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プロローグ
いつから、俺は君を好きだったんだろう。
そばにいないと落ち着かなくて、どうしているのか心配で…
君が話す俺の知らない男になぜか嫉妬して。
その気持ちが『好き』だと気づかなければよかったんだ。
そうしたら、こんなに苦しまずにすんだのだから…
「…さん、……らさん、…」
どこか遠くで声がする。うるさい。
目を開けようと思ったけれど、だるくて、眠くてなかなか思い通りにいかない。
「幸村さん!!…聞こえますか?…幸村さんっ!!」
やっと意識が鮮明になり、聴覚がまともに働く気になった時には、今の状況を思い出していた。
「…有田さん?」
「よかった、覚えてる?今から処置室だから、頑張ってね」
「…はい」
こうしてストレッチャーで運ばれるのにもここ1年で慣れてしまった。
せっかく一時的にでも帰宅許可が下りて2ヶ月ぶりに家に帰れたのに、数日でこうして病院に戻ってきてしまう。
幸村歩永実――17歳、高校に行けていれば学年は3年。
心臓病の存在がわかったのは小学2年生の春。突然の発作で倒れ、救急車で運ばれた。
それ以来、学校にはほとんど行っていない。




