第一部 一章
春とは名ばかりで、北陸の空にはまだ冬の名残が居座っていた。
空気は冷たい海風を含み、頬に触れると少し痛いほどだ。
山肌には僅かに残る雪が白く光り、田畑には冬を越えた土の湿り気がのしかかっている。
そんな重く湿った大地の気配を感じつつ田んぼの間を抜ける細道を、川原清一は教科書を抱えながら歩いていた。
その重さを靴裏で受け止めながら歩くたび、抱えた教科書の重さと響き合うように、まだ軽やかさを許さぬ
確かな現実を彼の腕に伝えているようだった。
雪解け水が轟々と音を立てながら勢いよく流れる川の上に小さな木橋があり、それを渡ると校舎が見えてくる。
清一は湿った春の匂いを胸いっぱいに吸い込み、
「よろしく頼む」
と、自分に誓いかけた。
大正12年、4月。
この年、清一は小学校の教師となり初めて教壇に立つ。
正門をくぐると、朝露に濡れた土の匂いや木造校舎の
柔らかで古い匂いが漂ってくる。
その匂いは湿っていて重たい空気と同居しているが、
清一の誓いに答えるかのように、これから始まる日々を静かに迎えてくれているようだった。
清一が教師を志したのは、大正という時代に芽生えたあの澄んだ空気のせいだった。
ペリーの来航をきっかけに長く閉ざされた武士の世が終わり、この国は息を切らしながら西洋に追いつこうと近代化へ駆け出した。
鉄道が大地を切り裂くように走り、工場が煙を吐き、西洋の学問や文化が雪崩のように流れ込んだ。
この忙しない時代に清一は生まれ、少年になる頃にはまた違う雪崩が押し寄せるようだった。
——大正デモクラシー
新聞や雑誌には多様な思想が語られ、街には議論を交わす青年たちの声で満ちていた。
「自由」「表現」「個人の意志」などといった言葉が人々の心を揺さぶり、清一もまたその一人だった。
人が自分で考え、自分の言葉で、自分の意志で生きていい時代になっていく——。
そう信じられたような気がした。
そんな新しい未来を日々切り開いていくこの国の姿は、文明の象徴としては光輝いていた。
しかし、光があれば影も宿るのが現実である。
人々はこれまでの価値観と新しい思想の狭間で迷い続けている。
家に縛られ、学校に行かず働く子供たち。
親から見合いの話を受け、学校の卒業を待たずに結婚する者。
長子であるからと家業を継ぐ者。
これまでの価値観を否定するつもりはない。
だが、それは自分の意志で決めたことなのか。
もし、それが周りの声に従わされているのなら。
もし、その背後に影が宿っているのだとしたら。
清一もまたその狭間で迷い続けて、自分の答えを導き出した。
——自分が光を灯してやりたい。
自らが自らの意志で、自らが切り開こうとする道の
道標になりたい。
周りに影を宿されているとしたら、自分が光を灯し、
自らが切り開こうとする道を迷わずに歩いていけるようにしてやりたい。
ずっと灯してやることはできなくとも、時々曇の隙間から差し込む陽のように、光の灯火を思い出してくれたら。
清一は生まれ育ったこの地で見た人々のことを思い起こし、そう誓った。
木造校舎の廊下進むと、まだ朝の冷たさを僅かに含んだ空気の中に、墨の匂いと古い紙の匂いが静かに満ちていた。
歩くたび床板がみしりと鳴って、清一の緊張を
吸い込んでいくようだ。
職員室の前で足を止め、清一は胸の中に芽生えた意志をそっと確かめるように深呼吸した。
——自分が光を灯してやる
そう誓ったばかりの意志は、緊張と期待で僅かに震えている。
戸を開けると、白髪の混じった落ち着きのある風貌の男が立っていた。
校庭の見える窓を眺めていたようだが、戸の開く音が聞こえると体を翻してこちらに歩き、清一の顔を真正面から見つめた。
「待っていたよ。君が川原君だね?」
この穏やかな声の主は、校長の松永貫次郎だ。
柔らかな目元には、長い年月子供たちを教え、見守ってきた人だけが持つ深い皺が刻まれている。
「はい!川原清一と申します。本日からよろしくお願いいたします!」
清一は松永を前にすると、声が裏返るのも構わず精一杯の挨拶を絞り出した。
柔らかな目元に穏やかさを湛える松永だが、校長という役職が持つ静かな威厳は、清一の緊張を一層際立たせた。
松永とは赴任前に一度面接で顔を合わせているが、同じ人物とは思えぬほど"学校という場所"の重みを纏っていた。
「硬くならなくてよい、楽にしなさい。実は私も去年この小学校に来たばかりでね。まだまだ新座者さ」
松永は笑いながらそう告げると、清一に傍らの椅子を促しながらゆっくりと言葉を続けた。
「私は必ず新しい先生に聞いていることがあるんだ。さっそくだが、川原君はどんな教師になりたい?」
清一は背筋を伸ばし、少し言葉を探したが胸の奥にある誓ったばかりの意志を掬い上げるように告げる。
「私は、子供たちが自分の意志で、自分の道を歩けるようにさせてあげたいです。言われた通りに進むのではなく、自分で自分の道を選べるように。私はその道を照らす"光"になれたらと思います」
松永は黙って清一を見つめていた。
まるで、彼の胸にある灯火の強さを確かめているようだった。
少し間を置いて松永は目を細めて嬉しそうに頷きながら、
「良い言葉だ。君のような意志を持った若い人が来てくれて、本当に嬉しく思うよ」
その言葉には経験を重ねた大人の静かな温度が宿っていた。雪でガチガチに固まったような清一の緊張が解けていく。
「私も家柄や時代の価値観で子供を縛るような指導はしたくない。どの子にも、自分の意志で未来を選ばせたい。——ようやく、光が見えてきたこの時代だからこそ、だ」
まさしく清一が願い、誓った言葉そのものだった。
そして、胸の内で何かが確かに結ばれた。
「今日の授業は午後からだったね。安心して働くといい。ここには君と同じ願いを持っている者が沢山いる。そして、私もその一人だ。よろしく頼むよ」
それは"歓迎"という言葉以上の、一つの信頼の証のようだった。
——この人は、この場所は、自分を灯してくれている
「はい!精進して参ります!」
清一は深々と頭を下げた。
午後の授業に向けた準備で清一は職員室の自分の机に向かっている。
木の机はところどころ擦れて艶がなく、何人もの教師が寄り添ってきた年月を物語っていた。
机の引き出しを開けて教科書、筆記用具、白墨、出席簿を丁寧に並べた。何度も授業の流れを頭の中で反芻しながら、初めて教壇に立つ自分の姿をそっと想像してみる。
窓から差し込む春の光が机の上の白墨を照らし、
どこか淡い匂いのする紙と混じり合いながら少しずつ
昼の訪れを静かに知らせている。
「いよいよだな。向かうか」
清一はそう呟くと白墨と出席簿を手に取り、立ち上がった。
教室へと続く廊下を歩くたび、床板が小さくみしりと
音を立てる。
——子供たちが、自分の意志で道を見つけられるように清一の誓った灯火が温度を増していく。
午前とは違う緊張を吸い込んでいくようだった。
教室の向こうからは子供たちのざわめきが聞こえてくる。
笑い声、椅子の軋む音、紙の擦れる音——
白墨を握る手に汗が滲むが、このざわめきは清一にとってこれから始まる"合図"でもあった。
「——参ります」
そっと戸に手を掛け、光の差す教室へ一歩を踏み出した。
戸を開けた瞬間、教室に満ちていたざわめきがふっと崩れた。
窓辺から差しこむ白い光が薄く曇ったガラス越しに揺らぎ、黒板に反射して白墨の粉をきらりと浮かび上がらせる。
「先生だ!」
一番後ろの席の少年が声を上げると、子供たちの視線が一斉に清一へ向けられた。
「先生若いね」
「うちの一番上の兄ちゃんより若いかも」
前列の子がひそひそ呟くと、その周りでくすくすと小さな笑い声が生まれた。
好奇心、期待、少しの緊張——。
教壇に立つまでのほんの数歩の間にも、小さな眼差しの中に様々な温度が宿っている。
色とりどりの子供たちの反応に、清一は自然と口元が緩んだ。
そんな初めのざわめきや小さな視線を背中に受けながら、白墨を握り黒板にゆっくりと自分の名前を書いた。
"川原清一"
書き終えると振り返って子供たちの顔を一人ひとり見つめた。
「今日から皆さんの担任を務めることになりました。川原清一と申します。よろしくお願いします」
緊張で喉が乾くが、不思議と声は落ち着いていた。
「皆さんのことをたくさん知りたいと思っています。
勉強はもちろんだけど、好きなこと、得意なこと、
将来なりたいもの——。話せることを、なんでも先生に話してくれたら嬉しいです」
清一は胸の奥にある誓いの灯火を感じながら続けた。
「皆さんがその好きなことや将来なりたいものができるように、先生は精一杯の手伝いをしたいと思っています。今すぐには難しいし分からないかもしれませんが、皆さん自身がこれからのことを考えて、選んで、自分の道を見つけられるように——。それが、先生の今の夢です」
椅子の軋みさえ止まり静かに清一の話を聴いていた
子供たちは少しざわめき、小さな「ふーん」という呟きが落ちた。
その声に誘われるように、柔らかい空気が少しずつ広がっていく。
「はい質問!先生の好きな食べ物は何ですか!?」
前列の少年が手を挙げて唐突に質問すると、一気に子供たちの表情が明るくなった。
「えぇっと……カレー、です!」
清一は唐突な質問に拍子抜けし、笑いながら答えた。
「僕も僕も!そんなに食べたことないけど!」
「私も好き!」
子供たちは一斉に声を上げた。
心配など必要なかった。
子供たちの何気ない会話が清一の緊張を溶かし、自分を灯してくれているようだった。
——皆の道を灯してやる
改まった誓いとともに清一の新しい日々が始まった。
清一は毎日鶏の鳴き声で目を覚ます。
まだ日が山の端から顔を覗かせたばかりで、薄い朝露が田畑の上にゆらゆらと漂っている。
北陸の春は東京に比べると遅く、空気もまだ冷たいが
土の奥では確かに季節が動いていることが感じられた。
清一は縁側に腰を下ろすと、遠くで縄を打つ音に耳を澄ます。
それは父である正蔵が農作業に向けて農具を整えている音だ。
この家では春になると農業を営み、冬は和紙を漉く。
家の裏手に小さな小屋があり、寒い時期は父と母がそこに籠って冷たい水に手を浸して紙を漉いている。
北陸の厳しい雪の中で育まれる和紙は白く、柔らかく、壊れそうなのに強くてどこか凛として美しい。
この家に生まれてからずっと変わらない、日常の中にも季節の動きを感じる。
清一も幼少の頃から学校が終わった後や休みの日には
積極的に家業を手伝っていた。
それは教師となった今でも時間の許す限り行っている。
「清一、これ食べていきなさい」
そんな声とともに、母の千代が朝餉を盆にのせて縁側へ運んできた。
茶碗によそられたご飯から湯気が立ち、味噌汁の香りがほっと胸を和ませる。
以前の食卓の席には清一の姉二人がいた。
明るく、よく笑う賑やかな姉たちだったが、嫁ぎ先が
決まってからはこの家も急に静かになった。
「あんたが家にいてくれてありがたいよ」
千代がふと呟くと、清一は照れくさそうに茶碗を置いた。
教師になることを両親から、特に父からは反対されるだろうと思い込んでいた。
この時代の父親という存在は、現代とは比べものにならないほど大きかった。
清一の家でもそうだ。
何かを決めるとき、正造の一言が家の空気を決定づけていた。
正蔵は普段は無口で声を荒げるようなことはなかったが、その静けさの中に家の掟も、将来の行く先も、すべてが含まれているように感じられた。
決して父に怯えていたわけではないが、静けさが
醸し出す雄弁さに怖いものがないといったら嘘になる。
だから教師になりたいと思ったとき、すぐには言い出せなかった。
「私の道ではない、お前が決めることだ。」
意を決して教師になりたいと正蔵に告げると、
そう返ってきた。
意外だった。
自分は家の農業と紙漉きを継ぐものだと思っていた。
ましてや長男で、学校を卒業したら家業を継いで、
自分が途絶えてさせてはならないと思っていた。
当時の世に漂う常識や家を包む価値観がそうさせていたのかもしれない。
いや、それに逆らうことが怖かったのかもしれない。
だからこそ、新たに世に漂い始めた様々な思想や個人の意志といった自由な表現は清一を奮い立たせたのであろう。
思い返せば正蔵から、「家業を継げ」とは言われたことがなかった。
日が沈む前に帰ること。
食事の席では箸を置くまで口を利かないこと。
正造が定めた家の掟は、静かで無駄がない。
師範学校を卒業し、教員免状を取得した時も父は
誰よりも喜んでくれた。
家業を継がなかったことも、一度も責められなかった。
自分は恵まれている。
父に抱いていた一方的な、歪んだ先入観や自分が世に
漂う常識に流されていたことが、慙愧に堪えなかった。
「けどねぇ、気を遣わなくていいのよ。無理は禁物よ」
千代は、教師に家業と忙しなく勤める清一の日々が
気がかりなのであろう。
いつもの優しい声の中に母なりの気遣いと心配が混じっていた。
「無理などしていません。それに、好きでここに居ますから。……では、行ってきます」
朝食を終えた清一はそう言うと、肩に鞄を掛けて家の戸を開けた。
この日、清一は職員室の机で原稿用紙を確認していた。
それは数日前生徒に出した宿題で、題材は「将来の夢」である。
『将来なりたいもの、やりたいことでも何でも自分の好きなように書いてくること』
そう言うと子供たちのいつもの声が教室を満たした。
『医者になりたい!』
『お母さんみたいになりたいな』
『どっか遠くに行ってみたいかもなー』
自由な希望に満ちている中にこんな声も聞こえた。
『えー、まだわかんないよー』
『決まってないし』
——書けなくていい。
そう言おうとしたが、このとき清一はその言葉を飲み込んだ。
子供たちの濁りのない純粋な声が飛び交い、清一も
童心に帰ったかように心が弾んだ。
そんな光景をふと思い浮かべながら一人ひとりの原稿
用紙を読んで誤字があれば添削し、清一の感想も書き込んでいく。
文字は拙く、稚拙な文章もあるが、それぞれにその子なりの輪郭があった。
そして、ある一枚で手が止まる。
『田原秀雄』
名前だけが原稿用紙の隅にぽつんと置かれるように記入され、その続きは真っ白だった。
清一はしばらくその紙から目を離せなかった。
何も書かれていないという意味の重さをただ、指先で触れている。
やがて予鈴の音が響き、授業の時間が近づいていることを知らせる。
清一はその音に促されるようにそっと原稿用紙を束ね、教室へ向かった。
「よく考えたな」
清一は子供たち1人ひとりに原稿用紙を返却しながら、
短く声を掛けた。
書かれた夢を称えるのではなく、そこに至るまで
自分なりに考えた跡を確かに受け取ったと伝えるように。
「次、田原」
田原秀雄は学級内であまり目立つ生徒ではないが、
授業は真面目に取り組み成績も優秀だ。
休み時間には級友とたわいもない話で盛り上がり、
放課後になると学校の外へ駆け出して友人たちとはしゃいでいる様子もよく目にしている。
名前を呼ばれると田原はどこか気まずそうな装いで
立ち上がり、教卓に向かってきた。
顔は俯いたまま、清一と目が合わない。
「……放課後、少し話せるか?」
名前だけ書かれた原稿用紙をそっと田原に渡し、
そう告げた。
叱られると思ったのだろうか、田原は少し怯えたような様子で一瞬戸惑いながらも小さく頷いた。
放課後の教室は夕方の光が窓から差し込み、机の影を
長く床に落としている。
子供たちのざわめきがある昼間とは打って変わって、
静かな教室に二人の影がまた長く伸びていた。
「怖がらないでいい。叱るつもりで呼んでないさ」
田原を椅子に促しながら自分も隣に座り、穏やかな口調で最初にそう告げる。
その一言で田原は僅かに安堵するも顔は俯いたままだ。
「書けなかったな」
責めるように問いただすことなく、ただ事実を確かめるように聞いた。
田原は俯いたまましばらく黙っていたが、やがてぽつりと口を開き、ゆっくり言葉を探すように話始める。
「……書けなくて、すみません。でも俺、何書けばいいか分からなくて。夢が分からないんです」
清一はすぐには言葉を返さなかった。
だが、田原が白紙で提出した理由が、この一言で
分かったような気がした。
「そうだったのか」
田原もまた、清一が白紙で出したことで叱ろうとする
わけではないと分かったような気がした。
そして、僅かに顔を上げて続ける。
「父ちゃんから『お前は酒造を継ぐんだぞ』って言われてるから、それが当たり前っていうか……
それ以外考えたことなかったんです」
将来を選択できないことへの反抗でも、悲しみでもなく、清一の事実を確かめる問いに、田原は感情を交えず事実だけを口にした。
田原の家では町で有名な酒造を営んでおり、冬場には
繁忙期を迎える。
そのため家族総出で蔵に入り、田原もできることを
手伝っているようだ。
正月や門出などめでたい日には清一の家でもここで造る酒の世話になっていた。
「田原はそれが嫌か?」
その問いに少年ははっとして、少し考えてから首を横に振った。
「嫌じゃないです。むしろ楽しいですよ。だけど、もし俺が違う仕事がしたいって思ってそれを言ったら……。許してくれないような気がして、怖いんです」
清一は田原をかつての自分と重ねていた。
決して父に怯えていたわけではない。反抗でもない。
そして、空気を生み出した恨みもない。
圧力とまではいえないが何気ない空気がそこにあり、
自分の意志を伝えるまでの道のりが暗くのしかかっていた。
「それでいいんだ」
清一は机の上に名前だけが書かれた原稿用紙を置きながら続けた。
「何も書いてないのは今言ったように、まだわからないからなんだよな?それは何も考えていないってことにはならない。田原はちゃんと自分で考えている。自分を見失ってない…」
一度言葉を切り、
「誰かの期待とか見えない空気に立ち向かうのは勇気がいる。だからすぐに伝えなくても決めなくてもいい。ただどんな道を歩こうとしても、"自分が選んだ道"だって思えるように、先生はなってほしい」
田原の目が揺らぐ。
しばらく黙っていたが、やがて小さく口を開いた。
「先生、まだ考えててもいいですか?いつになるかは
わからないけど……」
清一は穏やかに、はっきりと頷いた。
「勿論だ。自分がいいと思うまで考えるといい」
田原は原稿用紙を抱え、深々と頭を下げた。
「もう大丈夫、気をつけて帰って」
「はい!ありがとうございました!」
威勢のいい返事をして、田原は教室の外へ駆け出した。
教室を出ていく少年の背中に夕方の光が照らさた姿は、彼が道を見失わないための道標のようだった。
清一は静かにそれを見送った。




