51 その場所で眠る者の名前
もうすぐアリア実装ですね
ライは小屋に入ると、懐かしそうに簡素なテーブルやベッドを見て回っていた。
「何も変わってないな……マザーらしいや」
「……ライ」
「大丈夫……行こっか」
ライはそう言うと小屋から出ていく。
その後に着いていくと、ちょっとした舟がいくつか置いてあった。
「全部使えそう……マザーは空間魔法で保管してくれていた見たいだね」
「俺が持って行きます」
クロガネが舟を持ち上げて湖へと向かっていく。
舟の大きさは俺達がギリギリ全員乗れる位なので全員で乗り込む。
そして、ライが風魔法を使い舟を動かす。
「……懐かしい、皆でこの場所で過ごしたんだ……彼が釣りをしている時私は常に彼の側に飛び続けて居て。マザーは大きな蜘蛛の巣で恋人と寄り添って、プラチナダンゴムシのゴロウはのんきに昼寝をして、コダイジュゼミのオキナは身体に釣り合わない小さな本を目を細めて読んでた」
ライから聞かされる知らないライの仲間達の話し。
遠くを見るように懐かしむライの横顔は少し嬉しそうだった。
「彼が無くなった後、ゴロウは護る役目を終えた。オキナは歳だったかな? 私とマザーは元々あの二匹とは存在が違ったからね……その後はマザー夫婦と一緒にこの場所を離れたんだ」
その時の事を思い出したのか、ライは寂しそうに悲しそうに顔を俯かせる。
舟が小島へと着き、俺達は無事に小島に上陸した。
ライに案内されるまま、島の中心部へと俺達は辿り着いた。
「ここは?」
「見た感じ……綺麗に整備されているわねぇ」
島の中心部は木々か切り開かれており、草花は綺麗に整われて居た。
そして、その更に中心には……護るように置かれた二つの墓と二つより一回り大きい墓がその場所に鎮座していた。
ライは先に二つの墓に花を供える。
「ゴロウ……オキナ……ただいま、ここを護り続けてくれてありがとう」
ライはそう言うと、立ち上がり大きな墓へと向かっていく。
大きな墓にも花を供えると、ライはそっと墓を優しく撫でる。
「ずっとほっらかしにしてごめんね……やっとここに来る決心がついたんだ……頼れる仲間達も居るし君が驚くこともあるんだ」
ライは親しい友人にあるいは家族に話し掛けるように優しく墓へと語り掛ける。
その姿で何れだけここに有る墓に眠っている者達がライにとって特別な存在で有ったかがわかる。
暫くすると、ライは立ち上がり此方を振り返り語るのだった。
「ここに眠る人達はかつて賢者として、世界を数多の種族に解放した人間と……その従者達で私の仲間達。賢者で有る人間は……別の世界から呼び寄せられた存在だった」
「俺達と同じってことか?」
俺の言葉にライは頷き言葉を続ける。
「かつてこの世界を創造した女神は、世界を虫達が支配している状況を……正確には強調性を持たず闊歩する虫達を気にしていた。しかし、この世界の存在では虫達を制する事は叶わなかった」
「だからぁ別の世界から連れてきたわけねぇ」
「女神様は虫達を大切に出来て、尚且つ人達へも優しさを向けれる存在を探しだした。そして、召喚されたのが賢者なんだ」
ライは真っ直ぐに俺に視線を向ける。
そして、一つの真実を告げる。
「彼は“ムシテイマー”のスキルを持ち、虫達を束ね各々が不自由なく暮らせる場所へと送り出して行った」
「あらぁ?」
「ち、ちょっと待ってくだいましライ御姉様!? 今なんとおっしゃいました!?」
ライの言葉に驚きを隠せないのはある程度マザーより教養を受けていたユキとヨミだった。
俺は首を傾げると、ライはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「この世界には女神様が定めたルールが有るんだよ……その一つに、別々の存在が同名のスキルを持つことを禁ずるって有るんだ」
「へぇ……つまり?」
「例え同じようなスキルであっても決して同じ名前にならないし、同じ能力にはならない……これまでの例を上げるのならば勇者や聖女だね、彼ら勇者や聖女と名の付く各々異なるスキルを与えられて来た」
そこまでの話を聞いて俺は疑問に思った……では何故俺と賢者は全く同じ名前のスキルを持っている?
いや……待て、ライは何て言ってた? ライは言ってた“別々の存在”が同じスキルを持てないと……
「これは別の世界から呼ばれた存在にも適応される……でもね、このルールにも一つだけ抜け穴が有るんだ……」
「もしかして……」
ライの言葉に、俺の鼓動が少し速くなる……しかし、ライは言葉を辞めない。
「……並行世界から来た同一存在で有るならば、同じ名前のスキルを持つことが出来る。その証拠がこのお墓だよマヒトくん」
そう言うと、ライは俺達に墓に刻まれた名前が見えるように立ち位置をずらした。
そして、そこには……
親愛なる賢者
〈ムシテイマー〉マヒト・モリハラ
ここに眠る
そう刻まれていた。
「君と初めて会ったあの時、凄く驚いたよ……何も変わらず賢者と同じ理由で名前を決めるんだもん」
「そうか……道理でやたら親しげだと思ったら」
しかし、その真実が分かっても俺は態度を変えるつもりは無い。
だが少し嫉妬はする……ずっと俺に賢者を重ねてた訳か……ふーん。
「なんだ……ライは俺に賢者を見てってわけか……」
「ええ!? いや、確かにそうだけどさ! 君は君だよ賢者とか関係なく君だから私は着いて来たんだ……今日ここに来たのは確認と決心したからだよ」
ライはそう言うと、墓に手を当てて……目を閉じた。
すると、明らかに不機嫌な表情になっていく。
「やっぱりだ……アイツの仕業だ、許せない」
「ライ?」
怒りの表情のまま此方を振り返ったライはすぐに落ち着けるように深呼吸する。
いつもほとんど感情を乱さないライの珍しい姿に少し心配になる。
「ふぅ、ごめんね……今、この墓の下に有る筈の賢者の遺体が無くなって居る事が確認出来た」
「……さっきの口振りだと……心辺り有りか?」
シノブの言葉にライは頷く。
「遺体に取り憑き身体のスキルを操る古代の魔族の一人だよ……かつて賢者と共にボコボコにしてやったけど……今回ばかりは度が過ぎてる」
ライは悔しいのか握り締めた手からは血が滲んでいるしまっている。
俺はライに近付き、その手を取って真っ直ぐ目を合わせる。
「ライ、悔しいのはわかる……だから俺達にも手伝わせてくれ」
「マヒトくん」
「ふふ、ライちゃん勿論私達もぉ手伝いわよぉ」
「皆も……お願い、彼を取り戻すのを手伝って欲しい!」
ライの願いに俺達は全員で頷く。
ライはそっと墓を撫でると誓うのだった。
「君との思い出を振り返るのはもうおしまい……私は前を向くよ。でもその前に君を取り戻しに行くよ、その後はまた皆で遊びに来るからね」
ライは身に付けたジニアのネックレスに手を添えると立ち上がり此方へと振り返る。
その表情にはここに来る前よりもずっと清々しく見えた。
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ドラゴニア帝国のゴウリュウは苛つきながらも声を上げる。
「これより我等ドラゴニア帝国はワームルスへと攻勢を掛ける!」
「「は!」」
「憎きセイリュウの娘は確保出来ず仕舞いだが時間の問題であろう……あの娘は必ずや父で有るセイリュウを救い出す為に動く筈だそこを捕らえる」
「「は!」」
「いまこそ!! 我等ドラゴニア帝国が世界を取る時だ!!」
「「うおぉぉぉお!!」」
ゴウリュウは眼前の兵士達の声に満足そうに頷いて見せる。
直ぐ側に控える魔人族はゴウリュウに気づかれる事なく卑しい笑いを浮かべる。
全ては思惑通りに……今、ドラゴニア帝国とワームルスの戦争が始まろうとしていた。
「ヒヒヒ、全てはわが王のタメニ」
数多の思惑を抱えて戦争の準備は着々と進んでいく。
閑話にて、賢者の物語を書く予定はあります……結構暗い話しになる予定です。何時書くは未定です。
次回は閑話勇者達の旅になります




