ああ、そっか。
翌日、夕方に柚衣がやってきた。今日も制服姿。学校帰りらしい。
「昨日は悪かったな。驚かしたし、遅くまで居てくれたんだろ」
「ううん…歩永実くん、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、気にするな」
「ほんとに…?」
目にうっすらと涙を浮かべ、柚衣が言う。
「…本当だよ、お前はお前の心配してろ」
一瞬、答えが遅れたのを柚衣は敏感に感じ取った。
「嘘っ!!…本当のこと、教えて?私だってもう子供じゃない」
「だから、本当だって。別にお前のこと子供扱いしてるわけじゃない」
ごまかすのが限界なのはわかっていたけれど、言ったところでどうにもならない。このまま、曖昧なまま、柚衣が何も知らないまま、いなくなりたかった。
「昨日、すごく勇気を出して歩永実くんのお見舞いに行ったの」
柚衣は顔を真っ赤にしてぼろぼろ泣きながら話し始めた。
「我慢できなくて電話して、出てくれなくて、メールも返ってこなくて。嫌われたんじゃないかって…」
「…別にそういうわけじゃ」「それで、直接聞いてみようと思った。もし、もしも迷惑じゃないって言ってくれたら、自分の気持ちをちゃんと言おうと思った」
俺の言葉を遮って、柚衣は話し続ける。
…柚衣の気持ち?それは…
「私、歩永実くんのこと…」「待て」
柚衣の口に手を当てて今度は俺が柚衣の言葉を遮った。
「わかったから、落ち着け」
なんとなく、きっと心のどこかで、柚衣の気持ちは気づいていた。…気付かないふりをして逃げていただけで。
どうして?どうして、俺は逃げる必要があった?…柚衣を傷つけないため?
違う。自分が傷つきたくなかった、こんな感情を持っていても俺にはどうにもできないから。
「……俺は…」
なんて答えるつもりだ?
頭で考えるより先に、身体が動いていた。




