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天狗の仕業じゃ!  作者: ねこぢた
第2章:妖怪大集合!
12/15

気になる先輩(前篇)

ここから第二章の幕開けです。投稿に時間がかかってしまいましたが、興味のある方は是非お読み下さい。

 突然だが、日本各地には数えきれないほどの「妖怪」にまつわる伝承が受け継がれている。

俺の住むここ香浦(かうら)市にも、幾つかの伝承が今でも残っている。詳しく聞いたことはないが、その中には鈴音たちのような天狗を扱ったものも存在するようで、昔の人達もこんな風に妖怪と触れ合っていたのかもと思うと、なんだか興味が沸く。そんな五月初めのある日のこと。

 俺がいつものように、爽太ととりとめのない話をしていると、突然クラスの女子からお呼びがかかった。

何事かと思い後をついてゆくと、廊下で俺を待っているらしき影が見える。


(まさか、俺が誰かから恨みを買われるってことは無いだろうし、あるとすれば……もしや、告白!?)


なんて半ば淡い期待を抱きつつ廊下へ出た途端、その影はいきなり声を上げた。


「きゃー!あなたが秋葉晃儀くん?想像してたよりいい顔してるわぁ!んふふ♪」

「か、会長!抑えて下さい!」

「我々がここに来た意味を今一度、思い出して下さい!」


そこにいたのは、印象的な淡い緑色の目をきらきらと輝かせた金髪の女子生徒と、それを制している眼鏡の男子とおさげ姿の女子。制服を見る限りでは、金髪の女子は三年生の制服を着ている。


「あ、あのー……俺になにかご用で?」

「そうなのそうなの!……っと、こほん」


改まった態度で、上級生の女子生徒は話を続ける。


「晃儀くん!君、不思議なことに興味はおありかしら?」

「え、特に興味ありませ」

「私達「オカルト研究会」では、この地域にまつわる不思議なことを調査し、研究・解明を行っているの!私は会長の指原くぐり、よろしくね!」


くぐりと名乗った上級生は、俺の手を握り顔を近づけウィンクする。

 なるほど、何かと思ったら部活の勧誘か。俺の名前をどこで知ったのか気にはなるが、ここは適当にあしらっておこう。


「あの、俺そういうの不向きなんで、他をあたって下さい」

「えーっ?どうして?私達は晃儀くんに用があって来たっていうのに~!」

「いや、本当に間に合ってるというか、なんというか……とにかく、勧誘はお断りしてますんで」


そう言うと、三人組は一旦離れてぼそぼそと会話を始めた。


「どうします会長?この……彼が……」

「いや、絶対私が……任せてちょうだい」

「けれど、それはリスクが……慎重に……」


俺がその様子を静観していると、話を終えたのかくぐり先輩がまた近づいてきた。


「晃儀くーん!そんな意地張らないでさぁ、見学に来るだけでいいから!」

「丁重にお断りします」

「今ならー、この「UFOが呼べるペンライト」もあげちゃう!だ・か・ら、ね?」

「いや、それ絶対嘘でしょ?」

「う~~んつれないなぁ。じゃあ……」


瞬間、くぐり先輩の表情に変化が現れたかと思うと、彼女は俺の耳元で囁いた。


「晃儀くぅん、君と一緒にいる天狗のコの話なんだけどぉ」

「!?」

「バラされたくなかったら、言うコト聞いてくれるかなぁ?」


な、なんで鈴音のことを知っているんだ?この人、一体何者なんだよ!?

不安に襲われた俺は、ただ後ずさるしかなかった。


「んふふ、それじゃあ放課後、二階の研究会本部まで足を運んでねー♪待ってるからー!」


そう言うと、くぐり先輩達はその場を立ち去った。

 その様子を、教室の中から見ていたであろう鈴音が、俺に近づいてくる。


「あの、晃儀様」

「な、なあ、鈴音……俺たちの事、誰にも話してないよな?」

「えっ、まさか今お話ししていた方が?」

「ああ。俺達の関係を知っている風な口振りだった。これは何かあるぞ」


俺は鈴音に、放課後の件を話して一人で行くと告げたが、彼女は猛反対した。

当たり前だ。自分達の素性を知っているかもしれない相手と、真人間の俺が対峙する事になるのだから。


「いけません晃儀様!せめて私と一緒に……」

「あの人達は、俺ひとりで来ることを望んでいるらしいんだ。それに、もしあの言葉が嘘でないとしたら、鈴音を連れて行くと余計に危険なんじゃないかって」

「そ、それならせめて、私の忠告だけでもお聞き下さい!」

「ああ、分かったよ」

「あの方達がいらっしゃった時、(かす)かに同類の気配を察しました。もしやとは思いますが、あの中に私とは別の妖怪がいたのやもしれません。くれぐれもご注意を」


俺は小さく頷いて、彼女の忠告を聞き入れた。



 放課後、人気がまばらになった校舎に残った俺は、ゆっくりと二階への階段を上っていた。

念のために、鈴音を下駄箱のある場所で待機させておいた。準備は万全の筈だ。

 二階へ来た俺を、嫌な予感がよぎる。この階全体が、しんと静まりかえっている。

廊下を歩いていくと、急に窓越しに雨が降り始めた。空は晴れているのに、天気雨か?

そのまま先へ進むと、突き当りの手前の教室に「オカルト研究会本部」と書かれた紙が貼ってあった。


(ここに、あの先輩が……)


俺は、意を決して扉を開ける。その向こうには、見覚えのある影が、椅子に腰かけて待っていた。


「うわぁ~、嬉しいなあ!ほんとに一人で来てくれるなんて♪」


やはり、そこにいたのはくぐり先輩その人のようだ。しかし、雰囲気が朝とはまるで違う。

加えて、薄暗くてはっきりとは見えないが、彼女の頭には見覚えのある「獣の耳」が二つ、ぴんと立っているではないか。


「先輩……あなた、どうして俺と鈴音のことを知っていたんです?」

「あーら、お言葉だけど『その界隈』ではもう噂になってるわよ?「鴉天狗を従えている人間がいる」って」

「じゃあ、やっぱり……!」

「んふふ、そういうこと♪私には「化け狐」の一族の血が流れているの。という訳でぇ、晃儀君には鈴音(あのこ)を連れ出す口実になってもらいたいんだよねぇ」

「ふ、ふざけるな!そうと言われて素直に従う奴がいるかよ!」


素早く(きびす)を返すと、俺は扉を開けようとする。が、力一杯開けようとしてもびくともしない。


「んふふ♪ここは一時的に張り巡らせた「結界」の中、人間一人閉じ込めるのなんてわけ無いわぁ♪」

「くっ、くそっ……鈴音……!」


そうこうしている内に、くぐり先輩が俺の背後へゆっくりと近づいてくる。そして、何度目かに振り返った俺の額に指先を当てた。


「大丈夫、ちょっとだけ晃儀君を「私のモノにするだけ」だから♪」


次の瞬間、俺の意識が電源を落としたテレビのように、ぷつりと途切れた――。



ご一読頂き、ありがとうございます。

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