初恋のヒト
ICUに入ってから1週間、彼は行ってしまった。
学校があって最期には立ち会えなかったけれど、安らかな顔をしていた。
お葬式のあと、歩永実くんのお母さんに手紙を渡された。
彼からの、最初で最後の手紙だった。
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市川柚衣様
柚衣がこの手紙を読んでいる時、俺は幸せに眠っているんだろうな。
ずっと、俺の病気のこと聞かないでいてくれてありがとう。本当はすごく気にしていたんだろ?
この手紙を書きながら、お前と初めて会った時から、思い返してる。お前はまだ小学校にも上がってなくて、苦しくて泣いているのを見て、自分のことなんておいといて、守りたいって思った。
気づかない振りをしていただけで、きっと、俺はずっと柚衣のことが好きだったんだと思う。
まあ、そんな事言っても仕方なかったのも事実だけれど。
長々書いても仕方ないから、伝えたいことだけ書こうと思う。
今までありがとう。
お前が居たから、今まで頑張って来れたんだ。柚衣にかっこ悪い所見せたくなくて。
だから、ありがとう。
幸せになってください。
あと、病院に来たって俺はいないんだから、風邪ひいたりしないように気をつけろよ。
幸村歩永実
P.S
ICUでのことは忘れてくれ。
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彼らしい口調で書かれた手紙に、せっかく止まった涙が溢れてくる。
「歩永実くん。私、頑張るから…頑張って、幸せになるから」
手紙を抱き締めて誓う。
彼の言葉を胸に抱いて。
いつから、俺は君を好きだったんだろう。
そばにいないと落ち着かなくて、どうしているのか心配で…
君が話す俺の知らない男になぜか嫉妬して。
その気持ちが『好き』だと気づかなければよかったんだ。
そうしたら、こんなに苦しまずにすんだのだから…
でも、気づかなければ、この温かさも知らなかった。
儚くて、甘い。
この温かさを……
Fin...




