閑話 勇者達の旅6 国主との邂逅
明けましておめでとうございます!今年もムシテイマーをよろしくお願いいたします!
水龍の試練を終えた正義達は、そのままキキョウの酒屋で有るオニヨイへと向かった。
オニヨイに入ると、キキョウの姿は見えずウメが居るだけだった。
「あれ、ウメお婆ちゃんだけですか? キキョウさんは?」
「キキョウ様なら直ぐにいらっしゃいますよ」
優衣の言葉にウメがそう言うと、奥の暖簾の掛かった場所からキキョウが出くる。
「あら? お帰りなさい、どうやった? 水龍の試練……中々歯ごたえあったやろ?」
「ええ、大変でしたよ……」
正義は疲れた表情で水龍から受け取った素材をキキョウへと渡す。
素材を受け取ったキキョウは満足そうに頷く。
「ええね、間違いなく水龍の魔力を纏った素材やね……合格や、ちょいとお待ちやす……今リュウゴロシを持って来たげるわ」
キキョウはそう言うと再び暖簾の奥へと引っ込んで行く。
そして、暫く待つとキキョウは一つの酒壺を持って出てきた。
「お待ちやす、此がうちの秘伝のリュウゴロシや……気を付けてお持ちやす」
「おお、これが……ありがとうございます」
「ええよええよ、此を持って明日は国主様にお会いになるんやろ?」
キキョウの言葉にローレンスが頷く。
「そのつもりだ」
「ふふふ、それはきっとオモロイ物が見れるおもいますよ? 明日は楽しみにしてるとええですよー」
キキョウはそう言うとコロコロと笑いながら店の奥へと言ってしまうのだった。
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そして、キキョウからリュウゴロシを受け取ってから翌日。
正義達は首都セイカイの中心に有るサカエの国主の居る場所へと来ていた。
「うわぁ……お城って訳じゃ無いんだねぇ」
「この場所は色々な商売人が商談をしに来るところでも有るのよ……大まかに言えば規模の大きい商業ギルドね」
建物を見上げる優衣にレティアが軽く建物の説明をしている。
その間にローレンスと正義は門番に要件を伝えていた。
「お前達……見ない顔だな? 何のようでここに来た?」
「俺達は国主様にお目通り願いたく参りました」
「ふむ? もしや、ワームルスより来た勇者一行か?」
門番の問いに正義達は頷く。
門番は他の門番を呼ぶと何かを呟くと、正義達に向き直る。
「話しは手紙とキキョウ殿からの言伝てで存じております……案内の者が来ます故少々お待ちくだされ」
「分かりました」
先程とは態度が変わり、門番は丁寧に対応してくれた。
その少し後にスーツ姿の男性が現れて正義達に声を掛けた。
「大変お待たせ致しました……リュウゴロシの方は先んじて我々がお預かり致します」
「は、はい……よろしくお願いします」
「……確かにキキョウ殿のリュウゴロシで間違いありませんね……では皆様国主様の元へと案内致します」
受け取ったリュウゴロシを確認したスーツの男性は頭を下げるとそのまま背を向けて歩きだした。
正義達もその背中を追って歩き出す。
スーツ姿の男性は少し装飾が豪華な扉の前で足を止めた。
「此方の部屋で国主……キノシタ様がお待ちしております」
男性はそう言うと、扉を開けて正義達を招き入れた。
その部屋は一言で言えば会議室の様な部屋であった。
そして、正義達が部屋へと入ると一番奥の席に座って居た男が声をかける。
「どうもようこそお越し下さいました……私が商業国家サカエの現国主兼ヒノモト商会会長、マナブ・キノシタです」
「特級冒険者のローレンス・イゴールだ」
「ワームルス王国王女レティア・ワームルスですわ……以後お見知りおきを」
奥に座って居た男……サカエの国主であるマナブが自己紹介をすると、ローレンスとレティアも各々の立場を交えて自己紹介をしていく。
正義と優衣はわざと日本での名前の名乗りかたで自己紹介をすることにした。
「初めまして、勇者の“久遠正義”です」
「聖女の“川崎優衣”です」
「……成る程、同郷ですか」
マナブは正義と優衣に視線を向けると、自己紹介をやり直した。
「こんにちは、正義くん、優衣さん……私は木下学……日本人です」
「やっぱりか」
正義がそう言うと、優衣が学に質問する。
「えっと、キノシタ……さま? はどうして召喚されたんですか?」
「……召喚……ああ、貴方達は正式な方法で此方に来たのですね」
「……? 召喚以外の方法が有るのでしょうか?」
優衣の言葉に学は首を傾げた後に、思い出した様に頷く。
その様子に正義は思わず聞いてしまった。
「私は召喚されたのではなく、この世界に迷い込んでしまったのですよ……ふらっとね」
「ま、迷い込んだ……ですか?」
「……もしかして、迷い人か?」
「迷い人!? それは迷信みたいなものでは無かったの!?」
困惑する正義達を横目にローレンスとレティアが信じられないと言う目で学を見る。
そんな視線に学は困ったような表情で頷く。
「まよいびと? ってなに?」
「ユイ、迷い人は何処からともなく現れる存在として話だけ伝わった物で迷信やおとぎ話だと思われて居たのよ」
「その通り、私を拾ってくれた商人からもそう聞きました」
学はレティアの言葉に頷くと、ここに来た時事を話し始める。
「私が此方に来た時、あっちの世界では新しい年号平成に変わって直ぐの事でした……当時二十歳位で今年でこっちに来てから三年が経ちます」
「へ、平成になって直ぐ!?」
「しかも、こっちに来て三年だって?」
正義と優衣は顔を見合わせる。
それもその筈だ、自分達はそれから約三十年後の地球から来ている……それで三年経ってると言われてしまえば不安にもなる。
しかし、その様子に何かを察した学は二人に優しく声を掛ける。
「お二人は更に先の年代の地球から来たみたいですね……安心して下さい此方で集めた情報では様々な方法で此方に来た同郷の方々は皆別々の年代処か“世界線”すら違う方も居たようですよ」
「世界線?」
「もうスケールが大きすぎて何が何だか」
学の言葉に正義達は更に混乱してしまうが、ここでローレンスが手を叩いて話を戻す。
「正義達の世界の事は一旦置いておいて本題に入らせてくれ」
「ああ、確か世界各地での異変などの情報が欲しいらしいですね……ここ最近ならドラゴニア帝国の情報でしょうか?」
「ええ、お金なら我が国ワームルスからいくらでも引っ張ってこれるわ」
レティアの言葉に学は控えていた部下に目配せをすると、部下は何処かに合図を送りだした。
そして、暫くすると数人の男たちがリュウゴロシの酒樽を運んできた。
その酒樽は会議室の真ん中に有る泉の様な場所にゴトッと置かれた。
「あれってリュウゴロシ?」
「そもそも何で会議室に泉が有るんだ」
突然の行動に困惑する正義達一同、そんな正義達に学は申し訳なさそうに声を掛ける。
「申し訳ございません……リュウゴロシをお持ち頂いた方には“王”が直々に商談をする決まりでしてね」
「え? 国主はキノシタ様じゃ無いんですか?」
「いえ、国の運営は私が任されて居ます……まあ、分かりやすく言うなら私は総理大臣でこれから来られる方は天皇陛下みたいな物です」
優衣の言葉に学はそう返した。
「前にも思ったけど……マナブは良くわからない例えを良くするよねー」
「……!?」
突然聞こえた声に、正義達は警戒して周囲を見渡す。
そして、泉に置かれていたリュウゴロシが無くなっているのに気付いた。
そして、その真ん中には耳辺りに魚のヒレの様な物を着けたマリンブルーの髪色の男が樽ごと豪快にリュウゴロシを飲んでいた。
「どうもー水棲生物の王のリヴァイアサンでーす、以後お見知りおきー」
こうして正義達はサカイの本当の王と遭遇したのだった。
次回! 祝勝会!




