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ムシテイマー~役目も無いので虫達と自由に暮らす事にしました~  作者: SUZUKING
第一章 想いは遥か遠くより君に……

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43 新たなスキルと家臣と眷属

ゼンゼロ、もうすぐ新バージョンですね

 少しして、ユキから料理の出来上がりを告げられシノブが戻ってきた。

 ミロスさんはユキを手伝って居たらしく夕飯の準備をしていた。


「遠征で暖かいご飯が食べれるのは良いことだね……」

「同感です、ライ達が空間魔法が使えて助かります」


 ミロスさんと二人でそう言いながら夕飯を食べ終る……因みにハンバーガーだった……ユキのレパートリーはそこが知れないな。

 夕飯を食べ終わり、集まった俺達の話題は新たなスキルとライ達が家臣になった事だ。


「取り敢えず新しいスキル“シンクロ”だな……ハッキリ言うと何も分からん、何か変わったようすは無いが一つだけ面白いのがある」

「面白いのかい?」

『ライ、聞こえるか?』

「うえ!?」


 俺の声にライだけが驚いた様に周りを見渡す。

 しかし、ライ以外の四人の家臣達は不思議そうにライを見てるだけだ。


「どうしたのぉ? 急に変な声を出してぇ?」

「ええ!? 聞こえなかったのかい? 今、マヒトくんの声が……」

「……? ライ御姉様、マヒト御兄様は何も言ってませんわ」

「ええ? そんな筈は……」

『ライ、驚いたか?』

「ほら!?」


 混乱しているライを横目に全員にネタバラシをする。


「これが“シンクロ”を手に入れた時に同時に覚えた“念話テレパシー”だ」

「むー、ここぞとばかりに私をからかって!」

「だが……便利だ」

「ああ、特にシノブは単独行動が多くなるからな……連絡が取れるのはデカイ」


 ふくれてるライを置いておき、“念話”の有用性を話し合う。

 そして、話しは家臣の話へと移っていく。


「それで、各々家臣となった感想をどうぞ」

「んー、何時もと変わらないかな?」

「そうですわね……眷属と言ってもピンと来ませんわ?」

「それにぃ、眷属は同じ様な種族で無いとぉ従えない見たいねぇ」


 ユキの言葉に俺はライに視線を向ける。

 すると、ライも頷くので詳しく話を聞く。


「ユキ、そのまま詳しく教えてくれ」

「ええ、ここに居るマコウカブト達にぃ協力して貰って試して見たのぉ」

「その際には私とヨミも試して見たよ」

「そうか、結果は?」


 俺がそう言うと、三人は揃って首を横に振る。

 しかし、それに関しては想像が着くことだと思う……流石に蜘蛛やトンボがカブトムシを従えるのはおかしいからな。


「……まあ、当然の様に無理だったね」

「それでぇ、彼等はマヒトちゃんが良ければクロちゃんのぉ眷属に成りたいらしいのぉ」

「……クロガネ、お前はどうしたい?」


 黙って話を聞いていたクロガネにそう問いかける。

 状況から見て、マコウカブト達を眷属に出来るのはクロガネしか居ない。

 クロガネは真っ直ぐ俺と視線を合わせる。


「それが仲間達を守る事に繋がるのなら……是非とも眷属にさせて貰いたい」

「よし、決まりだな……ライやり方は分かるんだな?」

「バッチリだよ! 家臣になった時に眷属にする方法も理解したからね」


 ライはそう言うと、周りに居るマコウカブト達に声を掛ける。

 そして、ぞろぞろと集まって来たマコウカブト達の前にクロガネが立った。


「いま、我等が王より許しを得た! これより眷属の義を行う!」

『『『うおおおおぉぉぉ!!!』』』

「な、何か俺には聞こえないけど凄い事が起きてる気がする」

「ええ、ミロスさんは立会人として見てて下さい」


 緊張した表情のミロスさんに、軽く声を掛けて視線をクロガネ達に戻す。

 100匹近いカブトムシ達が羽を羽ばたかせて興奮しているのが分かる。

 クロガネがマコウカブト達を見渡し儀式が始まった。


「我等が“心は一つ”」

『『『心は一つ』』』

「我等が“王は一人”」

『『『王は一人』』』

「いま、クロガネの名を持って“マコウカブト”を眷属とする!!」

『しかと、承りました』


 クロガネの宣告を一番永く生きたマコウカブトが了承したことで眷属の契約が交わされた。

 すると、マコウカブト達が淡く輝き……輝きが収まるとマコウカブト達は一回り大きく成っていた。


「これで契約は終了かな?」

「ああ、これからはマコウカブト一族一同誠心誠意マヒト殿に仕えさせて貰う……よろしく頼む」

『我々からも重ねてお願いいたしますマヒト殿』

「勿論、これから先頼りにさせて貰うよ」


 長命のマコウカブトの角を軽く叩いて見せると、朗らかに長命のマコウカブトが頷いてくれる。

 さて、取り敢えずスキルや家臣の話しは終わったここからが本題だ。


「シノブ……」

「……儀式の合間に一通り見て来た……奴らは余裕の表情で待ち構えている」

「あらら、ずいぶんと油断してくれてるみたいだねぇ」

「でも、問題は彼等をどの様に退かせるかですわよね?」


 ヨミの言う通り、出来る限りのマジンクワガタ達への被害は抑えたい……彼等の様子から長の息子以外のマジンクワガタ達は操られてる、または正気で無い可能性が高い。

 しかし、その場合の最適解は……


「……奴を……俺が叩きます……奴を倒す、少なくとも退かせれば奴に着いて他のマジンクワガタ達も引く筈です」

「それでも根本的な解決にはならないだろうな……」

「でも、時間は出来る……今回はそれで行くしか無いね」


 ライの言葉に俺達は頷く。

 方向性は決まった、問題はどうやって奴とクロガネを一対一に持っていくかだ……


『ならば……露払いは我々にお任せ下され! 眷属と成って初めての戦、必ずや成果を挙げて見せましょう』

『『『おう!!!』』』

「クロガネ……」

「マヒト殿……俺からも頼みたい」


 クロガネの言葉に俺を頷いて見せる。

 それを見てクロガネはマコウカブト達へと声を上げる。


「我等が王の許しは得た……皆の者これからの戦いに備えよ!!」

『『『は!』』』


 クロガネの言葉に返事を返すとマコウカブト達は各々が木々の元へと集まっていく。

 そして、木に付いている魔鋼鉄を齧り始めた。

 魔鋼鉄を齧った個体に少しずつ魔力が溜まり発光し始めた。


「マヒト殿、この戦いの準備には一晩掛かりますので開戦は明日の朝にしましょう」

「……わかった、不意打ちの可能性は?」

「奴は陰湿な手は好みませんが……シノブ殿ならば警戒も容易いのでは?」

「……了解……」


 クロガネの言葉にシノブは頷き姿を消す。

 こうして着々と戦いの準備は進むのだった。




 ────────────────────




 辺りはすっかり暗くなり、ユキ特製のスープを飲み終わった俺はクロガネの元へと来ていた。

 クロガネ自身も人の姿のままだが、魔鋼鉄から魔力を受け取っているようだ。


「マコウカブトの戦いの準備には魔鋼鉄が不可欠なのか?」

「いや、恐らくライ殿やユキ殿の高濃度の魔力ならば代替えは可能だと思うが」

「……クロガネ、全力でやってやれ……俺達はお前が帰ってくる場所を守る」


 俺の言葉にクロガネは作業の手を止める。

 そんなクロガネを気にせず、俺は言葉を続ける。


「因縁も、長の願いも、全てをぶつけてこい……今回がダメでも、機会はきっと有る……だから、気楽に行ってこい」

「……ああ、任せてくれマヒト殿……勝って帰ってくる」


 クロガネはそう言って、腕を出してくる。

 疑問に思って見ていると、クロガネが気恥ずかしそうに言う。


「マコウカブトが約束する時に互いの角を合わせるんだ……今の俺には角は無いから腕で……」

「成る程……じゃあ、ほら」


 俺とクロガネは腕を重ねて、約束を交わす。


「おーい、マヒトくーん」

「あ、ライが呼んでるな……それじゃあ明日な」

「ああ」


 一人残されたクロガネは、自身の腕を掲げて一人呟くのだった。


「勝利を我が王に……」


 その誓いの言葉は、暗闇の中に溶けて消えてしまったが……一人闘士の魂は何時になく熱く燃え上がっていた。

 迫る戦いを待ち望むかのように……

次回 いざ、開戦の時!

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