閑話 勇者達の旅4 手土産の意味
ゼンゼロ一周年むかえましたね
正義達を出迎えてくれた立派な角を生やした老婆はローレンスの手元の紙を確認すると四人を店へと招き入れた。
「どうぞ中へ……」
「お、お婆さんは魔族なんですか?」
優衣が思わずといったぐあいに老婆に聞くと、老婆は首を横に振った。
「いえいえ、ワシは魔族ではありませんよ……この角は魔力を蓄えて出来た角ではないですから」
「ま、まるで鬼の様ですね……」
正義の言葉に老婆は愉快そうに笑う。
「ほっほっほっ、まさしくワシは鬼族なんですじゃ、海の向こうの島に住む種族でのぉ」
「俺達は聞いた事無い種族だな」
ローレンスの言葉に老婆は頷く。
「ワシらはここサカエとしか交流をしておらんでの、お客さんらワームルスの人間は知らなくて当然ですじゃ」
老婆と話しているうちに、少し広い場所に着くとズラッと並んだ棚に多種多様のお酒が並んでいた。
老婆は改めて自己紹介を始めた。
「改めて、酒屋オニヨイ店主のウメと申しますじゃ」
「ローレンス・イゴールだ」
「レティア・ワームルスです」
「マサヨシ・クドウです、よろしくお願いします」
「ユイ・カワサキです、よろしくお願いします! ウメさん!」
自己紹介をすると、ウメは頷くと早速用件を聞く。
「今回はどのような物をお求めですかな?」
「国主殿に手土産を持っていくんだ、オニゴロシを一つ貰いたい」
「オニゴロシ? はて、うちにそんな酒はあったかのぉ?」
ローレンスの言葉を聞いて、ウメは分かりやすく惚けて見せる。
それにローレンスは首を傾げるが……正義と優衣の言葉に気が向く。
「……え? でも、これに鬼殺しって書いて有るよ?」
「ああ、確かに……ん? 待てよ、もしかしてこれ漢字なんじゃ……」
正義はウメの言葉に反応しなかった理由が分かった、この鬼殺しは漢字で書かれているためローレンス達は読めなかったのだと。
ウメは「なるほどのぉ」と頷くと、誰かを呼んでいるようだった。
「婆さん、何で有るのに無いなんて言ったんだ?」
「隠す理由でも有ったのかしら?」
ローレンスとレティアの質問に、ウメは頷く。
「これは一種の試験でな、読めない者には普通の鬼殺しを売って、読める者にはまた違う物をを渡す事になっているんじゃよ」
「そいうことやから、きぃわるくせんといてやぁ……変わりにお願い聞いてくれはったら鬼殺しより良い龍酔いの酒をあげたるからそれで堪忍してや」
ウメに呼ばれて来たのは、頭に木の枝の様な角を生やした着物姿の若い女性だった。
言葉使いが日本の関西弁に似ている様な気がするが、今大事なのはそれではない。
「何故……そんな客を選ぶような真似を?」
「信用できひん客に家のお酒を持たせてもうたら評価落とすんは私達なんよ? そんなん慎重になるに決まってはりますやん?」
「まあ、確かにそうだよねぇ」
関西弁の美女の言葉に優衣が納得と頷く。
そんな優衣を見て、美女はコロコロと笑うと四人に向き直る。
「私はオニヨイの支配人のキキョウと申しますさかいよろしゅうね?」
「支配人? 店主とは違うのか?」
「お店持ってるのが私で、ウメちゃんには諸々仕切って貰ってるんよ」
キキョウはローレンスの質問に答えながら、紙に何かを書いてる。
見たところ箇条書き幾つが文字が書かれている。
「はい、コレに書かれているものは全て近くのダンジョンで採れる物ばかりやから見張りに私が手配した者と説明すれば入れるやさかい頑張りやぁ」
「……? 何ですかコレ?」
「コレは竜酔いを作る材料、原則竜酔いの材料は買う人が調達してくる決まりなんやわぁ堪忍な?」
そう言われてしまえばやるしか無いだろう、正義達はダンジョン場所を細かく聞くと材料を集める為に出発した。
正義達を見送ったキキョウは少し困った顔をしていた。
正義達に黙っていた事が有ったからだ。
「ほんまに、あの方にも困りもんやわぁ……」
「ほっほっほっ、儂は国主殿に連絡をいれますのじゃ」
「珍しい物好きも大概して欲しいもんやわぁ」
呆れた言葉を発するキキョウは心配そうに、正義達が消えていった通路を眺めるのだった。
────────────────────
正義達がダンジョンへと付くと、門番にキキョウから貰ったメモを見せながら事情を説明する。
「キキョウ様から……分かった、ここを通ることを許可しよう」
「この先には、水龍様がお住まいになっている……この覚え書きに意味は無い」
門番の言葉にローレンスが首を傾げる。
「それじゃあこのメモは何の為に?」
「我々門番への暗号だ……竜酔いを渡すには水龍の試練を受ける必要が有るのだ」
「我等が主にお目通りするためにな……」
どうにも国主から情報を貰う話がかなり飛躍している様に感じる。
そう思いながらも、後戻りする訳にも行かないため正義達は水龍の試練を受ける事になるのだった。
ダンジョンの中は鍾乳洞型で、所々で水の音が響いて聞こえる。
そんな中を正義達は、ダンジョンに棲むモンスターと戦いながら進んでいた。
「ふんっ! 敵はリザードマンやサハギンが多いな……俺とレティアは問題ないが……」
「ヒト型のモンスターは少し手強いかしら?」
レティアとローレンスは各々5体づつ、軽く撃破してチラっと正義と優衣の様子を見る。
「正義くん! 光魔法で支援するよ! “ライトスピア”!」
「助かるよ川崎さん! はあ!」
正義と優衣の二人は、優衣の魔法で動きが鈍くなったモンスターを正義が手早く処理すると言う中々良いコンビネーションをしている。
二人の様子を見て、問題ないと確認したローレンスはその勢いのまま更に奥へと進んでいき……
「どうやらここが最深部みたいだな……」
「おお、凄い広い……湖?」
ダンジョンの最深部へとたどり着いたのだった。
『水龍の試練に挑む者も久しぶりですね』
そして、その湖から姿を現したのは……
「な、あれが……」
『期待外れで無いことを願います』
「……水龍」
美しい鱗を持つ、一匹の蒼い龍だった。
『さあ、全力で立ち向かって見せなさい』
水龍の試練が始まる。
次回! 魔王国ダクライト




