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ムシテイマー~役目も無いので虫達と自由に暮らす事にしました~  作者: SUZUKING
第一章 想いは遥か遠くより君に……

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34 突然ですが稽古の時間です!

ビビアン確保完了、ヒューゴ確保に備えるオーバー

 真人とライが離れた所で、武器の練習を始めたのを確認したマザーはライ以外の三人に稽古の内容を説明していた。


「貴方達は人の姿になって日が浅い……虫の姿とは勝手が違います」

「でもぉ、インビジブルリザードぉ? は倒せましたよぉ」

「所詮魔物は獣と変わりませんから……これから相手にするのは魔人族です……万が一にも敗北など有ってはならないのですよ」


 鋭く冷たい視線をするマザーに、思わずヨミとシノブが喉を鳴らした。

 ユキだけは表情を変える事は無い、姉と共に幾度となく稽古は受けて来た……これからはより一層強くなる必要が有る事も理解しているのだ。


「御母様……私からお願いできますか?」

「貴女は勤勉で努力家……そして、誰よりも大人ですものね」

「……いつかに今を奪われたく無いですもの」


 いつものおっとりとした口調を無くし、両手に鋏を持つ姿は普段よりも凛としている。

 ユキはお姉さんである、誰かを甘やかして、癒す、それは彼女の本心で有る。

 しかし、その誰かに自分は入っていない、だから自分を磨く時彼女は凛と立ち向かう。

 誰よりも自分に厳しい故に……そして、大切な人……ありのままの自分を受け入れてくれた人の為に、彼女は自分を磨くのだ。




 ヨミはいつも優しく、甘やかしてくれる姉の様な存在の背中を見ている。

 果敢にマザーへと攻撃をするが、マザーの持つ細剣……レイピアによって軽々と防がれてしまっていた。


「ここまでですね……ユキ、休んでいなさい慣れない身体で激しく動いたのですじっくりと身体を馴染ませなさい」

「はぁ……はぁ……は、はい、ありがとうございます」

「ヨミ……来なさい」

「……! は、はい! よろしくお願いいたしますわ」


 マザーから呼ばれて、遂に自分の番である。

 緊張しながらも、自信の武器である鎌を取り出して構える。

 即死の能力は発動させず、レイピアを構えるマザーへと斬りかかる。


「貴女はなんの為に、その鎌を振るうのです?」

「……無論、取り戻す為ですわ! 両親の、仲間達の鎌を、魂を……」

「ではその目的が果たされた時……貴女はどうするのですか?」


 マザーの言葉に、一瞬動きが鈍るがその目に迷いは無い。

 弾かれた鎌を構え直すと、ヨミは迷わず言う。


「わたくしの鎌は家族のために振るう物ですわ……喪った家族を弔ったのなら今共に有る家族を守る……御兄様も御姉様達も御母様も次いでにシノブもこれから増える同士達も……わたくしが守って見せますわ!」

「ふふ、よくぞ言いました……さあ、かかっていらっしゃい」


 マザーは満足そうに頷くと、レイピアを構えた。




 大鎌を弾かれて倒れるヨミを見て、戦慄するのはマザーの強さであった、

 シノブは自身よりも圧倒的に強いヨミとユキが易々と負けた事に驚いていた。


「ヨミちゃん……はい、お水よぉゆぅっくりのむのよぉ」

「はぁ……はぁ、あ、ありがほうございましゅ……お、おねえしゃま」

「ここまでね……ヨミ、ご苦労様です。貴女も休んでいなさい」


 マザーがヨミにそう言うと、視線をシノブに向けた。

 シノブは立ち上がると、臆することなくマザーの前へと向かう。


「シノブさん、初めまして……マザーと申します」

「シノブ……よろしく頼む」


 シノブは姿を消して、小振りのダガーを引き抜き、マザー死角から鋭く切り込む。

 しかし、マザーはまるで見えているかのようにシノブの一撃をひらりとかわす。


「貴方は何の為に、マヒトくんと共に行くのですか?」

「……いつか、一人の少女と笑い合うためだ……」


 マザーの問いに、シノブはナナシ村のルーシィを思い出す。


「だが、それだけじゃない……知りたいと思った……虫を仲間として共に歩む主の事を……」

「ならば精進なさいな、負けることも、死ぬ事もマヒトくんは容認しないでしょうから」


 マザーはシノブの心意を聞き、更に厳しく稽古をしていくのだった。




 しばらくの間、俺はライの指導の元短剣の訓練をしていた。

 ライが教えてくれたのは最低限の短剣での身の守り方だったが……手加減されているとは言えライの攻撃を受け続けていた為、疲労困憊だ。


「シュシュ?」

「ああ、心配してくれてありがとうくま吉……」


 くま吉が疲れた俺を心配してくれる。

 因みにくま吉はくま吉で、糸を使う技術をユキから教わっているみたいだ。

 お手製の罠を作ったりして居るのを訓練中に目撃してる……でもしっかり片付けている……偉いぞくま吉!


「さて、そろそろ私の番かな?」

「え? もうそんなに時間が経ったのか?」


 ライの言葉にマザー達の方を見てみると、ユキ、ヨミ、シノブの三人が息を切らせて居るのが分かった。

 特にシノブは完全に伸びてしまっている為、ユキとヨミが二人で離れた所へと運んでいる。


「あらら、手酷くやられちゃったみたいだねぇ……マヒトくんはシノブくん達の所に行っててよ」

「分かった」


 俺はライに言われた通りに、シノブ達の所へと向かってていく。

 俺がシノブ達の元に着いたのを確認してライは二振りの短剣を取り出してマザーと向かい合う。

 

「そう言えば……君とこうして手合せするのは随分と久しぶりだねぇ」

「そうですね……あれから暫く、貴女は腐って居ましたもの」


 いつの間にか張られた結界で中の会話は聞こえない。

 しかし、少しだけライの表情が曇ったのが少しだけ気掛かりだった。




 マザーからの言葉に少し顔に出ちゃったみたいだね……マヒトくんが少し心配そうにしてるのが見える。


「確かにマヒトくんに合うまでは怠惰に過ごして居たかもね」

「……貴女はどうするつもりなの?」


 敬語で無くなるマザーの口調、昔から親友だ……寧ろ敬語何てムズムズする。

 マザー言葉の心意は問わない……いや、聞きたくないだけかも知れない……きっと、マザーにはお見通しだろう。


「……どうするつもりだって? 私はただマヒトくんの為に……」

「過去から目を反らして、新しい主の為に心機一転と?」

「何が言いたいのかな?」


 マザーは悲しそうな瞳で私を見る。

 分かってる、でも今の私には……マヒトくんが居る。


「マヒトくんは彼とは違う……だから私はかつて“ライ”とは違う……」

「……! 貴女が“貴女”を否定してはダメよ……やはり何も分かってないのね」


 マザーの言葉に頭に少し血が昇るのが分かる。

 電気を身体に纏い、最高速の一撃をマザーにお見舞いする。


 ガギィィン


「何を知っている気でいるのさ? 私だって、悩んで、苦しんで、辛くて……寂しかった」

「だからと言って、過去を封じていては本当の意味で前に進む事は出来ないわ」


 マザーは私の攻撃を受けても、平然と返してくる。

 当然だ、あの頃から実力は並んでいた。

 それなのに……それなのに……なんで?


「はぁ、はぁ、はぁ……な、なんで?」

「確かに、過去に蓋をして目を反らして居れば心安らかに居られるでしょう……でも、かつての彼とマヒトくんでは違うことあるでしょ?」


 息の切れる私に、以前より全然弱い私を諭すようにマザーは言う。


「……マヒトくんは彼よりずっと弱いのよ……そして、それを守れるのは貴女達しか居ないのよ」

「……!? それは……」

「“ライ”、大丈夫よ……マヒトくんは過去の貴女を拒絶しないわ……絶対にね」


 マザー言葉に頭を殴られた様に感じた、過去の自分を吐き捨て弱くなった自分でマヒトくんを守れるのだろうか……


「マザー、今はまだムリ……でもきっと……話すよ、私の事も彼の事も……」

「……そう、たまには顔を見せに行きなさい……最近、行って無いでしょ」

「……そうだね、今回の仕事が終ったら行くよ……皆を連れてね」


 そこで全て話すよ、自分の弱さも過去も本当の意味でマヒトくんの仲間で有る為に……




 さっきまで嵐の様に激しかった攻防は成りを潜め。

 結界の中で感情的な表情をするライに若干の不安を抱いた。

 でも、何処か清々し表情をするライを見て俺も思わず頬が緩む。


「何の話をしていたかは分からないけど……俺は待つよ、ライ……君が本当の意味で歩み寄って来てくれるまで……」


 こうして、日が沈み始めた頃にマザーによる訓練は終了したのだった。

次回! 今度こそローレンス家族の出番!

エリック「弁明はあるかね?」

作者  「筆が乗って……反省はしている、後悔はしていない!」

エリック「ギルティ」

作者  「あと、出番の前に閑話を挟むかも」

エリック「ギルティフラッシュ」テッテレテレッテー

作者  「うわぁぁぁぁあ」チカッチカッ

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