③ 傲慢王子の変化
「えっ!勉強!」
「はい、市井で王宮で働く者と出会したのですが、最近のレオルド殿下は勉学に励んでいるようで昔みたいに我が儘や命令などを言わなくてなってきたそうです」
今日は妃教育のお休みの日。
天気もよかったので、公爵邸の庭でグリーンティーで気分転換していたところ、侍女のメイからレオルド殿下について驚きの話を告げられた。
王妃教育へ通う日は必ずレオルド殿下と出会すので、相変わらずウロチョロされているのだと思っていたけど、まさか勉強しているとは・・・
そう言えば、王宮の侍女から勉強を教えて欲しい的な話をしていたのを思い出した。
レオルド殿下の身に何かあったのだろうか。
あっ、家庭教師の先生が好みのタイプの女性だったのかも。
レオルド殿下ならありえる。
まー理由が不純だったとしてもレオルド殿下がやる気を出したのは吉報。
タイプ的にレオルド殿下は無能王子に育ちそうだったので、悪役令嬢に公務を散々やらせての断罪になるのではないかと心配していたのだけど、違うパターンになりそうで安堵した。
散々、こき使われて婚約破棄ほど地獄のストーリーはないのだから。
ならば・・・私がやることは・・・
「先生、レオルド殿下も学ばれているとお伺い得ましたましたが、どの当たりを学ばれているか解りますか?」
翌日、妃教育の教師にレオルド殿下について聞いてみた。
私を教えて下さっている教師がレオルド殿下も教えているとは限らないが、殿下を教えている方から聞いているかもしれない。
もし、知らないようならメイに頼んで調べさせればいい。
「レオルド殿下ですか、レオルド殿下は○○○○○のところを学んでおります」
どうやら、教師は同じ方らしい。
これは吉報。
ならば・・・
「先生、お願いがあるのですが・・・」
折角、レオルド殿下がやる気になったのだから、継続させないと。
そうしないと、将来に公務地獄となってしまう。
そんな将来は回避しなくてはならない。
幸い、先生も話が解る方だったので私の願いを聞き入れて貰えた。
「フィリア、お前も飽きもせず良く通えるな?」
レオルド殿下がいつもの定位置・定刻で話し掛けてきた。
嫌み節も健在かと思ったけど何だかいつもよりやや弱く感じるのは私だけ?
どうやら顔会わせる度にレオルド殿下から嫌みを言われ続けた事で嫌みの耐性が出来てしまったみたい。
それはそうと、さてどういう返答をするげきか。
なるべくレオルド殿下のやる気を削がないようにしないと。
「ここだけの話ですが実はかなり飽きております。ですが楽しみもあります」
「楽しみ?」
「ええ。こうして殿下が話しかけて下さると殿下も頑張っているのだから私も頑張らないとと思うのです」
「そ、そうか・・・」
「ところで殿下の方も勉学を励まれているそうですが、今どの当たりを学ばれているのですか?」
「俺はまだ・・・子爵家のところで・・・」
「もう、そこまで進まれたのですか?」
「えっ!?」
「私など、やっと合格貰ったばかりで伯爵家で躓いております。こうしてはおられません、このままですと殿下に追い抜かれてしまいますね。私ももっと頑張らないと行けませんね」
「あ、ああ、そうか・・・そうだな・・・お前ももっと頑張らないと駄目だな」
「はい。こうしてはいられません、先生が待っておりますので失礼致します」
「ああ、俺もすぐ追い付くから待っていろよ!」
上手くいったわね。
これぞ『殿下凄いですね』作戦。
私が馬鹿真面目に妃教育を進めてしまえば折角やる気を出した王子がまたやる気を失ってしまう。
おそらく今度やる気を失えば次はもうない。
だから、私は教師にお願いをした。
~~回想~~
「先生、お願いがあるのですが、貴族名家を覚えるのを伯爵家に戻して貰えませんか?」
「どうしてですか?」
「最近、殿下が学ぶようになられたと知りましたが、私が進み過ぎると殿下が再び諦めてしまうかもしれません。私は不出来なら婚約破棄されておしまいですが、殿下は逃げる事が出来ませんので、出来るだけ殿下が継続出来るようにしていきたいのです」
「それではフィリアさんの印象が悪くなり損するだけですよ」
「いいのです。私の役目は殿下を導く事だと思っておりますから」
「・・・解りました。フィリアさんの仰られる事も一理あります。ですが、状況説明を詳細に陛下にお伝えはさせて頂きますが宜しいですか?」
「はい、協力して頂きありがとうございます」
「いいえ、それでは子爵家から覚えなおすのなら事業や他の貴族との関係性など深堀しながら進めて行きましょう」
~~~~~~~~~~~~
すでに私は国内の貴族家名全て覚えていた。
今は国外の貴族について学ぶところまで来ていた。
しかし、あまり進み過ぎるとレオルド殿下のプライドを傷つけてしまう。
だからの提案だったのだけど、先生に協力して貰えて助かった。
先生からは私が如何にレオルド殿下の事を思っているのかと見えている事でしょう。
しかし、私の本当の目的は誰にもいっていない。
本当の目的は私だけ公務をやらされるパターンから逃げるため。
その為にはレオルド殿下にはしっかり学んで貰わないと。
私の妃教育は脱線と言う名の深掘り教育へと変えて貰った。
これにより表向きは教育スピードはレオルド殿下と変わらないようになった。
互いに勉学に励む続けるとレオルド殿下は新たなる奇行へと進む。
「お嬢様、レオルド殿下より『婚約一周年記念』の花束が頂きました」
「えっ!?」
レオルド殿下から花束届いた。
あのレオルド殿下から・・・
殿下ら物が贈られてきたのは初めてであった。
「メイ・・・」
「毒花が混ざってたりしない?」
「普通の花束にしか見えません。普通に心からのプレゼントかと思われます」
殿下が?心からプレゼント?
ない!ない!ない!ない!
どうしたってのよ、レオルド!
あの悪態ついてきたレオルドがそんな事を考えるなんて信じられない。
「大変よメイ、殿下は何かに取り憑かれたかもしれないわ」
「・・・お嬢様、冗談が過ぎます」
いいえ、本心からです。
もしかしたら殿下も転生者?
突然に前世の記憶が甦り的な?
そう言うパターンも確かにあるけど・・・
でも、妃教育でお会いする時は相変わらずの悪態っぷり。
とても前世の記憶が甦ったとは思えない・・・
では、どうして・・・
「それからレオルド殿下から次の妃教育が休みの日は公爵邸に伺うのでお茶でもしようと言う事で今週末の午前中に殿下が来られます」
「えっ!?」
本当にどうしたのだろうか?
まさか・・・本当に前世の記憶が?
今度のお茶会で確かめて見ないと・・・
「これは何だ!?」
「バームクーヘンでございます」
この世界にはないお茶菓子。
この日の為に料理長に作って貰った。
前世の記憶があればバームクーヘンを知らない人などいないはず。
これで殿下がどのような反応するか見ることにした。
「バームクーヘン?初めて見る茶菓子だな。公爵領では有名なのか?」
えっ!?
知らない!?
惚けているようにも思えない。
となると、殿下が前世の記憶が甦った訳ではないの・・・
ということは・・・どういう事?
殿下の性格が解らない・・・
「どうした!?」
「あっ、こちらはまだ市井には出しておりません。本日は殿下が来られると言う事で当家の料理長に協力して頂きお作り致しました」
「そうか・・・俺の為に・・・うん、悪くない。市井に売り出してもいいと思うぞ」
「あっ、はい。殿下のお口に合いまして良かったです」
所々、前世の記憶持ちなら反応するだろうワードを会話に入れてみたけど、殿下の反応をみる限り前世の記憶はないみたい。
では、殿下の奇行は・・・
この奇行は今回だけでは終わらなかった。
贈り物は定期的に届くようになり、お茶会も月一回は行われるようになった。
そして私はこの殿下の奇行はレオルド殿下の七不思議の一つとして深く考える事を止めた。
この時の私は気付いていなかった。
レオルド殿下とのスピード調整のため、深掘り教育を行った事で教師陣からの信頼が厚くなり、レオルド殿下を変えた令嬢として陛下と王妃から逃してなるものかと目を光らせてマークされる事となった。
そして、レオルド殿下とのお茶会の度にお出しした前世ならではのお茶菓子が悉く大ヒットし、数年後にフィリア商会を設立する事となった。
そして、月日が流れ学園生活が始まろうとしていた。




