第四話 真実①
「何かの間違いです! リーシア・フェルマート侯爵令嬢は、俺と婚約をしていたのです!」
ナンスは愚かにも俺の発言を否定した。咄嗟にリーシアの背中に庇う。
「ノア様っ、此処は私が……」
「いや、私に任せてくれ。リーア」
リーシアは自身が話すと主張するが、婚約者として彼女の役に立ちたい。
「……分かりました。お願い致します」
「嗚呼、任せてくれ」
彼女は少し戸惑いながらも、俺にこの場を任せてくれた。
リーシアの兄であるユアンが共に居ないところを見ると、彼も手筈通りに行動しているようだ。リーシアの憂いを払うのも、婚約者である俺の役目である。
「オロン公爵令息。君の発言は全て間違いだ。リーシアは私の婚約者だ。このことは両陛下とフェルマート侯爵も了承していることだ。正式発表は後日されるが、リーシアの汚名を返上する為に此処で発表させてもらう」
優しく美しいリーシアが、この様な男と婚約など天地がひっくり返ったとしても有り得ないことだ。俺の愛しい婚約者を、自身の婚約者だと主張するナンスに嫌悪感を覚える。
「……っ! 噓だ! 父上がリーシア・フェルマート侯爵令嬢と婚約をしたと言っていたのに……」
「耄碌したのだろう。国王陛下にオロン公爵の引退を進言しよう」
如何やらナンスが、リーシアと婚約したという勘違いをした原因はオロン公爵にあるようだ。公爵家ではあるが、未来の王妃を罵り傷付けた責任はとってもらう。
「……っ!? 婚約が間違いだったとしても! 騙されてはなりません! その女は男子生徒たちを侍らせ! カナを虐め暴力を振るった悪女です!!」
「そうですよ! ナンス様と婚約していなくても、殿下という者がありながら男性を侍らせているのはいけないと思います! 私への暴言に暴力も酷いです!」
漸く公爵家が終わりだと気付いたようだが、ナンスとカナは火に油を注ぐ。
「その者たちは私が留学中に、リーシアに何かあっては困ると生徒に紛れさせた護衛だ」
「……えっ……しかし……知らされて……」
リーシアとの婚約を発表しなかったのは、俺に関係がると類が及ぶと考えたからだ。その為、俺が留学中は信頼出来る臣下に彼女の護衛を頼んだ。
「他の生徒たちの邪魔にならないように配慮した為だ。護衛を公表している如何する?」
「……っ……」
学院は学業に専念する場である。護衛を付けていても不自然にならないよう配慮したのだ。その結果、護衛たちに対してナンスたちは勘違いをした。リーシアにも信頼出来る臣下たちにも、失礼なこと極まりない。
「でも! 私は暴言を吐かれて、階段から突き飛ばされました!」
「何時だ? 何処で? それを目撃した者は?」
ナンスが黙ると、次にカナが声を上げた。被害者が声を高らかに主張するとは思えない。何よりも俺はリーシアのことを信じている。
「確か一週間前に、学院の階段で……。でも、ナンス様が目撃しています!」
「それは可笑しい」
カナは日時と場所に対して曖昧な返事した。代わりにナンスが目撃したことを強く主張する。俺相手でなければ、公爵令息の名前を出せば信じるだろう。しかし、俺はこの国の王太子である。正当性の無い権力に屈することはしない。




