閑話 絹居織姫
変わった……? 違う、やりたい事を見つけただけ……
私は老舗の呉服屋の娘として産まれた。
小さい頃から和服等に囲まれて育った。
『いつか貴女がこの呉服屋を継ぐのよ』
母さんはいつもそう言っていた、華道、茶道に武道も一通り習わされた。
絹居家の人間として恥ずかしく無いように……文武両道であれ、母さんもお婆ちゃんも口をすっぱくして言っていた。
でも、私は現代ファッションの方が好きだった。和服も好きでも仕事にするならファッションデザイナーなりたいと思ってた。
「ダメよ! 織姫はこの呉服屋を継ぐのよ! 由緒正しいこの家を残さないといけないのよ!」
「うっさい! もう決めたの……高校卒業したら一人暮らししてファッションデザイナーの学校に通うから」
「勝手な事言わないで……」
「勝手なのはどっちなの!? 私には私の生き方が有るの……邪魔しないでよ!」
「待ちなさい! 織姫!」
私は思わず飛び出していた、反対されるのなんて分かりきって居た筈なのに……いざ反対れると悲しかった。
当て何か無くフラフラしていると、声を掛けられた。
「あれ? ねぇねぇ、あなた同じクラスの……えっと……」
「絹居だけど……」
「そうだ! 織姫ちゃんだ! 私は川崎優衣、よろしくね!」
中学3年の時のこれが私の転機だった。
最初は変な子だと思ったでも……真っ直ぐで綺麗な瞳で見てきた綺麗な女の子。
この子に自分が作った服を着せれたら幸せだと思った。
それから色々あった、真人君に出会って、まさに出会って仲良くなって……いつしか私の夢は変わって行った。
「お母さん……私さ」
「もうすぐ高校生ね……」
「え? うん、そうだね」
「最近の貴女は凄く輝いて見えたわ……本当に好きな事を見つけた……そんな目をしてたわ」
「お母さん?」
「貴女を変えた子達と同じ学校へ行くのでしょ? そこまで強い思いがあるのね」
「……うん」
「好きにしなさい……その代わり中途半端は許さないからね」
「……! うん、ありがとう……お母さん」
私は夢に大きく近付いた、幸せだった。
けどその幸せに陰りが見えてしまった。
高校になって、異世界に飛ばされて……正直もうダメかと思った。
でも、運に見放された訳じゃ無かった。
スキル
〈聖装職人〉……素材を使い、様々な力を持った服を作る事が出来る。
話しが進み、皆は旅に出ることになった。
私は私が出来る事で皆を助ける事にした。
それから、私は御披露目パーティーの時に商人を捕まえ、王様に相談して素材を揃えた。
私の真剣な表情に王様は快く協力してくれた。
「そなたは……いや、そなたらは互いを大切に思っているのだな」
「当然、だって三人は私の恩人だから……大切な友達だから」
「ならば良いものを作らねばな」
しかし、これだけやっても最も必要な物が揃わなかった。
それは糸だ……それも稀少な蜘蛛からとれる糸だった。
でも、ここでまさかの奇跡が起きた。
それは真人君が仲間にした蜘蛛がまさにその稀少な蜘蛛だった。
本当にクマ吉には感謝しても仕切れないな。
クマ吉から糸を貰い、服を作り上げて。
私は今、三人が並んでいる姿を見ている。
王様が厳粛なただ住まいで話しているのを三人は緊張の面持ちで聞いている。
私はこっそり笑ってしまう、クマ吉……真人君の頭の上で踊らないで私が笑っちゃう……あ、レティアさんもこっそり笑ってる。
「三人共、緊張しすぎ」
私の夢は私が作った服を着て三人が並ぶ姿を見る事。
私が作った服を着て三人が笑ってる姿を見る事……
だから次は……皆で元の世界で平和な日常でその夢が叶うと良いな……だから
「絶対に無事に帰って来てね……」
少女は細やかな夢を紡ぐ。
その夢は一人では叶わない