4 服作りを始めるようです
明日はゼンレスゾーンリリースです。エレン・ジョーが欲しいな……
魔法適正検査が終わり昼食を食べていると、織姫が一足早く食べ終わり。
そのまま、席を後にする。
「じゃあ、私はこのまま服作りを始めるから」
「了解、ベルーラさんには?」
「大丈夫、ちゃんと話し通してあるからさ……マヒトもまさもしっかりね? 優衣、二人を頼んだよ」
「うん! 織姫ちゃんも頑張ってね!」
「ん」
織姫は優衣の声援に一言で返すと、そのまま食堂を後にする。
そんな織姫を見送ると、俺はまさに視線を向ける。
「まさはこれからローレンスさんに鍛えて貰うんだろ?」
「ああ、そのつもりだけど」
「優衣はベルーラさんと魔法の勉強だろ?」
「真人くんはどうするつもりなの?」
「んー、そもそも旅立つタイミングをどうするかにもよるよなぁ」
俺の言葉に反応したのはまさだった。
「その事なんだが……まだ本決まりでは無いけど、装備の準備が出来次第行こうと思ってる」
「へー、本決まりじゃないって言うのは?」
「まだローレンスさん達に言ってないから……この後の訓練の時に聞いて見るつもりだ」
「ってなると、やっぱりスキルの把握かなぁ……只でさえ謎スキルだからなぁ」
「でしたら私が付き合って差し上げましょうか?」
俺達が今後の予定を話していると、何処からともなくレティア様が現れた。
「のあ!?」
「あ、レティアちゃん! こんにちは!」
「レティアさん、こんにちは」
驚く俺を余所に、優衣達は普通にレティア様とあいさつを交わしている。
本当に何処から現れたんだこのお姫様は?
「どのみちこの後は皆訓練所へと行くのでしょ? 私も同行者として訓練の様子を見させて欲しいの」
「そのついでに、俺のスキル把握に付き合ってくれると?」
「はい!」
「おれは問題ないよ」
「私も!」
「まあ、二人が良いなら……」
「じゃあ決まりですね!」
俺達が了承すると、レティア様は嬉しそうに頷く。
その後はレティア様も混ざって色々と話しながら昼食を食べるのだった。
そうやって話をしている内に昼食を食べ終わり、俺達は訓練所へと移動する。
訓練所に着くとそこには既にローレンスさんとベルーラさんが準備を済ませていた。
「おっ! マサヨシ、来たみたいだな?」
「待たせちゃったかな? ローレンス」
「いや、時間には間に合ってるんだ気にするな」
まさは直ぐにローレンスさんの元へと向かって行く。
次に優衣がベルーラさんの元へと向かう。
「ベルーラさん! 何かお手伝い出来る事は有りますか?」
「それでしたら、練習用の杖を選んでいて下さい……準備はもうすぐ終わりですから」
「分かりました!」
優衣もやる気充分な様子で並べられている杖を真剣に選び始める。
そんな二人の様子を見ていると、レティア様が俺の顔を覗き込んで来る。
「……な、何でしょうか?」
「いえ、私達はどうしますか?」
「んー、じゃあ適当に何か虫は居ませんか?」
レティア様は俺の言葉に考えるが、首を横に振ってしまう。
その様子に俺は「ですよねー」と返すが、突然兵士の一人が微妙な顔をして近付いてくる。
「ひ、姫様……頼まれていた物です」
「あら? 早かったですね……種類は?」
「一応、何種類かは揃えました」
「ありがとうございます……下がって良いですよ」
「はっ!」
何かしらやり取りをすると、兵士は訓練所から去っていった。
そして、持ってきた物を見てみると何やらモゾモゾ動いている……まさか?
「流石に城の中には居なかったので……兵士に頼んで捕まえて来て貰いました!」
「ど、道理で兵士の顔がひきつってると思った……兵士さんすいません……」
「あっ、後何が有るか分からないので私達の周りには結果が張って有ります」
「へー、レティア様は大丈夫なのか?」
「私はこれが有るので……」
俺の言葉にレティアは腰に提げている剣の柄をトントンと叩いた。
聞けばレティア様は凄く強いらしいのでもしもの時は頼らせて貰おう。
まあ、問題なしと言うことで最初の袋をあける。
「シャー!」
「おお!? 蜘蛛か? デカイな……タランチュラみたいだ」
「これはベアスパイダーですね、他の蜘蛛に比べて熊のように大きいと意味で付けられた蜘蛛です……分類は普通に蜘蛛だった筈です」
「分類?」
「中には何型の魔物って分類が有るんです……当然蜘蛛型の魔物も居ます」
「成る程」
再びベアスパイダーに視線を戻すと、何故かじっと見てくる。
そんなベアスパイダーに試しに「よろしく」と言ってみると突然踊り始めた……なにそれ蜘蛛の流行りなの?
「何か可愛いですね……これは使役してるのですか?」
「んー、違うみたいだどうやら使役出来ないみたいで……これは只の友好ダンスの様だ」
「き、き、キシァー!!」
「何かノッて来てるし……なぁ、俺はお前を使役出来ないのか?」
俺の言葉に頭を傾げるベアスパイダー、暫くすると頭を横に振る。
つまり、使役出来ない……とでもどうやら力を感じて懐いてる? 状態の様だが使役の条件が分からん。
気を取り直して次の袋を開く。
すると、勢いよくこちらに向かって何かが飛び出してきた。
「な、何だ!? バッタか?」
「話をすればですね……バッタ型魔物のパワーグラスホッパーですね、強靭な脚に力を蓄えて高速で突進してきますわ……魔物ですので気を付けて」
「どうやらムシテイマーの力は作動してないらしい、じゃあムシテイマーは本当に虫しか使役できないらしいぞ」
「そうですか……ではさっさと倒しますか……」
「キシー!」
「あ! 危ないぞ!」
俺の言葉にレティアが剣を抜こうとすると、ベアスパイダーがパワーグラスホッパーに飛び掛かった。
どうやら俺達を助ける為に動いたみたいだ。
パワーグラスホッパーに飛び掛かったベアスパイダーは素早くパワーグラスホッパーの脚を糸で絡めとり、動けなくした後、パワーグラスホッパーの上で勝利のポーズを取っている。
「おお! 凄いぞクマ吉」
「ええ! 素晴らしい手際でしたわ!」
「きし、キシー!」
「それと、クマ吉ってなんですの?」
「何か懐かれてるしベアスパイダーは長いからクマ吉だ暫く俺の警護にするつもりだ」
「そうですか、では城の者達やお父様には言っておきますね……人は襲ったりしませんよね?」
「しないよな? クマ吉」
「きし~」
レティアの質問に俺はクマ吉に確認すると、クマ吉は器用に脚を使って「おそわないよ!」と意志表示をしてくる……うむ、可愛い奴め撫でてやろう!
「しゅ~」
「おお!? 何だこれ!? フカフカじゃないか!」
「どれどれ? あら? 本当に良い触り心地ですね……ふふ、よろしくお願いいたしますねクマ吉」
「ふしゅ~」
撫でられて気持ち良さそうにしているクマ吉を退けてパワーグラスホッパーに止めを指して貰う。
レティアは俺の考えがわかったみたいで剣を抜いてパワーグラスホッパーに止めを差した。
パワーグラスホッパーの死骸はそのまま兵士達が引き取って行った……お疲れ様です!
因みに他の袋の虫達は何の変化も見られずクマ吉のご飯になった哀れ。
「わかった事は、一定以上の知能を持って居る虫は懐く事、虫型の魔物は対象外、後はんー何か懐いてるクマ吉とは繋がってる感じがする」
「それはおそらくテイマーの力ですね。テイマーは使役した動物や魔物の力で強くなるので、その能力が出ているのだと思いますわ」
「んー使役してる訳じゃ無いけどな」
「しゅ?」
「肝心な使役の条件が分からんからなぁ」
「もしかしたら、もっと凄い虫じゃないとダメだったり?」
「まっさかー」
そんな感じでスキル確認は終わりを迎えたのだった。
訓練所を後にして夕食を食べる為に、俺達は食堂へと移動した。
料理を貰い席に移動する。
ちなみにクマ吉は俺と一緒に居る。
「クマ吉良かったな! 干し肉貰えて」
「きしゅ~」
「お、おばちゃんは肝が座ってるな……普通びびると思うけど……」
「そうかな? クマ吉くんは可愛いよ? フカフカだし」
まさは少しびびって居るが優衣は平気そうにクマ吉の背中を撫でてる。
そんなやり取りをしていると、突然織姫が走って来た。
「ね、ねえ! そのベアスパイダー見せて!」
「別に良いけどどうしたんだ?」
「実はさ、物が無くて買えなかった物が有るんだそれがさ……その……ベアスパイダー稀少種の糸なんだ」
「き、稀少種って……流石に兵士が無造作に捕まえた奴だから期待は薄いぞ」
「それにどうやって見分けるの?」
「見分けるのは大丈夫、裏返してお腹が白かったら稀少種のホワイトラインって教えて貰ったから」
織姫はそう言いながらクマ吉を優しく抱き上げてひっくり返す。
そして、そのお腹には白いフサフサの毛が生えていた。
「嘘? 本当に!?」
「えっ、マジで! すげぇ偶然だな!」
「真人君! この子糸貰える!?」
「だったら俺じゃ無くてそいつに頼めよ……名前はクマ吉な」
「クマ吉……君の糸がどうしても欲しいのお願い」
「きしゅっ」
クマ吉が両前足を上げて跳ねている。
困った様子の織姫に俺は意味ありげに笑うと、織姫に言ってやる。
「良いってさ、良かったな織姫」
「……ありがとうクマ吉、今度何かあげるね」
「しゅー」
織姫の問題も解決し、今日はもう休むことになったのだった。
相棒のクマ吉……そして、作者は蜘蛛が苦手……助けて! クマ吉!