② 妃教育
『若気の至り』
この言葉で婚約は継続と纏まったらしい。
私としてはやはりかとしか思わない。
お父様やお母様が必死に頭を謝って来たが、逆に申し訳ない。
シナリオ上、断る事など出来る訳ないのに・・・
さて、レオルド殿下との婚約が完全に結ばれたとなると私の生活リズムは変わらずという訳にはいかなくなった。
『マナー教育』『社会教育』『ダンス教育』等々、覚えなけれぼならないものが多々あった。
様々な理由で婚約破棄される覚悟はあるが、「馬鹿だから」が理由とされるのはプライドが許さない。
努力して言われるのなら仕方がないと諦めつくが、どうせ婚約破棄されるのだからと何もしないでいると言うのは自分自身が許せなかった。
なので妃教育は一生懸命取り込む事にした。
「何だ、あれほど大口開いていた癖にやはり俺の妃になりたくて必死のようだな」
レオルド殿下が待ち構えていたかのように出会す。
今日は妃教育の為に王宮へと向かっていた。
そこへ第一王族と出会してしまった。
と言うか、王族として会うのは彼としか会わない。
第一王子のウォルト王子は幼少期の頃から病弱で自室の部屋から出た事が滅多にないため挨拶を交わした事もない。
陛下と王妃は国政があるため簡単にお会いする事は難しい。
第三王子・第四王子や王女も二人おり、たまにお会いして挨拶を交わしたりするが、レオルド殿下のようにウロチョロされないため、たまにしか会わない。
レオルド殿下もウロチョロされなければ会わずに済むし嫌みも言わなくて済むのにと思ってしまう。
「これはレオルド殿下おはようございます。妃教育は婚約者として選ばれた者として最低の義務でございますので頑張っております。レオルド殿下に恥を掻かせないため励んでおりますが殿下が不甲斐ないと思われるようでしたら何時でも(秘密の契約を)実効して下さって大丈夫です」
「お前なら妃教育など簡単に出来るだろう」
「滅相もございません。私は人の名前を覚えるのが苦手で一生懸命覚えておりますが、なかなか教師の方のご期待にお答え出来ずに申し訳なく思っております」
「お前でもか・・・」
「はい。特に『ファイク伯爵』『ホワイク伯爵』『フレイク伯爵』が手厳しいですね」
「解る、解るぞ!あ奴等の紛らわしい名前ときたら、この前間違えて呼んでしまったら顔を顰めおって・・・」
「はい。ですが、各家名共に我が国を支え築いてきた方々ですので名を覚えるとはその者を大事に思っていると同じかと思いますので早く覚えたいと思います」
「・・・そうだな」
「そうでは教師の方が待っておりますので失礼します」
「あ、ああ」
よしよし、レオルド殿下の癇癪を聞かず通り過ぎる事が出来たわ。
毎回すれ違うものだから徐々に対応マニュアルが完成してしまった。
まだ、殿下が何か言いたそうにこちらを見ているけど気にしない気にしない。
次の日も何故か偶然レオルド殿下と会う事となった。
その次の日も、王宮に訪れる度毎日出会う。
しかも出会う場所がほぼ同じ場所であった。
まるで待ち構えているかのようだけど、レオルド殿下に限って、それはないない。
それでも毎日殿下と遭遇して、挨拶の変わりに必ず嫌みを一言伝えられ、それに私がお答えする。
最後に殿下が何か言いたげに私の方を見続けているという日が続くようになった。
殿下も流石よね。
よくもあれだけ嫌みの言葉が次から次へも出てくるものだ。
まーそれはよっぽど私が殿下から嫌われているという事なのでしょう。
ある日、いつものように妃教育に通うと、珍しくレオルド殿下のお姿がなかった。
これはチャンス!
今日は嫌みを言われることなく穏やかに過ごす事が出来そうであった。
スキップしたい気分を我慢しながら王宮の廊下をトコトコと歩く。
すると、廊下の向こうから侍女二人の話し声が聞こえてきた。
「聞いた、レオルド殿下の件?」
「教師の件でしょ、聞いた聞いた」
「散々、『お前などクビだ!』って教師の方々を辞めさせていた癖に今度は勉強を教えろだなんて言い出して何を考えているのかしら?」
「何も考えてないわよ。いつも威張っていて我が儘ばかりいって付き合わされる身にもなって貰いたいわ」
なるほど、レオルド殿下は侍女達にも嫌われているのね。
それにしても彼女達も勇気があるわね。
王宮内で王族の悪口を言うなんて・・・
壁に耳あり障子に目ありってことわざしらないのかしら?
知るわけないわね、前世のことわざだから。
もしかしてレオルド殿下の陰口は常習化している!?
もしそうなら、レオルド殿下も気付いているのかも。
同じ邸内で働く者達が自身の悪口を言っている事に出会したらどんな気持ちになるのだろう。
確かにレオルド殿下の性格にも問題がある。
問題があるけど・・・
何だか許せない。
そんな感情のせいか、私の足は彼女達の方へと歩みだしていた。
「貴女達大丈夫?王宮内では誰がどこで聞いているか解らないわよ」
「フィリア様!こ、これは他の者も話しておりますので・・・つい・・・」
「そう他の者も・・・」
「でも、いいかしら。ここは貴女達にとって職場よ。そして王族は上司となるわ。貴女達は職場で上司のお子様の陰口を言っている事になるのだけど、普通ならクビと言われても可笑しくないと思わない」
「そ、それは・・・」
「それと貴女達に弟とかいるの?」
「えっ、あっ、はい」
「弟達は何かお仕事をしておりまして?」
「いえ、遊んでばかりで困っております」
「解っているじゃない」
「???」
「貴女達の弟達が遊び回っているのと殿下が勉強しないのと何処が違うの?偉そうにしているのも仕方がないと思わない?誰もそれを正そうとする大人がいないのだから」
「ですが、第三王子のロード様は大人しく勉強も真面目にされております」
「それはそうよ。レオルド殿下の姿を見て『自分はあのようにはならない』と反面教師となる人がいるのだから。でも、レオルド殿下は誰の姿を見れば良いの?陛下達は職務で会えないし、お兄様はお体が弱く迷惑を掛ける訳には行かないわ」
「・・・」
「これは私からの指示です。王宮内での陰口は禁止とします。皆に伝えといて下さい。それと、レオルド殿下が良くない事をしたらしっかりと注意するように」
「ですが・・・」
「大丈夫。殿下に何か言われたら『フィリア様からのご指示です』って言って下さって大丈夫です」
「それではフィリア様のお立場が・・・」
「構わないわ。第三王子達だけ導く者がいるなんて卑怯だと思わない。レオルド殿下にもチャンスを与えて上げないと。お願いしますね」
「はい!」
うーん、これで王宮内での陰口を聞く事はなくなるでしょう。
何だか今日は気分がいい。
妃教育が終わったらメイにピーチティーを淹れて貰おうかしら♪
上機嫌で角を曲がろうとした所に今日は出会さないと思っていた第一王族と出会う事となった。
「あ、おはようございます」
「あ、ああ」
あれ?
今日の嫌みの一言はどうなったのかしら?
もしかしてネタ切れ?
殿下は特に喋る事もなく何かモゾモゾしている。
あーお手洗いに行きたくて嫌みどころではないと見た。
「殿下、お手洗いですか?」
「ち、違う!」
怒られてしまった。
名推理だと思ったのに残念。
推理が外れたショックで項垂れていると殿下が「あっ、失礼する」と寂しそうな顔をしながらスタスタと早足で遠ざかって行った。
今日の殿下は何か変だ。
何がしたかったのかが解らない。
もしや殿下を怒らせてしまったのかと心配になったけどお供の従者は笑みを浮かべながら通り過ぎていったから大丈夫かな。
殿下の不思議な行動に悩まされる。
しかし、殿下の不可思議な行動はこの日だけではなかった。




