楽譜の少女
ガタガタと車が揺れる。
「あと、どれくらいでつくの?」
私は母と父に訪ねた。
「あとそうねぇ・・・2~3時間かしら」
母はそう答えた。
「・・まだまだじゃん」
私は返答をし、ごろんっとイスの上に転がった。
私の家の車は結構おおきいので寝転がるくらいのスペースはあるのだ
「ふふ・・・本当に楽しみにしているのね」
母はくすくす笑いながら言った。
むっ、なんか子供扱いされてるみたいでヤダなぁ・・・・
「あらあら、おこっちゃった?」
「別に」
私たちは東京に住んでいた。だけど、父の仕事のつごうで田舎の神奈川に引っ越してきたのだ。私は引っ越しには慣れているし、あっちの生活には少しうんざりしていたので田舎にくると言う事になってとてもわくわくしているのだ。
だって、都会から田舎ってすごい生活に変わりがあるとおもわない?
「うーん。でも、友達できるかなぁ?」
「心愛ちゃんなら、きっとたくさんの友達が出来るわよ」
母は苦笑しつつ「心配ない心配ない」と言ってる
こうみると母は少し頭がおかしそうに見えるが、結構頭はよく
東洋英和女学院というところに通ってたそうだ。
なので私の名前も難しそうな漢字をつけられた。心愛でココアと読むらしい
いつまでも自分の心に嘘をつかず自分を愛して欲しいということで付けたらしい
これも嘘っぽいけど。
「そろそろ着くわよ~」
母がそういってからおよそ10分くらいで目的地に着いた。
私はドアをあけ車からおりた。
父と母は荷物を車から降ろしている。その光景を座って見ていると
「近所の人たちに挨拶してきなさい」
と母が言った。私はそれに従い近所の人に挨拶をしに行った。
近所の人はとても優しくて引っ越し祝い品などをくれた。
ほとんど、餅だけどね。
「あの~・・・」
私はドアをガラガラっとあけて中をのぞいてみた。
玄関には沢山の楽譜が散らばっていた
「楽譜・・?」
私は楽譜を拾ってみた。楽譜は『新世界』というものだった
「うわぁ・・頭痛くなるな」
そこにはぎっしりと音符が敷き詰められている。
私は勉強の中でも音楽が一番ダメなのだ。音符を読むなんてまんざらでもない
「それにしても・・・いないのかなぁ」
私は中をもう一度覗き込んで見る。
うーんいる気配ないなぁ・・・
そう思って帰ろうとしたときだった
「まって・・・」
奥の部屋の方からかすかに声が聞こえた
「あの・・誰かいらっしゃるんですか?」
私は訪ねてみた。すると返事が返ってきた
「入って」
そう言われた私は迷いもなくその家に上がった。
中に行くと一人の女の子が座っていた。周りにはすごい量の楽譜。
そして、大きいグランドピアノがひとつおいてある。
「座って」
その子は小さいさくら色の唇をかすかに動かし声を絞り出すように言った。
私は楽譜をふまないようにそっと座った。その子は優しく微笑んだ。
髪の毛はブラウンでサラサラしてて長かった。
瞳は髪と一緒で奥の深い茶色い色をしていた。
「少し・・お話しましょう?」
「は・・はあ」
私は彼女の不思議な言葉に曖昧に答えた。
私とその子はその日沢山の話をした。彼女の名前が『洋琴』と言う事も分かった。
そして、彼女が明日から私の通う学校と同じ学校と言う事がわかった。
私は少し不思議な子だなぁと思ったが、彼女がとても幸せそうに微笑んでいたので何も気にしなかった。