④ 学園の始まり
「どう言う事ですか殿下?」
この国は15歳になると貴族専門の学園に通うようになる。
学園生活は三年間。
ここがゲームか小説の世界ならばこの三年間が本当の舞台になるはず。
そして、卒業式後に行われるパーティーで断罪される。
それを避けるために私は三か条を自身に設けた。
第一条 ヒロインに近付かない&苛めない。
第二条 友達を作り極力一人行動をしない。
第三条 レオルド殿下が求めたら素直に応じる事。
妃教育で国内の貴族名(それだけではなく家族構成から事業まで全て覚えてしまった)を覚えたけどそれらしい令嬢はいなかった。
けど、必ずいるはず。
ヒロインが。
もしかしたら聖女として召喚されて来るのかも・・・
どんな形で現れようとも私がやる事は同じ。
ヒロインには近付かない。
苛めなどもってのほか。
忠告や忠言だって被害妄想で私のせいにされるかもしれない。
他の令嬢に何か言われても私は動かない。
殿下か側近の方に伝えるしかしない。
しかも苦言を申した実名付きで。
次に信頼出来る友達を作らなくては。
これが一番難しい。
公爵令嬢&レオルド殿下の婚約者と言う肩書きの私には近付こうとする令嬢が多いと思う。
でも、そのような人達はあくまでも肩書きありきの関係に過ぎない。
立場が危うくなれば平気で離れていくし、もしかしたら裏切られるかもしれない。
肩書きなど関係なく接してくれる友達を探さなければならない。
これが一番難しいが断罪回避するためには必須。
友達が入れば学園内では出来るだけ一緒に行動する事で冤罪回避が出来るかもしれない。
そして、殿下の変化を見逃さないようにしなければならない。
(既におかしな行動だらけだけど・・・)
ヒロインに心変わりし始めたなど変化が見られたならば、潔く秘密の契約により婚約を破棄して貰えるよう願い出る。
そうすれば、断罪されることはなく平和に暮らせて行けるはず。
婚約破棄された令嬢として曰くが付くかもしれないけど、今やフィリア商会にて一生遊んで暮らせるくらいの財産がある。
婚約破棄後はどこかの避暑地で一人で静かに過ごすのも悪くない。
私の断罪回避対策は完璧。
完璧であった。
しかし・・・
学生生活が始まる1週間前のレオルド殿下とのお茶会にてレオルド殿下から登下校を一緒にするため迎えに来られると言う。
既にレオルド殿下の様子が可笑しいのでは?
レオルド殿下の考えている事が解らない・・・
でも、断るなど持ってのほか。
私は笑顔という仮面を被りながらレオルド殿下に感謝の言葉を伝えた。
お茶会後の夜。
レオルド殿下の奇行のせいで眠れない。
夜更かしはお肌の天敵だと言うのに・・・
仕方がないのでスッキリするまで考える事にした。
(もしかして・・・これは・・・)
解ってしまった。
よくよく考えれば簡単な事だった。
これは、ヒロインが現れる前までは仲良くしていたがヒロインが現れた事で婚約者との関係が遠くなり、嫉妬した悪役令嬢がヒロインを苛めると言う王道中の王道パターン。
こんな簡単な事に気付かなかったなんて・・・
レオルド殿下が変わったのではなく、シナリオ補正に従って動いていただけの事。
答えは簡単だった。
でも、そうなると私にとっては由々しき問題。
シナリオ補正が働くと言う事は私が何もしなくてもシナリオ通り話が進むと言う事。
恐るべしシナリオ!
と言う事で悩みは早い段階で解決したので、お肌にダメージを負うことはなかった。
「聞いてメイ、レオルド殿下の事が解ったわ」
メイには私が前世の記憶がある事を知っている。
だから、私が昨日の夜に解いた見事な推理を説明してあげた。
しかし、メイの反応は私が期待したものとは違った。
私の話を聞くやため息を付くメイ。
「私はレオルド殿下の初対面の発言があるので許す事は出来ませんが、レオルド殿下も可哀想に思えて来ました。ですが、何があろうと私はお嬢様の味方でございますのでご安心下さい」
「そう?何だか良く解らないけどメイが味方でいてくれるなら嬉しいわ」
メイの反応が気になるけどレオルド殿下の奇行の謎も解けた。
学園生活始まる日、レオルド殿下は約束通り迎えに来てくれた。
「おはようございます殿下、本来のルートを外れてまで迎えに来て頂きありがとうございます」
「約束したからな仕方がない」
これを毎日行えば皆も愛し合う二人と思うに違いない。
そして、ヒロインが現れれば殿下が迎えに来てくれる事もなくなる。
あれ!?
何だが胸がチクッと苦しい・・・
もしかして・・・私・・・
病を患った悪役令嬢って事。
邸に帰ったらメイに相談して医者に見て貰わなくてわ。
「どうした?」
「いえ、少し緊張しているだけです」
「そうか・・・その胸のブローチ・・・」
「あっ、気付きました。殿下から貰った花の一つを加工してブローチにしてみたのですが似合います?」
「あ、ああ。悪くない」
良かった。
レオルド殿下がいいって言ったものって大概が大ヒットしてきた。
今度、商会の新ビジネスとして『想い出の花をブローチに』プロジェクトを立ち上げ販売する事にしましょ。
殿下に迎えに来て貰って良かった。
これで私の婚約破棄後の生活は更に安泰となるはず。
「着いたぞ」
レオルド殿下のエスコートで馬車から降りる。
私達の姿を見るや否や皆が私達に挨拶をする。
挨拶と言っても「おはようございます」と頭を下げる程度。
一人一人が自己紹介をしようものなら時間がかかってしまう。
貴族のマナーとして目上の者が尋ねない限り自己紹介をしては行けない事となっている。
(どうせ、ヒロインはそう言ったルールは無視して来るのでしょうね)
「レオルド殿下、おはようございます」
私達が来るのを待ち構えていた者が二人。
挨拶と共に一緒に行動する事となった。
宰相であるモートン侯爵のご令息であるサルジュ様と王宮騎士団団長であるハリス伯爵のご令息であるアレイン様だ。
レオルド殿下が学園に通う際に殿下の側近にと二人が決まった。
私の予想通りであった。
各貴族を深掘りして覚えた私は二人の事は既に調べあげていた。
こう言った話の流れで宰相令息と騎士団長令息が側近となる事は転生もののあるあるであった。
魔法省長の令息も入れば完璧なのだけど、この世界は魔法が存在しない世界。
折角、転生するなら魔法がある世界が良かったのだけど・・・
「新入生代表レオルド・バーンズ」
レオルド殿下の挨拶が始まる。
今の殿下は勉強をし続けたかいがあり、名実共に代表として相応しい人物となっていた。
あの、性格が悪い殿下を知っているのは今や私だけ。
殿下がまともに見えるよう育てたのは私の努力と言っても可笑しくない。
私は過去の事を思い出してしまい、思わず涙を流してしまった。
ハンカチで涙を染み込ませる私を見て皆が驚き私の事を見ている。
いけない、いけない。
レオルド殿下のスピーチ中に私が注目を集めてしまったら殿下が不機嫌になってしまう。
殿下のスピーチが終わったと同時に私は力一杯に拍手をした。
これで主役は殿下だと皆が気付くはず。
私の願い通り会場中が拍手で覆われる事になり、これで殿下の機嫌を損ねる事がないだろううと安堵した。
「続きまして隣国よりサラーサ王女が本国の学園に留学生として通う事になりました。つきましてはサラーサ王女殿下から一言頂きたいと思います」
彼女だ!
私の名推理がここでも働いた。
彼女がヒロインに間違いない。
サラーサ王女が壇上に上がる。
腰まである髪は黄金に煌めき、優しそうな瞳は全員の心を虜にするには十分であった。
凄い・・・まるで・・・漫画に出てくるような完璧なヒロイン。
ヒロインが王女パターンは珍しいけど、私の行動は変わらない。
ヒロインには・・・
サラーサ王女には近付かない!




