第六話 真実③
「ユアン、その者は……」
俺はユアンが連れて来て男について尋ねる。縄で手を縛られているところを見ると、カナとナンスの関係者だろう。
「はい。パーティーが始まって間もない会場から抜け出そうとしていたので、不審に思い話しかけたところ……ゲーゼン男爵令嬢に加担していたことを自白しました」
予想通り、カナの関係者のようだ。リーシアの兄であるユアンは騎士団に所属している。不審者を見抜く目は確かだ。彼を中心にリーシアの警護を任せておいて良かった。
「……っ、俺は金を貰えるっていうから協力しただけだ……」
男は項垂れながら、協力した理由を口にした。
「ちょっと! あんた! 裏切るのっ!?」
「それはそうだろう! 割に合わないからな! 女子生徒の服を着て、銀色の髪のカツラを被ってカナを突き飛ばすフリをしただけだ! それなのに王太子や騎士団まで出てきて! 計画したのはお前だろ!? 俺は知らないぞ!」
協力者の自白にカナが怒りを露にするが、そのことが逆にカナの計画を暴露するきっかけになる。
リーシアを貶める計画には、ナンスに自分が被害者であることを目撃させなければならない。それには加害者役が必要になる。その為、カナは協力者である男に、リーシアのフリをさせたのだ。しかし協力者である男の自白により、カナの主張は瓦解した。
「……っ!? この……でも、リーシア様には私に暴言を……」
「カナ様。私は同学年ですから、貴女を存じております。しかし、直接お話をするのは今日が初めてです」
取り乱しながらも、未だ自分が被害者であるとカナが口にした。するとリーシアが毅然とした態度で一蹴する。凛々しい姿も素敵だ。
「……くっ!?」
「そもそも、リーシアには君たちが認識出来た以外にも護衛を付けていた。リーシアと会話したというなら、日時を教えてくれ。彼らの報告書と確認をしよう。……まあ、言たらの話だが?」
悔しそうなカナに追撃をかける。俺は心配性だ。三年間も愛しい婚約者と離れて暮らすに際して、ある条件を父親である国王に出した。それはリーシアの傍で見守る護衛以外に、陰から見守る護衛を付けることだ。
リーシアが俺の婚約者であることを万が一にでも知られ、彼女を害そうとする輩が現れないとも限らない。その対応策として、陰から見守る護衛たちを配したのだ。彼らの報告書を見れば、カナとリーシアが会話をしたかどうか分かる。
「な、なによそれ……。私は公爵夫人になりたいから、ナンス様に近づいたのに! 彼が婚約者はリーシアだって言うから! 邪魔なリーシアを貶めて婚約破棄させて! 断罪して国外追放すれば完璧だったのに!! 騙したわね!!」
「っ!?」
カナは本心を露にすると、リーシアに向かって腕を振り上げた。




