始まりの森
目の前に広がっていたのは瞳の色さえ変えてしまうほどの「赤」だった。
私、<<アリス>>の家は火事になっていたのだ。
「あぁ・・そんな・・・ディアラ・・!そうだわ!きっとディアラなら・・!」
アリスはそう呟くと彼女<<ディアラ>>がいる2階へと駆け出していた。
「ディアラ!!!!!大変なの!!!おばあちゃんが・・・おばあちゃんが!!!!!」
しかし そんな藁にもすがるような思いのアリスが見たものは
髪は乱れ、顔は汗と涙でぐちゃぐちゃになった自分の姿を映すだけの鏡だった。
「嘘・・・どうして・・?ディ、ディアラ!?ねぇ!!出てきてよ!ねぇ!」
一人顔に涙を浮かべて呼びかけるアリスの姿が一体どのように映ったかは
言うまでも無いことだが彼女はディアラと呼ばれる友人の突然の消失に困惑していた。
「そんな・・どうしたら・・どうしたらいいのよ!!!!誰か!!!お願い助けてよ!!」
そこにはいつもの冷淡で落ち着きのあるアリスはどこにもいなかった。
恐怖と不安に支配され、いつもなら口だけの祈りを捧げる神にさえ縋る様だった。
だからだろうか?
そうした精神不安だったからこそ、彼女はいつもの視点が変わりあのような行動に出たのだろうか。それがすべての物語の始まり。
アリスという少女の運命を大きく変えてしまう物語の引き金になったのだ。
アリスは咄嗟に二階にまで立ち上ってくる煙に気がつくと学校に向かうための鞄と読みかけの本を一冊手に取り、そこで少しだけあいているクローゼットに気がついた。
「おかしいわね・・ちゃんと閉めておいたはずなのに・・・。きゃ!?」
振り返ると部屋のドアまでもが炎の柱と化していて、アリスは反射的にクローゼットの中へ駆け込んだ。しかし
「ちょっと!?何これ・・足場が・・・きゃぁ!!」
クローゼットに足場はなく明らかに家よりも深い穴となりアリスを運んでいった。
「あたし・・本当の「アリス」になってしまうんじゃないのかしら・・・」
アリスは自分が思っていたよりも冷静な事に初めは驚きはしたものの、不可思議な怪奇現象の連続で頭が混乱してしまうよりかはましだと思い、そしてアリスは考えるのをやめた・・・。
落ちている最中、アリスの視界にはあんまりにも何も映らないものなので思い切って目を閉じてみることにした。
するとその直後、アリスは自分の体が何かにぶつかった衝撃を受け、目を開いた。
目を開いた先は木と草で覆われた「森」。
けれども可笑しいのは、その草木が明らかに自分の体より大きく、アリスが駆け込み落ちて行ったクローゼットはいつの間にか木の幹と化し、天津さえ天井を覗いてみてもそこには落ちてきたはずの穴はなく、頑丈な木の木目で覆われていた。
「いよいよ 私の頭もおかしくなってきたみたいね・・・これは・・そう!夢よ!そうでなきゃ説明がつかないもの!そうと解れば早く目を覚まさなくっちゃ」
そう呟くとアリスは丁度木の葉に溜まっていた露でできた水たまりを見つけると手に水を汲み顔を濡らしました。けれども目を開けても風景は変わらず、頬を抓ってみたり、木に頭を打ち付け、痛覚による目覚めを試みたものの効果はなかった。
「何をしているのかしら私は・・・なんでこんな目に・・。うぅ・・おばあちゃん・・ディアラ・・・」
「おんやぁ~?? 見慣れない人が・・ヒック!///いるじゃぁないかぁ そうしたんだい??君、一人なのかい~?ヒック!///」
アリスの前に現れた人物はアリスの頭5つ分は大きな長身の酒飲み男だった。