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武器を取れ、基地を見つけろ

 すぐにそれは効果を現した。

「ほう。」

 僕は思わず感嘆の声を上げた。

 何分、冒険者かどうかの違いがよく分かる。

 冒険者は濃い魔力を纏っているのが見え、普通の人は普通だからだ。

 なるほど、これが『霊視の眼』の性能か。

「そうだな……。」

 まずやるべきことは居住地の設定と、武器の調達か。

 居住地……はどこぞの家を取るとするか、と考えた。

 というのも宿は冒険者が多いだろうし、金もかかるからだ。

 幸い、人口が多いせいか、地球の東京のように人の関係が希薄で、しかも警察組織もいない様子がうかがえる。

 何か術でも使えて、他の人から何か聞き出せれば良いのだが……。

 と、僕の視線はある施設でとまった。

 公園、だ。

「そうだ。」

 僕はただ笑むと、視線を彷徨わせて出店を探した。


「なぁ、君達。」

 僕は公園の中に入ると、中で遊んでいた子供達に声を掛けた。

「ん?」

 と、少年、少女達はこちらを向いて小首を傾げた。

「初めてこの村に来たんだけど、ここってどんな村かなー?」

「どんな村って―――?」「普通の村、かな?」

「ってことは、お隣さんとも仲が良いの?」

「うーん……そうでもない、かな?」「仲がいい人は仲が良いけど……。」

 少年は戸惑いながらも答えを口にする。

 そんな中、一人の少女が何かを思い出したかのようにクスリと笑んだ。

「そう言えば、町の外れの魔術使いのお姉さんとはあんまり仲が良くはないよねー。」

「あー、そーそー。」「大人の人も会おうとしないし。」「綺麗だけど気持ち悪いよねー。」

 綺麗だけど気持ち悪いって矛盾しているような……。

「へぇー、その人ってどこに住んでいるの?」

「村の外れ。」「えっとね……。」

 口々に少年らはその家の場所を言う。

 なるほど、あの辺りか。

「ん、ありがと。これ御礼ね。」

 僕はそう言いながら先程、出店で買った安い駄菓子を子供らに与えていく。

「わー、ありがとー!」「ねぇねぇ、お兄さんって冒険者?」

 子供らが礼を口々に言う中、一人の少女は問いかけた。

「え?何でそう思うのかい?」

「えー、だって子供達に情報を聞いたりするのって余所者の冒険者ばっかりじゃん。間違っても悪魔や魔王は聞きに来ないよー。」


 残念、自分、魔王候補です。


「ま、そんな所かな。ああ、そうだ。僕のことは他の人には内緒ね。任務の途中だから。」

 僕は冒険者の振りをして言った。

「え?何の任務?」

「うん?魔王討伐。」

 ―――うん、嘘はついていない。

「へぇー、すごいね!お父さんから聞いたけど、冒険者達が魔王の塔から帰ってきたことってないんだって!お兄さんも気をつけてね!」

「うん、ありがと。だから、みんなは言わないでね。言わないでくれたら、塔から戻ってきた時にたくさん魔王の財宝をあげるよ。でも、言った子にはあげないからね。」

 僕は絶対の言葉を交えながらウィンクすると、子供達はわくわくしたような表情でコクンと頷いた。


「で、ここか。」

 子供達から聞き出した情報通り、その住居に向かった。

 ―――確かに気持ち悪いな。陰険で薄暗い感じだ。

 しかも霊視した所、中から凄まじく圧倒的なオーラが伝わってくる。中の様子が手に取るように分かるわけではないが、やばい魔術を扱っている雰囲気がある。

 さて、潜入したい所だが―――。

 道具がねえな。ちっ、仕入れておけば良かった。

 僕は後悔しながらどうしようかと考えていると―――。

 コツ、コツ、カツ、カツ。

 足音が響いてきた。二人分だ。

 僕は咄嗟に近くにあったゴミ箱を踏み台に飛び上がり、排水溝などのパイプを手がかり足がかりにして目標の家の向かいにあった二階建ての住居の屋上に上がった。

 てか、すげえな、この肉体。

 地球にいた頃の僕では到底、出来なかった離れ業だ。

 僕はそこから下を伺うと、冒険者らしき風貌の奴が二人、現れた。

 杖を所持した男と、刀を持った女。

 なるほど、あの刀は丁度良いか。杖もうまく使えそうだ。

 んじゃ、ちょいと奪いますかね。

 僕は即断すると、男が真下に来るのを計らってスッと屋上から降りた。しかし、この肉体は怖いな。屋上から飛び降りたのに音なく慎重に、ダメージもほぼゼロで降りられるのだから。

 ―――まぁ、半ば予想出来たけど。

 すると、丁度良く、男の真後ろに着地する事が出来た。

 そして相手に振り返る隙を与えず、彼の首を掴み、ぐきっ。

 派手にへし折った。

 それと同時に、手から杖をもぎ取る。

「え?何?」

 と、その瞬間に女は後ろを振り返った。僕は間髪入れず、その杖をフルスイングで女の腹に叩き込んだ。

「ぐふっ―――!?」

 腹に直撃を受けて彼女はばったりとその場に倒れた。

「よし……。」

 僕は殺した男と気絶させた女を物陰に隠した。

 しかし、目的最優先でやったが、これは倫理的にアウトだな……。

 全く、いつも目的を定めると手段を選ばないクセ、どうにかしないと……。

 僕はそう思いながらも当初の目的、『住居に侵入、そして居住地を確保』するために、女の腰から刀を抜き取ると、目の前の家の戸の前に立った。


「さぁ、やってやるか!」


 罪悪感に浸るのはそれからだ。

 

ハヤブサです。


手荒れがひどすぎてキーボードを打つのがつらい……。

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