第二魔王への宣戦布告
僕らはワインを持って先程の部屋に戻ると、ルチアとカイは向かい合ったソファーに座って待っていた。
「遅かったわね。」
ルチアはそれだけ言うと、僕の手からワインを抜き取った。
「ま、それなりに悩んでね。」
僕はそう言いながらメロンにウィンクし、そしてルチアの隣に腰を下ろした。
「んー、確かに安っぽいけど良い酒を選んできたわねー。」
そう言いながら気付いていなさそうなルチアはぼそぼそと何か呟いてコルクを開けている最中、メロンは僕にウィンクされたせいか、仄かに赤い顔で、失礼します、と呟きカイの隣に腰を下ろした。
それを見ていたカイはチラリとこちらに視線をやってきた。
『やりましたね。』
まさに視線からそう言う声が見えた。
僕はコクンと頷いて見せると、ルチアがぐいっと脇からグラスを押しつけてきた。
「ほら、注げたわよ。」
「どうも。」
僕はそれを受け取ると、一口それを飲んだ。
ボルトー程ではないが、程良い味わいが舌を包み込む。
メロンもそれを一口飲むと……いきなりコクッと頭を垂れた。
「ちょっと荒っぽいけど、まぁ、仕方ないわねー。」
僕が戸惑う最中、ルチアはため息をつきながら視線をカイに向けた。
カイは頷くとメロンの身体を持ち上げて、少し離れた床に寝かせた。
そして僕らの元に戻ると、パチンッ、と音を立てて指を鳴らした。
すると、僕、ルチア、カイを包むかのように泡のような膜が発生した。丁度、僕らが座るソファーを囲む感じで。
「結界を張りました。お嬢様。」
「ご苦労。じゃあ、ここで少し話をさせて貰うわね。良い?義平。」
「あいよ。」
なるほど、まずメロンを睡眠薬か何かで眠らせ、その上で結界を張って外界から遮断。
完璧に盗聴されないようにしたのだ。
人の魔王ん家でそんなことして良いのか、と突っ込みたいところだがシリアスな雰囲気なので今は勘弁しておこう。
「とりあえず、義平、あんたはこの地方で生きていきなさい。当分は世話を見る予定だったけど、少々邪魔立てが入ってね。」
「邪魔立て?」
「宣戦布告でございます。義平様。」
「宣戦布告?」
「そ。厄介なことに第三魔王が攻めてきたのよ。『人が擁立した魔王を勝手に廃し、勝手に擁立するとは何ぞ』ってね。この案件は魔王会議で決定したことだけど、その会議を非合法だった事にしてあの魔王は攻めてきたのよ。確かに、会議は第一魔王、第二魔王しか出席していないけど、無茶苦茶よね。」
ルチアは苦笑しながら言った。
「しかも厄介なのが、あいつも地球から人を引っ張り込んで第五魔王を擁立したのよ。」
「は?第五魔王?そんなのいるの?」
「まぁ、あった時はあったけど、基本的には四人でこの魔界を統治していたわね。とりあえず、私は第二魔王の尊厳にかけてアメリアとヴィレンチェは守るわ。もし、このことが純一の耳に入ったら面倒なことになるでしょうけど―――。」
「その件については杞憂かと、お嬢様。」
カイは口を挟みながら僕を見てそう言った。
「―――?まぁ、カイが言うならそうなんでしょうけど。とりあえず、私は第三魔王の攻撃を凌ぐから、貴方は準備していなさい。何、二十年もあれば片づくわ。」
「あいよ。んじゃ、勝ったら祝儀でも開いて差し上げましょうよ。」
「どうも。じゃあ、カイ、行くわよ。」
「畏まりました。お嬢様。」
カイはペコリと頭を下げると、指を再び弾いた。
すると、たちまち結界は姿を消した。
そして、ルチアがカイの手を掴むと同時に、彼らの姿はフッと消えてしまった。
僕はメロンが目を覚ますのを待った。
そして、彼女が目を覚ますとその魔王の戦争について話し、その案件が純一に伝わらないよう頼んだ。
その後に僕は塔から出ると、村へと向かった。
まぁ、塔に泊まれればそれに越した事はないが、純一が何というか分からないし、何より、夢魔に襲われるリスクが高い。
今も濃霧の中を歩いているが、クスクス……と脇から笑い声が聞こえて不気味である。
十中八九、立ち止まったり振り返ったりしたらヤられるだろう。
「しかしまぁ、何か助けてくれる人がいてくれても良いんだが……。」
純一にはメロン(まぁ、今、メロンは自分を慕っているが)そしてルチアにはカイがいる。
そこら辺の夢魔でも捕まえて隷従させるのにはさほど時間がかからない自信があるが、どうも、色ボケしていて役に立ちそうにない。
「まぁ、まずは休む場所を決めないとな……。」
僕はそう呟きながら、宿を取ろうか家を奪おうか、と考えながら村の中に入ろうとする。
その時、頭上にぽとりと何かが落ちてきた。
鳩の落とし物……ではなさそうだ。僕は頭の上をまさぐって落ちてきた物を取った。
それには『義平様へ』と書かれている小箱であった。
箱を開けると、小瓶と巻物が入っている。
僕は巻物を取り上げると視線を通した。
『義平様へ。カイでございます。この度は突然、失礼致しました。ルチアお嬢様も非常に義平様のことを気に掛けていらっしゃいます。それ故、メロン様を籠絡したとはいえ、まだまだ心配も多い故、超貴重アイテムと呼ばれる『霊視の眼』という物を差し上げようと、お嬢様は決心しました。一緒に入っている小瓶がそれでございます。私めが説明するよりも飲んで実際に確かめて頂くのがよろしいかと。尚、このクスリは永久的に身に染みつきます。その方はご注意を。』
なるほど、これは第二魔王様の慈悲らしいな。
便利らしいし、永久的に身体にくっつくと言っても元々、これは僕の身体ではないので知った事ではない。便利であるなら使うべきだろう。
僕は無造作に小瓶の蓋をこじ開けると、中身をぐいっと飲むと村へ歩き出した。
ハヤブサです。
ふむ、ひぐらしを借りて観ていたらつい更新を忘れておりました。すみません。
しかし、ひぐらしはええなぁ……。