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第八話 共に

 


「はぁ……」

「ノア様。お助けいただきまして、ありがとうございました」


 リーシアを害した者たちが居なくなり、息を吐く。するとリーシアがお礼を告げた。


「いや、私がもっと早く駆けつけていれば、この様な騒動にもならなかっただろう。辛い想いをさせてしまった」

「いいえ、この程度なんともありません。ノア様と共に、この国を支えて行くのですから。……ですが、ノア様が駆け付けて下さり安心しました」


 密輸の現場を押さえることが出来たのは大きな収穫である。しかしその裏で、愛しい婚約者が害されているとは予想することが出来なかった。反省をすると、リーシアは首を横に振り可愛らしいことを告げた。


「……っ、ありがとう。リーシア」

「はい、ノア様」


 笑顔を向けるリーシアにお礼を告げる。何時も彼女は俺に力を与えてくれるのだ。


「さて……この状況は如何するべきか……」

「そうですね……」


 卒業パーティーの会場を見回すと、参加者たちは混乱している。それは仕方がないことだ。急な婚約破棄と断罪が始まり、俺の介入。そして密輸の真実を告げた、ナンス・オロン公爵令息とカナ・ゲーゼン男爵令嬢の拘束。混乱するのは当然である。


「折角の卒業パーティーが、これではな……」


 門出である卒業パーティーが、愚かな者たちの所為で滅茶苦茶になってしまった。何か埋め合わせにあることがしたい。彼らが喜ぶことはなんだろうか。


「失礼いたします。ノア王太子殿下。リーシア様と一曲踊られては如何でしょうか?」

「カイン……しかし、それで皆が喜ぶのか?」


 考えていると、カインが姿を現した。彼の意見はいつも的を射ている。カインの言葉を疑うわけではないが、不思議に思い首を傾げた。


「あります。王太子殿下であられるノア様と、婚約者であるリーシア様のダンスを初めて目にする栄誉を得られるのです。この場に居合わせたことを誇りに思うことが出来ます」

「そ、そうか……」


 カインの熱弁に少しだけ、たじろぐ。俺やリーシアのことになると、カインの熱量が凄いのだ。


「素敵な提案ですわ」

「そうだな。カインの意見を採用させてもらおう」

「ありがとうございます。リーシア様。花束は私が、お預りさせていただきます」


 リーシアもカインの意見に賛同する。彼女が了承するならば、俺に断る理由はない。リーシアがカインに花束を渡すと、美しい音楽が流れ始めた。


「リーシア、私と踊っていただけないでしょうか?」


 俺はリーシアの前に跪くと、ダンスのお誘いを告げる。


「はい、喜んでお受けいたします」


 リーシアは優しく微笑むと、俺の手を取った。



 後日。卒業パーティーで披露された俺たちのダンスが、素晴らしかったと新聞に載った。そのことにカインとユアンは自信満々に頷き、リーシアは嬉しそうに新聞記事を眺めていた。愛しい婚約者の姿に、俺は笑みを浮かべた。




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