6 旅立ちの時
ゼンレスゾーンでエレンを求めてガチャを引くも出ない!
服の完成の次の日、俺達は早速織姫が作ってくれた服に袖を通した。
「しゅしゅ!」
「何だクマ吉? フードが気に入ったのか?」
ただでさえ暗殺者コーデなのにフードが有るが、そのフードにはずんぐりむっくりのクマ吉がピョコッと出ているため多少暗殺者感が薄れた気がする……ナイスクマ吉!
着替え終わると、部屋の外へと出る……短い間だったが世話になった部屋に頭を下げて退出する。
「よし、行こうかクマ吉!」
「しゅー!」
準備が終わった俺はクマ吉と共に出発式に参加するために城の正面門へと向かうのだった。
正面門へと着くと、既にまさ達は到着しており。
各々が織姫が作った服を着用していた……良く良く見てみればレティア様達の服も変わって居るのに気が付いた。
「あ、マヒトさーん。こっちです!」
「おはよう、レティア様……その服似合ってますよ」
「ふふ、ありがとうございます……皆様に服を渡し終えた後にオリヒメさんが渡してくれたんです」
「へー」
レティア様と話していると、優衣が元気よく声を掛けてきた。
「真人くん! おっはよーう!」
「はい、おはようございます」
「凄い他人行儀だ!」
「冗談だよ、おはよう優衣」
「むぅ……真人くんの意地悪!」
そんな風に優衣を弄って遊んでいると、まさとローレンスさんが一緒にやって来た。
「おはよう、真人」
「うっす!」
「おはよう、まさ、ローレンスさんも」
「いよいよだな……真人、しつこいかも知れないが無理はするなよ?」
「それはこっちのセリフだ……気を付けろよ、まさ」
俺達は話しながら式が始まるのを控え室代わりのテントで待っている。
暫くすると、織姫がテントに入って来た。
「ん、おはよ……皆」
「おはよう、織姫」
「おはよう! 織姫ちゃん!」
入って来た織姫は全員に挨拶をすると、最初にレティア様達に声を掛ける。
「二人共、渡した服の着心地は?」
「素晴らしいです!」
「ああ! めっちゃ楽なんだよなぁ」
「そっか、良かった……大事にしてね?」
織姫の言葉にレティア様達は頷き。
そのまま、織姫は俺達の元へとやって来た。
「皆、いよいよだね……」
「まあ、そんな心配そうな顔すんなってな? クマ吉?」
「しゅ……ZZZ」
「寝てる!?」
「はは……まあ、真人の言う通りだ、なるべく顔は見せるようにするからさ」
「えへへ、織姫ちゃんにお土産やお土産話いーぱっい持ってくるからね!」
俺達の言葉に織姫は嬉しそうに頬を弛めている。
そうしてる間に時間になったらしく、クライスさんが俺達を呼びに来た。
「皆、別れを惜しんでいる所悪いがもうすぐ入場の時間だ準備してくれ!」
「はい、わかりました!」
クライスさん言葉に俺達は返事をすると準備を終わらせる。
そして、クライスの指示に従って俺達は出発式へと進んで行く。
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出発式の会場である正面門には、来賓であろう貴族や兵士、騎士等が俺達が今から並ぶ所を囲むように大勢座っていた。
そして、お城の正面の扉の上のバルコニーにはエリオット王、その後方に控える様にセシリア王妃とライオット王子が立っていた。
「では、此方にマサヨシ殿達4人で並んで頂けますか?」
「「はい!」」
クライスさんの言葉に緊張しているのか、固い返事をする二人。
そして、周りから聞こえて来る来賓達の言葉。
「あれが聖女様と勇者様か」
「何と美しい! まるで女神の様だ……」
「勇者様も何と頼もしいお姿か……」
流石は聖女と勇者と言った所か……かなり評判が良さそうだ。
そして、次は俺がクライスさんに呼ばれる。
「此方にマヒト殿はお立ち下さい」
「はい」
俺が指定された位置に行くと、やはり周りからヒソヒソと声が聞こえる。
「何だあの黒い小僧は……」
「ムシテイマー等と訳のわからんスキルを持っているらしい」
「ふん、虫等うるさいだけではないか!」
「国からの援助を断られたと……当然だな」
まあ、分かって居た事だか俺の心象は余り良くないらしい。
しかし、そんな事を気にする程繊細ではない為、澄まし顔で受け流す。
そうしていると、エリオット王が一歩前に出た。
そのタイミングで俺達5人は片膝をついて頭を下げる……事前に打ち合わせしていたのでスムーズに動けた。
「良い、顔を上げよ……これより! 旅立つ勇敢な5人の若者達の出発式を始める!」
「しゅ?」
エリオット王の言葉に俺達は顔を上げて、立ち上がって起立の体制でエリオット王の言葉に耳を傾ける。
この時、俺達三人はガチガチに緊張していた……その為気付かなかった……クマ吉が目を覚ました事に。
「この度……ぶふっ、んんっ! この場に居る5人は我等の為……ふー、我等の為に旅立つ決意をしてくれた……くれぐれも宜しく頼む」
「あらあら」
「あれが噂のベアスパイダーか」
堅苦しいお言葉が進み「健闘を祈る」とエリオット王が締めくくり出発式は終わりを迎えた。
所で何でエリオット王はあんなに苦しそうだったんだ?
後に聞いた話しでは、真剣な表情の俺の頭上ではクマ吉が踊って居たらしい……穴があったら入りたい!
出発式が終わり、俺は五体投地状態である……そんな俺の横でまさは大爆笑してる。
「ぶっふっふっ、流石にあれは……ふふ、エリオット王も気の毒に……」
「キリッとしてる顔してる上でノリに乗ってたなクマ吉」
まさとローレンスさんが思い出し笑いしてる。
しかし、それも束の間でまさは真面目な表情に戻る。
「真人……一旦これでお別れだけど、絶対に元気に再開しよう!」
「ああ、当然だ……優衣も元気でな」
「うん……」
俺達は別れの言葉を交わすと別々の方向へと歩き出す。
「真人くん!」
「優衣? うあ!」
突然優衣に呼ばれて振り返ると、優衣が抱き着いて来た……いい匂いがする……じゃなくて!
優衣はその後に俺から離れると、悪戯っぽい笑みを浮かべて居た。
「へへっ……真人くん……またね!」
「あ、ああ……また」
こうして俺達は各々の道を歩き出したのだった。
「しゅ~?」
「……行こうか、クマ吉!」
「しゅ!」
さあ、何処へ行こうかな?
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まさ達と別れて、城の外へ! と思ってた所に思わぬ来訪が有った。
目の前には恰幅の良いおじさん……聞けば織姫に協力してくれた商人らしい。
「それでお話とは?」
「いや、何でも国から支援を貰えないとお聞きしましたので……お力になれると思いましてね」
「ほう?」
話を聞いて見れば、どうやら彼も出発式の来賓であり。
更に言えば突然織姫がホワイトラインの糸を入手した件があり、俺の頭の上でご機嫌に踊るベアスパイダーが目に入った。
「驚きました……まさか、従えたベアスパイダーがホワイトラインであったとは……」
「それは完全な偶然でしたけどね」
つまり是非ともホワイトラインの糸を売って欲しいと、直接交渉に来たらしい。
「路銀は有った方がよろしいと思いますよ」
「大変魅力的な話しですが……相場が分からない……安く買い叩かれては堪ったものではないのですが?」
この国での通過は銅貨、銀貨、金貨で各々が感覚で言えば銅貨が100円、銀貨が1000円、金貨が10000円と考えれば分かりやすい。
俺は商人では無い……クマ吉の糸に何れだけの価値が有るかが分からない、だから様子を見る。
俺の言葉に商人のおじさんは盛大に笑い始めた。
「ふぉっふぉっふぉ! いやいや、慎重なのは良いことですぞ! ですが、安心して下さい足下を見るような三流商人とは違います……何でしたら、相場よりも高く買い取らせて頂きますよ?」
「……」
「ふむ、そうですな言ってしまえばこれだけ容易くホワイトラインの糸を卸せる最良物件は他に無いのが一つです……そして、もう一つは現在この国では商品が集め難い状態に有るのですよ」
「つまり、良い素材を提供出来るパイプが欲しいってことでしょうか?」
俺の言葉に商人のおじさんは頷く。
なるほど、それならば高い金を掛けてまで稀少素材を欲しがる訳だ……納得した。
「分かりました……クマ吉? 糸を出して欲しいけど良いかな?」
「しゅっ!」
クマ吉は敬礼の様に前足をあげると、くるくると糸玉を作り上げて行く。
そして、作られた糸玉を商人のおじさんに手渡す。
「では失礼して……!? こ、これは!?」
「な、何か不都合でも?」
糸玉を渡された商人のおじさんは、糸玉を確認すると驚愕の表情を浮かべている。
そして、正気に戻った商人のおじさんは興奮しているのを隠しもせず俺に詰め寄ってくる……近い!
「いえ! 逆です! こ、こんなにも状態が良く純度も高いホワイトラインの糸は見たことがごさいません!!」
「そ、そうですか……して、幾らで買い取って頂けますか?」
「おお、失礼しました……そうですな……1玉二十万金貨でいかがですか?」
「に、二十万ですか!?」
俺は思わず声を上げてしまった。
しかし、商人のおじさんは動じる事無く金額の理由を説明してくれる、
「まず、本来のホワイトラインの糸ならば相場は十万金貨です……今回は状態が最高級な為十五万、そしてサービスでプラス五万とさせて頂きました」
「あ、有り難うございます」
「いえいえ、出来ればこれからも我々の商会を懇意にして頂ければ幸いです!」
「その時は是非……えっと、お名前は?」
俺がそう言うと、商人のおじさんは「そうでしたな!」と自己紹介を始める。
「私はグリンデル商会のワッシーナ・グリンデルです。これからも末永くお願い致します!」
「俺はえー、マヒト・モリハラです……こいつはクマ吉です」
「しゅっ!」
「マヒト様にクマ吉様ですな! もしも、我等が商会に来た際には私の名前を出して下さい! サービスさせて頂きますよ! それではまた!」
俺とワッシーナさんは互いに握手を交わして、俺とクマ吉は今度こそ旅立ちの一歩を歩き出した。
俺達は王城を出て、ワームルス城下町の乗り合い馬車が集まる所に来ていた。
俺が目的地にしたのは、魔王国側に有る大きな街で名前は確か〈クルーデン〉と言う街だ。
「クルーデン直通の馬車は無いよ」
「乗り継ぎがいるのか?」
「ああ、途中に有る森を抜けるのに専用の馬車を使うのさ……森の手前までなら乗せていけるよ!」
「お願いします……あ、こいつも大丈夫ですか?」
「しゅ?」
「そのデカさから追加は掛かんないよ! ほら、あんたで終わりだからさっさと乗りな!」
御者のおじさんに急かされて、乗り合い馬車に乗り込む。
馬車に乗り込んで、一息着くと膝の上にクマ吉を乗せて途中で買っておいた干し肉を与えて背中を撫でる。
向かいに座って居る家族の男の子が、目を輝かせてクマ吉を見ている。
「うわぁ、大人しいね」
「こいつは特別なんだよ……触って見るかい?」
「いいの!?」
俺の言葉に男の子は嬉しそうにしている。
俺の横に座ってクマ吉を撫で始める。
男の子母親と目が合うと申し訳無さそうに話し掛けてくる。
「ごめんなさい、この子落ち着きが無くて」
「いえ、構いませんよ……どちらまで行かれるのですか?」
「王都の用事が終わって帰る途中なの、森の手前の村にね」
他愛の無い会話を交わしている事数時間、男の子とクマ吉は寝てる。
すると、馬車が減速を始めた。
「おーい! もうすぐ、フェルト村に着くぞー」
「クマ吉、起きろ降りるぞ」
「しゅ?」
クマ吉は一旦起きてフードに移動するとそのまままた眠ってしまった……羨ましい奴め!
馬車を降りて親子に別れを告げると、今日は宿を取ることにした。
そして翌朝、森専用の馬車に乗せて貰い、森を進んでいた。
そう、進んでいたのだが俺は絶賛迷子中だった。
何故こうなった!!
次回 王様を覗き見! 迷子の真人の運命はいかに!?