33 淑女は根回しが早い
ゼンゼロバージョン1.7のストーリーが楽しみ。
ギルドでの用事が終わり、街では中々良さそうな本棚を見つけて購入し、俺達は家へと帰ってきた。
「あらぁ、お帰りなさぁい」
「お帰りなさいですわ!」
家へと入るとユキとヨミが二人で掃除をしていたようだった。
見た感じ一通り終わった後らしく、帰ってきた俺達を出迎えてくれる。
「ちょうどぉ、今からお昼を作ろうと思っていたのぉ」
「そうか、ちょうど良かった土産が有るぞ」
「あらぁ! 良いお肉ねぇ」
ユキにインビジブルリザードの肉を渡すと、目を輝かせるヨミにもお土産を渡す。
「ヨミにも本棚買って来といたから、シノブと一緒に部屋に置いて来い」
「あ、ありがとうですわ……シノブ、手伝って下さいませ」
「了解」
ヨミはシノブを伴って足早に自分の部屋へと向かって行った。
それを見送るとライと二人で無駄に豪勢なソファに腰を下ろす。
「おおぅ、凄い座り心地だな……」
「はぅ、私ここで全然寝れそうだよ」
それはもうフカフカでしたね、ライと二人でダメになっているとヨミ達が戻ってきた。
二人はダメになっている俺達を見ると、シノブは別のソファに座り想像以上のフカフカにダウン、ヨミはシノブを一瞥すると厨房へと行ってしまった。
「わたくしは御姉様をお手伝いしてきますわ……ご用意出来たら呼びますので御兄様達はここでおくつろぎなさって居て下さいませ」
「ああ、頼んだよヨミ」
俺はヨミを見送ると、そのままソファでくつろぎ続けるのだった。
────────────────────
場所は変わり、ワームルス城では諜報部隊と定期的に送られてくるローレンスの報告を見ながら渋い顔をする男が居た。
その傍らには、その男と良く似た青年も険しい表情で同じ報告書を見ている。
「父上、この情報が正しいのならドラゴニアに探りを入れる必要が有るかと……」
「ふむ、慎重に行動を起こす必要が有る……ローレンスからの報告に有る魔人族の動きも気になるしな」
しかし、それだけではない……国内での新たな王の気配、貴族達の不穏な動きなど考えなければ行けないことが山程有る。
そう考えて居ると、とある人物につけていた諜報員が戻ってきた。
「報告します。陛下の考察通りマヒト様が新たな王で有る可能性が高いと思われます」
「……確証は取れなかったのか?」
「いえ、その……彼方にも優秀な影が降りまして……」
諜報員は歯切れが悪そうにそう言う。
諜報員の言葉に男、エリオット王は驚きに目を見開く。
「バレたのか?」
「はい……しっかりと目が合いましたが見逃された様です」
「敵意は無いと……見て貰えたのか?」
話を聞いていた息子のライオットは肩をすくめる。
「陛下、この件は胸の内にしまいましょう」
「うむ、マヒト殿が自ら伝えてくれるのを待とう……幸い、クルーデンの者達を頼って居るみたいだしのぉ」
「私はかの影と話して見ます……もしもの時に備えて」
大まかな方針が決まると、諜報員は姿を消し、エリオット王は執務机に腰を下ろした。
「……色々と忙しくなりそうだな」
エリオット王はため息混じりに言うのだった。
エリオット王と別れた諜報員、名前はシャルドであり王直属の諜報部隊〈王影〉の部隊長で有る。
実力は高く隠密能力も高い、それゆえ驚愕したのだシノブと呼ばれる男に見つかった事に……
「……!?」
「来ると思っていた……」
シャルドは気配を感じて足を止める、そこに現れたのは真人の影たるシノブだった。
シャルドは警戒する、読まれていた事にも接触してきた事にも……
「昼食に間に合わない……簡潔に言う……協力はしてやる」
「何故? 一体どこまで聞いていた?」
「気付いていたのは俺だけじゃない……そして予測していたのは……ライ殿で俺じゃない」
ライと聞いて、真人と常に共に居る少女を思い出す。
そして意識をシノブに戻す。
「!?」
しかし、そこにはもうシノブの姿は無かった。
────────────────────
「おき……て……起きて下さいませ御兄様!」
「シュイ! シュイ!」
「は!?」
突然のヨミとくま吉の声で俺は慌てて起き上がる。
どうやらソファでダメになっている内に寝てしまって居たようだ。
「御兄様、昼食が出来ていましてよ?」
「シュー?」
「ああ、ありがとうヨミ……ライとシノブは?」
周りを見てみると、一緒にダメになっていた仲間二人が居ない。
ヨミはくま吉と顔を見合わせると「さあ?」と首を傾げているのでどうやらもっと前に二人は起きたらしい。
「二人はその内来ますわ……ユキ御姉様が待っていますから早く行きますわよ」
「はいはい、わかったから引っ張るなよ」
ヨミに引っ張られて食堂へと移動する。
すると、既にシノブとライは席について居るのに気付いた。
「あら? ライ御姉様とシノブも……既に来ていらしたのね」
「いやー、マヒトくんが余りにも気持ち良さそうに寝てたから起こせなかったんだ」
「同意」
何となくだが隠し事をされている気もするが、何か考えが有るのだろうから突っ込むのは辞めておく。
そして、視線を動かせば何故か居るマザー……ユキが自然にマザーにも配膳している辺り彼女に取っては予想の範囲内何だろう。
「えっと、それでマザーは何のご用意でしょうか?」
「ふふ、そんな身構え無くても大丈夫ですよ? 今回は報告ですので」
今回の昼食は、恐らくインビジブルリザードの肉を使ったと思われるスープと焼きたてのパンにサラダ……スープに入ってる肉をスプーンでほぐすとホロホロと崩れる……ナニコレ旨!
インビジブルリザードの肉は癖が少なく、スープに旨味がとけだしパンとも良く合う……流石はユキだな。
昼食を食べながらも、マザーの言葉に首を傾げる。
「報告?」
「ええ、今回の件で魔王に話を通しておきました……彼方に行ったら彼女が直々会いに来るそうです……ユキはまた腕を上げたわね」
「御母様のぅ、指導のおかげですわぁ」
へぇ、魔王って女性なんだ……じゃないよ!?
平然と言ってきたマザーに抗議の視線を向けるが、悠々と流されてしまう。
「はぁ、分かりました……明日は領主様に会いに行くので出発は明後日にする予定です」
「そうですか……では今日はここに泊まって領主様の所へ同行させて頂きます」
突然の申し出に俺は思わず「え?」と間抜けな声を上げる。
そんな俺をスルーしてマザーはライ達を見ると更に続ける。
「それに、ライも娘達も守る主君が出来たのですもの……より一層実力を上げねばなりません……食後の運動に久しぶりに稽古を付けて差し上げますわ勿論シノブ、貴方もです」
「あらぁ……シノブちゃん、おかわりは夜にした方が良いわねぇ食べ過ぎない方が良いわぁ」
「……了解」
「わ、わたくし、死なない様に頑張りますわ……」
マザーの言葉に各々反応している、ユキはシノブを気遣い、ヨミは顔を青くしている……どんだけ厳しいのマザー稽古……
そして、ライは俺を見ている……何だ?
「ライ、どうしたんだ?」
「んー、マヒトくん確か短剣を持っていたよね? 結構な業物をさ」
「ま、まさか……俺にもマザー稽古を受けろと……」
俺の言葉にライは首を横に振る。
「まさか! マヒトくんとお別れはやだよ……もう二度とね……」
「な、何だ違うのか」
最後の言葉は小さくて聞き取れなかったが、正直ホッとした……まだ死にたくないからな。
しかし、稽古参加が違うなら何なんだろうか?
「稽古に参加まではしなくて良いけど最低武器の使い方は知っといた方が良いと思ってね……私が手取り足取り教えてあげるよ!」
「そう言われて見れば……貰ってからろくに振ってないな、手入れは欠かさずしてるけど」
俺はそう思い、腰に差してあった短剣を引き抜く。
抜いた短剣は刃こぼれ一つしていない新品状態だ。
「分かった、ライよろしく」
「任せてよ、まあ本当は使わせないのが一番何だけどね……」
こうして突然だが、皆で訓練をすることになった。
昼食の後、俺達は中庭……かなり広いな……ここの手入れってユキが一人でしてるってマジ?
それは置いておき、マザーの稽古の為に広い中庭へと移動してきたのだ。
「流石の広さですね……ここを譲ってくれた方はここで昼寝をするのが日課だったそうです……」
「まぁ、ピクニックによさそうねぇ♪︎」
「良いですことシノブ? ユキ御姉様の雰囲気で勘違いしてはいけませんわ……ここから先は地獄ですわ」
「……倒してしまっても構わんのだろ?」
シノブ……それは死亡フラグだし、ユキも何でそのネタ知ってる……ああ、原因は俺か……
二人のやり取りに心の中でツッコミを入れつつ、ライと一緒に少し離れた場所に行く。
「私は順番が来るまでマヒトくん係だね!」
「ああ、よろしくライ先生」
俺の言葉にライは嬉しそうに頷くと、自身の武器を取り出して分かりやすく教えくれるのだった。
前回のあとがきでローレンスの家族が出てくるといったな? あれはうそだ……
作者「うわぁぁぁぁ……!」
次回 今度こそローレンスの家族が出ます!




