3 顔合わせの時間と魔法適性
マリルイRPGの新作が11月に出るらしいですね。買います
俺達はアンナさんの案内の元、広々とした部屋へと案内された。
そこには、この国のお姫様のレティア様と見知らぬ赤髪のイケメンが居た。
「あれ? レティア様、なんで此処に? と言うか隣の方は彼氏?」
「マヒトさん? 言って良いことと悪いことがあるわよ?」
興味本位で聞いたら、物凄い殺気だ……どうやら彼氏では無いらしい。
当のイケメンは大爆笑しているが……
「だっはっは! ゴホゴホ! ひーひーしぬぅ!」
にしても笑いすぎである。
笑っていたイケメンが落ち着くと自己紹介に入る。
「んん、失礼した……まあ、堅苦しいのは無しにして、俺はローレンス・イゴールだ! よろしくな!」
「皆様御存知でしょうけど、私はレティア・ワームルスです。私達二人がお父様より頼まれてマサヨシ様達の旅に同行させて頂きますわ」
「え!? レティア様が一緒に来られるのですか!?」
「ふふっ、ユイさんこれからはレティアと呼んでいいのよ? これから一緒に旅をするのですもの敬語もやめて?」
「え? んーわかった、よろしくねレティアちゃん!」
「ええ! こちらこそ……オリヒメさんもね?」
「ええ、よろしくレティアさん」
突然の展開には驚いたものの、コミュニケーションお化けの優衣は直ぐ様レティア様と仲良くなっている。
レティア様をちゃん付けとは流石だ。
織姫も返事返した辺り大丈夫そうだ。
そして、まさはまさで何やらローレンスと向かい合っていた。
「よろしくお願いします。ローレンスさん」
「おいおい、此方も固くならずに行こうぜ? 武器選びの様子は此処に来る時にチラッと見えたよ……良い剣筋だったぜ」
「ありがとう、じゃあ一個頼んでも良いかな?」
「何だ?」
「出来れば戦い方を教えて欲しい……俺には守りたい物が有るんだ」
「ほう、良い目だな……良いぜ、みっちりしごいてやる」
「ああ、よろしく」
どうやらまさ方も問題無さそうだ。
何の問題も起きずに顔合わせが終わるかに思われた時だった。
突然、扉が勢いよく開くとそこから見るからにゴテゴテのバカ貴族の風貌の金髪の容姿の良い男女が入ってきた。
「邪魔するよ! その話しは少し待ってくれないかい!」
「そうですわ! 大体、私達は納得していませんことよ!」
「え? 誰?」
「「な!?」」
突然乱入してきた二人は俺の言葉に信じられないと言う表情をする。
そして、肩を竦めると馬鹿にしたように話し出す。
「やれやれ、これだからムシテイマー等と言うハズレスキルの持ち主は……良いだろう、無知な君のために名を名乗ろうか……」
「お願いしゃーす」
「ぐっ、何と言う……ま、まあ良い、聞いて驚きたまえ僕はオルディン・オルコット! 古くよりワームルス王国を支えるオルコット家の長男にして、時期当主である!」
「そーして、私が同じくワームルス王国を支え続けてきたメルゴール家の一人娘! ヘルメス・メルゴールですわー!」
「アンナさん、今日の晩御飯は?」
「いや! 聞きたまえよ!」
「今日はビーフシチューと聞きました」
「貴女も平然と応えるなですわー!」
俺の態度に怒りをあらわにする二人。
因みに俺の友人達は一人はあわあわし、一人は苦笑い、一人は呆れた顔をしていた。
「まあまあ、落ち着けよおでん」
「オルディンだ! くっ、貴様……此処までこけにされたのは初めてだ」
「く、くふふ、お、落ち着けって、おで……オルディン殿」
ますます、怒るおでん……もといオルディンに笑いを堪えて苦しそうなローレンスが仲裁に入る。
そんなローレンスをオルディンは睨む。
「そこの凡夫の事はこの際どうでも良い、ローレンス……君に僕達の方が相応しい事を示しに来たのだよ」
「ほう、温室育ちの坊っちゃんがねぇ」
ローレンスのお陰でオルディンの怒りの矛先が俺から外れた。
しかし、それと同時にローレンスは完全にオルディンをおちょくっている。
「き、貴様! 言わせておけば」
オルディンが挑発に完全に乗った。
そして、同時にオルディンは腰に提げていた剣を引き抜いた。
それを見て、ニヤリと笑うローレンス。
「アンナさん」
「何でしょうかマヒト様」
「オルディンとか言う奴強いのか?」
「ええ、その辺り騎士位なら容易く抑えれると思います」
なんと! それは驚きだとてもそうは見えないが……
「……ですが、ローレンス様は騎士団長でも勝てないレベルです」
「え?」
ガキィィン!!
響く金属音に視線を戻すと、信じられないと言う表情のオルディンと驚きに口を抑えるヘルメス。
それと対照的に、つまらなそうな顔のローレンスと眠そうなレティア様が居た……あっこら、お姫様があくびするんじゃありません。
視線を二人に戻すと、オルディンの手に有った剣が無くなっている。
どうやら、少し目を離した隙に終わっていたらしい。
「はぁ、大口を叩くからどんなものかと思えば……拍子抜けだぜ」
「な、何かの間違いだ……こ、こんな、こんな……」
「実力の差もハッキリしましたし、お帰り頂けますか? オルディン様?」
最後にレティアからハッキリと帰れと言われたオルディンは屈辱の表情を浮かべるとそのまま部屋から出ていく。
「あ、お、お待ちになって! オルディンさまー!」
オルディンに着いてきていたヘルメスも後を追って部屋を出ていく。
暫く、沈黙が続くがレティア様が明るく声を掛ける。
「さあ、無事に顔合わせも終了ですので! 皆様、夕食へと参りましょうか」
「まあ、そうだな……取り敢えず当日はよろしくな」
「ああ、こちらこそ」
ローレンスとまさは改めて握手を交わす。
「ローレンス様、少々お待ち下さい」
「何ですか、アンナさ……ん……」
ふと、変わらぬ口調でローレンスを呼び止めるアンナさん。
そして、その手にはオルディンが持っていたと思わしき剣が……何処へ行ったと思ったら。
「お時間……頂けますね?」
「マサヨシ……わりぃ、俺死んだ」
その後、ローレンスがどうなったかは知らないがアンナさんが何者なのか謎は深まった。
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顔合わせの翌日、予定通り魔法適性検査とやらするらしく、ベルーラさんの前にある机に見覚えの無い丸い石が置いてある。
「何かしらあれ?」
「オリヒメさん、あれは魔力の性質を調べる石なのよ……確か、〈魔晶石〉……だったかな?」
そして、平然とこの場にレティア様……既に馴染みきっている。
織姫はさして気にもしてないようで「ありがと」と教えてくれたことに礼を言ってるし。
「今日は予告通り魔法適性検査をします。レティア姫様にはお手伝いを頼みました」
「はい、頼まれました」
「どうやって検査をするんですか?」
「それを今からレティア姫様に見せて貰います……では、お願いしますね」
レティア様はベルーラさんの言葉に頷き、魔晶石に手をかざす。
すると、魔晶石の色が徐々に変化していく。
そして、暫くすると魔晶石の色が完全に代わり、青と緑が混ざること無くグルグル回っている。
「この反応が魔法適性反応です。レティア姫様の場合は水と風が適性魔法ですね」
「基本的には四大属性である火、水、風、土そして闇と光属性が適性反応で確認出来るわ」
「それでは始めて行きましょうか……それではマサヨシ様から」
名前を呼ばれてまさが魔晶石に近付き、手を乗せる。
すると、魔晶石の色が変わり……最終的に赤、青、緑、黄色の色がグルグル回っている……と言うことは。
「流石ですね……マサヨシ様は四大属性全てに適性が有るみたいです」
「おお、流石は勇者だな! まさ!」
「茶化さないでくれよ、真人」
まさと入れ替わりで次は優衣が魔晶石に手を置く。
再び魔晶石の色が変わり、まさと同じく四色に変わった後に眩しく光始めた。
「わわ!? な、何これ~!?」
「ユイ様、落ち着いて下さい……この反応はユイ様は四大属性に加えて光魔法の適性が有るようですね」
「おー、流石は聖女様だな」
「うー、何か恥ずかしい様な嬉しい様な」
「今度は私ね」
次は織姫が魔晶石に手を置く。
すると、他二人と同様に四色が浮かぶ。
これで三人は四大属性の適性が有ることが分かった。
「まさか、此処まで漏れずに四大属性の全てと適性があるとは……」
「俺、プレッシャー凄い……」
「待って下さい、オリヒメさんの変化はまだ続くみたいですよ」
三人が揃って三大属性の適性を出した事で俺はちょっと緊張してしまう。
しかし、考えても仕方いないので大人しく織姫の検査を見届けよう。
レティアの言葉通り、オリヒメが手を置いている魔晶石は光の適性を表す光を発した後……黒いもやが光を飲み込んで真っ黒になってしまった。
「こ、これは……まさか、六属性適性何て初めて見ました」
「えっと……さ、これって凄いの?」
「オリヒメさん、かなり凄い事よ? 普通は四大属性の適性ですら稀なのに六属性ですもの」
「ん、そっか」
織姫はいまいちピンと来てないのか、微妙な反応だ。
しかし、織姫を気にしてばかりも居られない……三人の適性検査は今の所素晴らしいと言って良いだろう。
最後に俺が魔晶石の前に立って、そっとその上に手を置く。
すると、魔晶石は反応示して……示して……一向に何も出ない、四大属性も光と闇の反応も何も起きない。
しかし、反応してない訳では無いようでうっすらと輝いて居る。
「……???」
「……な、何故でしょうか? 普通なら微量でも何かしら反応がある筈なのに……これはどういう?」
「も、もしかして真人くんに魔法の適性が無いって事かな?」
「ユイさん、完全に適性が無いのはあり得ない筈なのよ」
「え?」
レティアは優衣の言葉に首を横に振る。
レティアの言葉の説明をベルーラさんが引き継ぐ。
「そもそも、魔法適正検査は魔力が変換されやすい属性を調べる物です……」
「変換されやすい属性?」
「そうですね……仮に魔力が水だとしましょう、この水は特殊な水で相性の良い色のインクならばその色に綺麗に染まります。しかし、相性の悪いインクでは色が着きにくいのです」
「……それだとおかしいわね?」
「ええ、マヒト様の場合水が合るにも関わらず何色も出ないのはあり得ないのですよ」
ベルーラさんの説明を聞けば相性が悪くても色が着きにくいだけで色が弾かれる事はないって話しだ。
しかし、俺の結果は完全な透明だった。
「マヒト様、悲観すべき事ではありませんよ……魔力が有るのですから、もしかしたら魔法が使えるようになるかもしれませんから」
「うぅ、た、確かに……くそー、こうなったらムシテイマー共々とことん追究してやる!」
魔法が使えない可能性が大きいと言うことで、ショックを受けたがベルーラさんの言う通りもしかしたら此処から使えるようになるかもしれないよな!
そんな訳で、魔法適正検査は終わりを迎えたのだった。
魔法適正検査が終わり、レティアはベルーラに頼まれて魔晶石を片付けていた。
「マヒトさんの結果は不思議でしたわね……少数ですが魔力を持たない人は居ますがその人達はそもそも魔晶石が反応しませんし」
真人の検査結果を不思議に思いつつ、片付ける為に魔晶石を持ち上げた時だった。
パァン!
「ふえ!?」
持ち上げた魔晶石が粉々に弾けたのだった。
「な、何事ですか……! レティア姫様!? お怪我はありませんか!?」
「だ、大丈夫ですわ……ですが、魔晶石が持ち上げただけで……」
「もしかして、砕けたのですか?」
「ベルーラさん、これは……」
「……」
レティアの問いかけにベルーラは難しい顔で何かを考えている。
そして、考えが纏まったのかベルーラはおもむろに話し始めた。
「魔晶石が砕ける可能性は有るが砕けることはほぼ不可能に近い、それは魔晶石が砕ける条件を充たす事が不可能に近いからです」
「砕ける条件……一体それは?」
「……魔晶石の容量の限界を超える魔力を注ぐ事です」
「……!? そ、それは!」
ベルーラの言葉にレティアは目を見開く、それはとても信じられないと言わんばかりである。
そんなレティアにベルーラは頷くと話しを続ける。
「魔晶石の容量を超える魔力を注ぐのであれば、一般人なら千人、魔法師でなら百人、上級魔法師でも五十人は必要です」
「も、もしかしたら、マサヨシさん達の検査で劣化していたとか……」
「無い……でしょうね。純度の高い物を使いましたからマヒト様がやる時には魔力残りも無かった筈です」
「それでも砕けた……」
レティアの呟きにベルーラは更に思案顔になる。
「ベルーラさん?」
「もしも、この仮説が正しいとしたら……レティア姫様はわらいますか?」
「それは聞かないことには分かりませんね」
「では、聞いて下さい……マヒト様の検査結果は何色も浮かびませんでしたね?」
「ええ、しかし間違いなく反応はありました」
「もしも、もしもです……あの反応が属性すら異物として弾く程の純度の高い魔力の反応だとしたら?」
「……もし、それが本当だとするなら…………お父様は早とちりしたことになりますねぇ」
ベルーラの仮説にレティアは困ったな顔をしつつも、ベルーラの仮説が正しいだろう事を確信していた。
こんなやり取りが有った事は当の本人は知るよしも無かった。
次回! 服作り本格始動、マヒトの魔法訓練は上手く行くのか? 旅立ちまであともう少し