⑤ 計画の破綻
【⑤ヒロインVS悪役令嬢】
「これから宜しくお願いしますね」
私の目の前には最も接しては行けない人物。
この世界のヒロインと思われるサラーサ王女が立っていた。
何故、そう思うのか・・・
私には前世の記憶があり、こう言った世界はゲームや小説で知っていた。
所謂、異世界転生ってやつ。
残念ながら、この国の名前や自身の名前を聞いてもどの作品であったか解らなかった。
しかし、私の置かれている立場、私の顔立ちで私が悪役令嬢役であるのだろうと推理した。
だから計画した三か条。
私が断罪されないための三か条。
その中で最も大事と思われる第一条
『ヒロインと関わらない』
これが早くも崩されようとしていた。
始業式が終わり私達は教室へと移動し、教師の方から学園生活について説明を受けていた。
教室にはレオルド殿下はいたがサラーサ王女の姿は見られなかった。
サラーサ王女とは違う教室みたいで胸を撫で下ろした。
「―以上で説明終わります。本日はこれで終わりとなりますので明日から皆さん勉学に励まれましょう。
あっ、それから、フィリア・オメガさんはおりますか?」
「あっ、はい」
教師に呼ばれたので慌てて手をあげ返事をする。
何だろう・・・
このまま終わりではない事に先ほど撫で下ろした胸を引き締め直した。
「学園長が呼んでおられますので、この後学園長室に来られるように」
学園長室に!?
まだ私は問題を起こしていないはず。
(これからも起こす予定はないけど)
自身が何故呼び出されたのかが解らない。
理由が解らない呼び出しに不安と疑念が頭の中を駆け巡った。
「俺も一緒に行こうか?」
私に提案してきたのはレオルド殿下であった。
予想もしない提案に思わず「えっ!?」と、声を出して驚いてしまった。
「いや、どうせ帰るのが一緒だからな」
(あー、納得)
殿下に送迎して貰っている。
私を置いて帰ったら皆になんて言われるか。
教室で待っているより一緒に着いていった方が殿下にとっては都合がいい。
「ありがとうございます。ですが、どのような要件でどの程度掛かるか解りませんので・・・」
「構わん、待つ」
「それでしたら終わりましたら殿下の執務室にお伺いしますのでそちらでお待ち頂けますか?」
王家の者は突然の公務が舞い込む事があるため学園内に専用の執務室が設けられている。
殿下の執務室と学園長室は同じ棟だったはず。
執務室には殿下の従者がおりますし側近の令息達も待機しているはず。
これならば殿下をお待たせしても気兼ねする事はない。
殿下から了承得られたけど、どことなく殿下の肩が下がったように思えたのは気のせい?
途中まで殿下と一緒に迎い殿下と別れたあと一人で学園長室を尋ねた。
学園長室前には女性職員が一人立つ。
これは貴族令嬢が異性と二人きりで室内にいたと疑わせない学園側の配慮であった。
学園長室の扉を開けると、室内は学園長だけではなかった。
室内には私が最も近付きたくない人物とその従者がいた。
サラーサ王女がどうしてここに・・・
何か嫌な予感がする。
学園長室に入った私は歩みを進める度に心音が早まっていた。
「呼び出して申し訳ない。実はフィリアさんにはサラーサ王女の学友として3年間側で一緒に学んだ貰いたい」
聞き間違い?
いや、確かに学園長は言っていた。
ハッキリと。
私がサラーサ王女のお側に?
ヒロインの側に?
私には断罪を回避するための計画がある。
その計画の一つにヒロインには近付かないがある。
だから引き受け出来ません!
なんて言えたらどんなにいいか。
言える訳がない。
もし言おうものなら頭が可笑しいと思われ医務室に連れて行かれるか何かに取り憑かれていると思われるだけ。
あっ、でも、そうなればレオルド殿下と無事に婚約破棄出来るかも。
殿下と婚約破棄・・・
何故だろう、突然と胸が苦しくなった。
学園長室に入って心音が可笑しくなっていた所に衝撃な言葉を告げられて心臓がこの環境に悲鳴を上げているのかも。
「フィリアさんはレオルド殿下のお側にもいなくてはならないかと思いますがサラーサ王女が是非にフィリアさんにお願いしたいそうだ」
サラーサ王女が!?
何でヒロインの彼女が私に!?
もしかして・・・
サラーサ王女も前世の記憶が!?
別に可笑しくはない。
私以外に転生者がいたとしても。
でも、もしサラーサ王女が転生者だとしたら、私を側に置きたいと言う魂胆はなに?
もしかして私も転生者だとバレてしまった?
だけど、サラーサ王女とは全くと言っていいほど接していない。
その状態でバレる!?
でも、もしかしたら何かしらのイベントがあったのかも。
そして、そのイベントが起きなかった。
だから他に転生者がいると疑っている。
それならば私が疑われても仕方がない。
だとするならば、今回の申し出は悪意しか感じない。
でも・・・断れる訳がないでしょうが!
「これから宜しくお願い致します」
サラーサ王女と握手を交わす。
三年間、サラーサ王女と一緒にいる事が決まった。
学園長からは願いと言う頼まれごとであったが、断る事など出来ない頼まれごとであった。
これがシナリオの強制力。
シナリオの因果率。
早くも計画の変更を余儀なくさせられた。
第一条『ヒロインに近付かない』だけではない。
サラーサ王女と一緒となれば他の学友と友達となり、常に一緒にいて冤罪のアリバイをと考えていたがそれも難しくなってしまった。
あれだけ練り上げた計画がまさか1日目にして崩されるとは・・・
「何のようだったのだ?」
「サラーサ王女の学友として3年間共にいることとなりました。なるべくレオルド殿のご迷惑にならないよう気を付けたいと思います」
「彼女が・・・」
彼女!?
レオルド殿下はサラーサ王女の事を既に知っている?
可笑しな話じゃない。
他国とはいえ王女様だ、この国の王族と知り合いだったとしたも可笑しくない。
彼女と呼ぶからには面識があるだけではないのかも。
ヒロインとレオルド殿下は既に出会っていた。
私の知らない所で既に物語が始まっていた事に驚愕してしまった。
帰りの馬車の中での会話は思い出さない。
頭の中はサラーサ王女とレオルド殿下の事で脳内の全ての部屋が使われたいた。
断罪は回避出来ない・・・
そして、どんな断罪が私を待ち受けているのか解らない。
ハッキリと見えない未来。
こんな事なら下手に前世の記憶などなければ良かった。
そうすればこんなに悩む事もなかった。
レオルド殿下に見送られ邸に入る。
直ぐに部屋に向かわなくては。
この日の夜、私は徹夜する事となった。
破綻した計画を練り直そうとしたが、妙案が見つからない。
お肌の気にしている場合ではない。
しかし、肌を犠牲にしても答えは出てくる事はなかった。
何も答えが出ないまま夜中に意識が遠のいてしまった。
その夜、私は懐かしい夢をみた。
『卒業式のパーティーで断罪される?』
『そう、でもそうならないようにしっかりと準備しないと・・・』
『どうしたの?』
『でも上手くいくか解らなくて怖いの』
『よし、それなら僕が学園やパーティーで君を守るよ。味方がいると心強いでしょ』
懐かしき思いで。
名も知らない友達。
守ると誓ってくれた友達は突然姿を消してしまった。
今、彼は何をしているのだろうか。
彼がいてくれたなら少しは違っていたのかな・・・
名前の知らない親友。
約束が守れなかった親友。
なんで今頃こんな夢を見てしまったのだろうか・・・
夢の世界を思い返しながら鏡へと向かう。
衝撃!夜更かしの影響がお肌に・・・
私は決意することにした。
よし!今日は休もう。




