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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

短編集

奴隷は最後に最愛を見つけた

作者: 氷桜 零
掲載日:2026/03/06


私の人生が変わったのは、5歳のとき。


ある日、私の暮らす村に盗賊がやってきた。

男たちは殺されて、女子どもは奴隷にするために。


女は盗賊の慰み者になった。

子どもは、その恐ろしい光景を見せられていた。

逆らう気など一切沸かせないために。


私も母が慰み者になる様子を、呆然と見つめることしかできなかった。

現実味がなく、ただ呆然としていた。

そのまま奴隷商に引き渡され、美しい姿と声を持つということで、愛玩奴隷に分類された。


1人目の主人は、主人としては良い人だった。

私を着飾らせ、歌を歌う人形として愛でられた。

肌に触れられることはあったが、人間に対してというより人形に対してのものだった。

その主人は借金が嵩んで、私を奴隷商に売った。


2人目の主人は、独占欲の強い人だった。

隠し部屋の檻に入れられ、四六時中着せ替えの人形にされた。

主人の指定した言葉か行動しか、してはいけなかった。

それ以外をすると、折檻をされた。

痛いのが嫌だったので、徹底して人形になった。

その主人は、殺人の罪で捕まってしまった。

奴隷の私は、再び奴隷商に売られた。


3人目の主人は、歌を聞くのが好きな人だった。

たくさんのお客様を招いたり、私を連れて行って歌を披露していた。

けれどこの主人も独占欲が強くて、私に声をかける人に嫉妬していた。

私が誘惑したのだと、誘惑する目はいらないのだと、目をくり抜かれた。

私は、その日から光を失った。

私の目には、包帯が常にまかれることになった。

その主人の狂気を恐れた主人の奥方が、私を奴隷商に売った。


4人目の主人は、加虐趣味のある人だった。

傷が残らないように、痛みが長引くように痛めつけるのが好きだった。

膝まであった髪は、痛めつけるのに邪魔だということで、肩上まで切られた。

そして痛めつけられながら、初めてを奪われた。

深く記憶に刻み込むように、わざと痛くして。

私の心は、この時なくなった。

痛めつけても痛がらなくなった私が不要になって、奴隷商に売られた。


5人目の主人が、今の主人だ。

愛玩奴隷兼性奴隷となった私を、女日照りである戦場に連れてきている。

戦場の熱を鎮めるために、毎夜行為を求められる。

心を失ってしまったので、もう何も思わない。

けれど、戦場の悲鳴が、耳の奥にずっと響いていた。


実際の悲鳴ではないことは、わかっている。

これは、戦場で散った魂の声。

今戦っている兵士たちの、心の叫び。


死にたくない。

帰りたい。

嫌だ。


ずっとずっと、耳の奥で鳴り止まない。


あぁ……うるさい……


前線がどんどん後退していき、主人側に混乱が広がっている。

兵士たちが敗走し、主人たちも敗走するみたい。

けれど私たち奴隷は、置いていかれた。

戦闘奴隷も、愛玩奴隷も、性奴隷も。

奴隷たちは、殿を任された。

だがそれはただの言い訳。

実際は、時間稼ぎのために死ねということ。


ここで終わるのかと思うと、あっけない人生だった。

幸せなど、何も感じない人生だった。


それなら、これが最後だというのなら、最後に全力で歌ってみよう。

私の命をかけて、この戦場全てに響くように。

この戦場で散っていった、哀れな魂に鎮魂歌を。


『〜〜〜♪〜〜♪〜〜〜〜〜♪〜♪』


私の歌声は天を貫き、光が降り注いだ。

暗い戦場に響く鎮魂歌と、その歌姫を照らす一筋の光。

背中がむずむずしたかと思えば、一対の大きな翼が広がった。

私は本能のままに翼を羽ばたかせ、天を舞いながら歌を届けた。


それを見た人々は、戦いの手を止めて、神の使いだと崇めた。

そしてその鎮魂歌に胸を打たれ、膝をついて涙を流した。


「あぁ……やっと会えた……俺の女神。」


たった1人、馬を駆って私に駆け寄る男がいた。


全力で歌い切った私は、力を失って落下した。

広がった青空を見ながら、こんな最後でもいいかと思った。

……が、私が地面にぶつかる前に、馬に乗った男が私を受け止めた。


「やっと、捕まえた。俺の女神。」


「だれ?」


「いつもお前の声に、慰められてきた。声が聞こえなくなって、必死に探したんだ。こんなところで見つかるなんて思っていなかったがな。俺の女神、どうか、俺と共にあってくれ。」


「……私には行くところがない。私の身体は汚い。」


「そんなの関係ないさ。俺のそばにいてくれ。」


「……わかった。なら、約束して。必要なくなったら、私を殺すって。」


もう、次で最後にしたい。

もう、疲れてしまったの。


「……それは…………わかった。約束する。」


「ありがとう。」


私は、数年ぶりの歪な微笑みを浮かべた。









数年後。

とある帝国の皇帝の隣には、いつも美しい天使が控えていた。

目元をレースで覆ったその姿は、彼女を余計に引き立てていた。

のちに、神に愛された皇帝として、歴史に刻まれた。






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