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二人の秘密
「…俺は……」
何を言うつもりだ?
頭で考えるより先に、身体が動いていた。
柚衣の口に当てていた手を頭に移し、髪に絡ませ、引き寄せる。
唇が触れたのはほんの一瞬。
「歩永実くん…?」
さっきより顔を赤くして柚衣が俺の名前を呼ぶ。
「…次の発作でお別れだ。意味、わかるよな?」
その言葉に、柚衣は驚いた顔を見せたあと、ゆっくりと頷いた。
「…歩永実くん」
「…なに?」
「ほなみ、くん…」
柚衣は、なにも言えずに俺の名前を繰り返す。
「…うん」
「…っ、はぁ、んっ…」
答えると、柚衣は俺の胸に顔を埋め、声を殺して泣き出した。
「…ごめんな」
俺は柚衣の頭を抱くことしかできなかった。
どうしてか、温かい気持ちで胸がいっぱいになる。
君を好きになれて、本当によかった……




