44 マコウカブトの角は折れない
ゼンゼロ! バージョン2.5! 葉瞬光! 楽しみーーーー!
マコウカブト達とクロガネを仲間にした翌朝、ユキ特製の朝食を食べた後偵察から戻ったシノブから報告を聞いていた。
「つまり、奴等はマコウカブトの長の亡き骸の側で俺達を待っていると?」
「是……余程自信が有ると見える……」
「上等ですわね……っと言いたいところですけど今回の主役はクロガネですわね」
「ああ、ヨミ嬢……不甲斐ない姿は見せない」
一晩力を蓄えたマコウカブト達は全員やる気に満ち溢れている……その中には当然クロガネも居る。
他のマコウカブトよりも一層漲っているクロガネから尋常じゃない威圧を感じる程だ。
俺はそんなクロガネに声を掛けることにした。
「クロガネ……勝ってこい……分かったな?」
「……! ふっ、お任せ下さい……このクロガネ必ずや勝利を貴方に」
俺の命令にクロガネは笑って頷いて見せた……それならば心配は無用だろう。
クロガネはマコウカブト達の前に立ち拳を突き上げ声を上げる。
「我等マコウカブト!! 闘いの時だ!! 長の言葉を思い出せ!!」
『『『おおおお!!!』』』
「怯まず闘う限り! 我等マコウカブトの角は折れない!!」
『『『我等が角は折れない!!!!』』』
「奴等マジンクワガタに目に物を見せよ!!」
『『『うおおおおぉぉぉ!!!』』』
轟くマコウカブト達の羽の音……こうして俺達は雄のマコウカブト60匹を引き連れてマジンクワガタ達の元へと向かうのだった。
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クロガネ率いる60匹のマコウカブトとライ、シノブそしてミロスさんが着いて来ている。
ミロスさんはマコウカブトの里に待ってる様に言ったのだが……
「是非、この戦い立ち会わせて貰いたい……武人として、魔族として最後まで見届けたい」
と真剣な表情で言われてしまったので、シノブから離れない事を条件に了承した。
ヨミとユキはマコウカブトの里で戦えない雌と子供達を守って貰っている。
ヨミは能力の制御は人の姿になって出来るようになったが万が一が有るので残ることにしようだった。
因みにくま吉も今回は里でお留守番である。
「マヒト殿……もうすぐ、親父が倒れた広場に着く」
「分かった」
クロガネからそう言われてすぐ、昨日マコウカブトの長と話した広場へと辿り着いた。
マコウカブト達は横へと整列していく。
その真ん中に俺達は立っている、視線の先には他のマジンクワガタよりも禍々しい魔力を纏う一回り大きいマジンクワガタが居た。
並ぶマジンクワガタ達も魔力を纏っており、尚且つ此方よりも数が多い……居るのは雄のみだ。
「アレがマジンクワガタの長の息子か?」
「ええ、予定通り奴は俺がやります」
「私達は周りが茶々を入れないようにするよ……クロガネくん、任せたからね」
「ライ嬢、マヒト殿、行ってくる」
クロガネはそう言うと、一人前へと出ていく。
そして、姿が変わっても奴もクロガネが分かるらしく前に出てきた。
『マコウカブトの長の息子! 随分と貧相な風体に成ったものだなぁ!!』
「黙れ、俺にはクロガネと言う主君より賜った名が有る……貴様はどうだ? “マジンクワガタの長の息子”よ?」
『……!? き、貴様如きが俺を見下すなああぁぁぁ!!!』
怒号を上げるマジンクワガタは巨大な顎を上げて、周りのマジンクワガタに命令を下す。
『蹂躙しろ!! 憎きマコウカブトと目障りな存在を始末しろ!!』
『『『ウオオオオオ!』』』
クロガネも負けじと号令を出す。
「マコウカブトの角は折れぬ!! 皆、我につづけぇぇぇぇ!!」
『『『うおおおおおお!!』』』
両種族が互いにぶつかり合う、その真ん中に次第に空間が空いていく。
その間に、此方にもマジンクワガタ達が攻めてきていた……うん、飛ぶのって面倒!
ライも元の姿に戻れば飛べるが、現状に置いては不便なだけだ……その為、そのまま迎撃する。
『コロスコロス』
「生憎、君如きが束に成っても私には勝てないよ……“ライトニングモード”!!」
ミロスさんを倒した帯電状態で迫ってくるマジンクワガタ三体を瞬く間に無力化してしまう。
流石はライだ……と気を反らした隙にマジンクワガタが一匹迫ってきている。
俺は直感を信じて咄嗟に避ける、それと同時に身体強化、超感覚、高速化、帯電の四つを使う……使う? 直感的に使用法が分かる……これは恐らくシンクロの力のようだ。
「甘くみるな! “放電”!」
『カガ!?』
「ええ、私の技!?」
「どうやらシンクロの力らしい……けど、いまので結構消耗したみたいだ」
俺の言葉にライは「了解」と表情を引き締める。
「もう、マヒト君には近付かせないよ!」
ライはそう言うと、迫ってきたマジンクワガタを物凄い速度で蹂躙し始めた。
場所は少し変わって、ミロスとシノブも囲まれて居た。
マジンクワガタが高速で突撃してくる中、シノブが動こうとする前にミロスが身体強化の魔法を使い大盾でマジンクワガタを受け止めた。
『!?』
「魔族の戦士をなめるな!!」
「驚愕……強い」
ミロスは受け止めたマジンクワガタを身体強化魔法で強化した膂力で地面に叩き付ける。
マジンクワガタは気を失ったのかそのまま動かなくなる。
「同胞達の無念を晴らさせて貰う!!」
「……油断大敵」
「!!」
マジンクワガタを倒したミロスに飛び掛かっていて他のマジンクワガタをシノブが仕留める……当然殺してはいない。
「すまないシノブ殿……」
「良い……それより見事だった」
シノブはそう一言言うと、マジンクワガタへと向かっていく。
そんなシノブに続きミロスも戦いに戻るのだった。
周りの戦況を見渡しながら、マジンクワガタは怒りを募らせていた。
『何故だ! 我等は貴様等よりも強く、強大な魔力を得た筈だ! それなのに何故圧されている!? 奴等は何者だ!?』
「お前が契約した偽者の王と違う真の虫の王……そして、その忠臣達だ」
『認めぬ! 認められるものか!!!』
マジンクワガタは魔力を高め、クロガネへと必殺の突進を仕掛ける。
しかし、クロガネはその突進を真っ正面から受け止める。
凄まじい衝撃にクロガネの足元が深く抉れるが……クロガネはマジンクワガタの突進を完全に止めて見せた。
『な!?』
「鈍った物だな……かつてのお前の顎の強靭さはこんな物では無かった……うおぉぉぉ!」
『ぬぅ!?』
マジンクワガタを受け止めたクロガネは全身の筋肉を使い、マジンクワガタの巨体を投げた。
マジンクワガタはその怪力に驚きながらも空中で体勢を整える。
『……』
「どうした? 腰が引けているぞ、お前も長の息子なら……かかってこい」
『……くそっ、俺を見下すな……俺を……舐めるなああぁぁぁあ!!』
マジンクワガタは顎に魔力を纏わせる、マジンクワガタのマジンは魔刃である。
顎に魔力を纏わせて二本の刃へと変わる。
マジンクワガタは得意気な顔でクロガネを見据える。
『これこそが我等マジンクワガタの名前の由来となった秘技にして奥義……貴様如き貧相な体で到底受け止め切れぬわ!!』
「ごたくはいい……来い!」
『ふん、せいぜいあの世で長と仲良くしているが良い! 死ねぇぇぇ!』
再び突進を仕掛けるマジンクワガタに、クロガネは眼を瞑る。
深く息を吐いて……両腕に漆黒の甲殻を手甲の様に出現させる。
そして、いままで無かったマコウカブトの角が額に伸びている。
マコウカブトの名前の由来は魔鋼鉄で有る、その性質は鋼鉄の中に凝縮された魔力を保有する鉱物……故に魔鉱物は魔道具の核に加工される。
ならばマコウカブトにその性質が有るのか? 無論有る、彼等は自身に受けた衝撃を魔力に変え己が甲殻へと留める。
「マコウカブトが長……クロガネ、参る!」
奥義と奥義のぶつかり合い……いま、決戦の火蓋が落とされるのだった。
次回! 決戦! 決着! テンプレート!




