、晃儀様のすべてを受け入れられるよう頑張ります!」

「頑張る方向性を間違えてるよ!俺の部屋入る気満々だろ!?」

「あらやだ、晃儀ったら何考えてるのかしら?」

「ははは!お父さんにもそういう時期があったなあ、青春だなあ!」


両親に茶化されながら、早くしないと冷めてしまうとの理由で、俺も

食卓に加わった。

鈴音の作ったという味噌汁は……確かに美味しかった。



 食事が終わり、暫くしてから風呂へ向かう俺。

今日は本当に疲れたなあ、と服を脱ぎ、いの一番に風呂へ浸かろうと

体にシャワーでお湯をかけ、熱さに慣らしている最中だった。


「晃儀様、お湯加減いかがですか?」

「うん、丁度良い感じ……えっ、鈴音!?」

「では、お背中お流し致しますね♪」

「ちょ、え……!?」


言ってる言葉の意味が分かっているのかは知らないが、鈴音は

俺の背中を流そうと風呂に入って来るようだ。

 いやいや、それは駄目でしょ!仮にも今日会ったばかりの

二人が、一緒に風呂なんて……。


「ちょっ、ちょっと待って!」

「あら?私はもう準備が出来ておりますのに……」

「な、なんで入ってこようとするの!?それも頭領さんから

言われたこと!?」

「はい!なんでも「殿方はこれをすれば大概満足してくれるぞ」

とのお話で」


な、何吹き込んでんだあのお年寄りは!そんなことされたら

俺の方がもたなくなる!主に理性的に!


「今すぐ忘れて!俺は一人でのんびりと入っていたいの!」

「で、ですが……私は晃儀様にご奉仕しなければならないので」

「入ってこられた方が余計迷惑だから!大丈夫だから!」

「そ、そうですか?残念です……」


そう言って、ガラス戸越しに見えた鈴音は、服を着直しつつ

風呂場を後にした。


(……危なかった。あそこで言われるがままになっていたら、きっと……)


俺はいかがわしい妄想を思い浮かべつつ、体を洗い浴槽へ入った。

ああもう!毎晩あんなことされたらいつか根負けしそうだよ!



 風呂での一件には流石に肝を冷やしたが、その後は何事もなく

就寝できた。

けれど、まさかこんな事態になるなんて、あの時は欠片も

思っていなかった。


(これって……夢、だよな?)


 俺は戸惑いつつも目を閉じた。

明日、この夢が醒めてくれる事を願いつつ。


【今日の教訓:長いものには巻かれろ】

なんというやっつけ具合。自分の実力不足を嘆くばかりです。

この調子で10万字、いけるんだろうか……;

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