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ムシテイマー~役目も無いので虫達と自由に暮らす事にしました~  作者: SUZUKING
第一章 想いは遥か遠くより君に……

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32 職権乱用? ただの御願いです♪︎

トリガーも無事に確保……次はビビアン!

 ドリトンさんに言われて、アイナさんに連れられてきた解体用の倉庫には……満面の笑顔のギルネイさんがスタンバって居た……厳つい見た目なので笑顔のプレッシャーがスゴい。


「えっと、インビジブルリザードを渡しに来たんですけど……」

「フフフ……フフ」

「ぎ、ギルネイさん?」


 不穏な笑い声を出すギルネイさん、正直めっちゃ怖い。

 そして、ギルネイさんはパッとハイテンションで顔を上げる。


「待って居ましたとも!! さあ、見せて下さいインビジブルリザードを! さあ!」

「わ、分かりました」


 興奮気味なギルネイさんに急かされつつ、俺はインビジブルリザードを解体用の大きな台の上に出す。

 その巨体を見たギルネイさんは目を輝かせて解体用の道具を取り出す。


「素晴らしい! 鮮やかな緑、特殊な形のしっぽ、伸びる舌!」

「ギルネイさん、インビジブルリザードは珍しい魔物何ですか?」


 俺の質問に手を止めること無くギルネイさんは答えてくれる。


「そうですね、元々インビジブルリザードは南の地域に生息する魔物です……特殊な力を持つ皮で姿を隠し、狡猾で慎重な魔物です」

「居る筈の無い危険な魔物を魔人族が連れてきた」

「姿を隠し、気付かれず獲物を捕まえる……危険度は中級の中でも上位に入る魔物です……初級冒険者では手も足も出ない」


 ギルネイさんの言葉に、俺は少し暗い気持ちになる。

 奴等は俺を探していた、俺がクルーデンに来なければ……


「……マヒトくん? 今回の件に責任を感じる事はないよ」

「ライ……」

「魔人族は昔から自分達の勝手な思想のみを盲信してる……あれらやることに君が傷付く必要は一切ないよ!」

「そうですとも、少なくともあなた方がインビジブルリザードを倒してくれたからこそ……彼等の形見を取り戻す事が出来た……これは誇っていいことです」


 ギルネイさんはそう言うと、傍らの台に冒険者カードを置いた。

 その冒険者カードをアイナさんは大切そうに慎重に扱う。


「これで彼等の家族に……面目が立ちます、ありがとうございますマヒトくん」

「……っ」


 アイナさんの言葉に俺は何も返す事は出来なかった。




 ────────────────────




 時間は真人達が書店巡りをしていた頃ぐらいに戻り。

 美しい魔力の角を有する魔族が執務室でゆっくりとお茶を飲んでいた。

 優雅な所作でチョコケーキを口に入れて、温かい紅茶を飲む。

 それは魔王シエル・ダクライトとってドラゴニア帝国との問題で多忙な中での唯一の癒しだった。


「ふぅ、おいしい……」


 しかし、そんな癒しの時間を壊す様に慌ただしい足音がシエルの執務室へと近付いてくる。


「し、失礼します! 魔王様! 魔王様に通信結晶に通信が来ております!」


 入って来たのはローブを着た女性だった、見た目は人族に見えるが目に生気は無く、肌も不自然に白い。


「どうしたのマデリア 見た目から外出していたみたいだけれど」

「ええ、突然連絡が来て慌てて戻った次第でしてな」


 マデリアは一応男性の死霊の長リッチであるが、彼等ゴースト種の最近のトレンドで錬金術師達により作られた義体に入り、味覚等の感覚を持った状態で出掛けるのがブームなのである。

 因みに義体が女性型なのは、マデリア曰く「生前男だったから」らしい。

 また、ゴースト種に分類されるのは知性を完全に保有した者のみで、悪霊、怨霊、ゾンビ等は魔物として扱われる。

 そして、マデリアは特殊魔族としてダクライト国民になっているゴースト種、アンデット種を纏める者でも有る。


「それで? 誰からの通信?」

「と、取り敢えず出て下され」


 いつも冷静な重臣で有るマデリアがここまで動揺する相手……

 魔王は緊張に喉をならすと、通信結晶に魔力を注ぎ通信を繋いだ。


『ああ、やっと繋がりましたね……シエル様、お久しぶりです』

「……」


 通信が繋がり、浮かび上がった映像に映って居るのは一人貴婦人だった。

 しかし、その貴婦人には最近見覚えがあった……鼻歌混じりにご機嫌で出掛けた世界樹の管理者にそっくり……否! 本人である。


『シエル様? 淑女がその様なお顔を晒すべきではありませんわ』

「むぅ、管理者殿……いったい何の御用?」


 首を傾げるシエルに貴婦人……マザーは要件を告げる。


『近々、ダクライトに私の下の娘とその主が赴く予定です……恐らく旧友が乗せて行くと思うので結界魔法の揺らぎは気にしないで貰いたいのです』

「ダメ、せめて会わせては貰う……問題なければそのまま解放する……」

『仕方ありませんね……しかし、過度に干渉するのならその限りではありませんが……』


 了承の言葉の後に、空気が凍るような冷たい声で釘を刺される。

 ここまで来るとシエルの中では既にまだ見ぬ存在への興味が湧いてくる。


『一目見れば感じるものが有ると思いますが……くれぐれも私の言葉をお忘れ無き様に……お願いいたしますね?』

「……はい」


 シエルの言葉にマザーは頷くと通信を切った。

 その後、残されたシエルとマデリアは「ふぅー」と息を吐く。


「いやはや、マザーの娘か……あの女傑と番った雄蜘蛛はどれほど豪傑なのやら……」

「……マデリア、結界に異変が有ったら直ぐに知らせて」

「御意」


 シエルは直ぐにマデリアに指示を出す。

 マデリアは一言頷くと、シエルの執務室から飛び出していく。

 それを見送ったシエルは「ふぅ」と息を吐き、冷めきった紅茶を口にふくむ。


「……おいしい」


 シエルは口を綻ばせると、まだ見ぬ存在に思考を巡らせるのだった。




 ────────────────────




 時間は戻り、解体されたインビジブルリザードの素材が次々に台に置かれていく。


「これは舌、珍味として高値で取引されていますね、尻尾、肉も同じく食べれる部位として売ることが出来ます」

「肉は引き取ります、舌と尻尾は売ります……食べる勇気は無いので」

「わかりました」


 最初に説明されたのは食用の部位だが、肉以外は買い取って貰う事にした……コラそこ! 残念そうにしないのユキ!


「次は此方の皮に、骨ですね……」

「……こういった魔物の素材は武器に使ったりしないんですか?」

「……例えばどんなですか?」


 ギルネイさんの質問に俺は疑問に思いつつも答える。


「例えば炎を纏う剣とか?」

「竜種の素材をつかって……まあ、無理何ですけどね……下手をすると工房が焼けます」

「え?」

「考えなかった訳じゃ無いんですよ……試行錯誤した結果不可能でした、骨を組み込んで丈夫にしたり切り味を上げたりは可能で属性を武器に組み込む事は難しい……カインの武器は爪や骨で強化して有りますけどね」


 既に行使されて、結果不可能だったようだ。

 しかし、感慨深そうにギルネイさんは続ける。


「属性を付与させる事自体は魔石を使用した魔剣によって成功してますがね」

「そうなんですか……」

「しかし! 皮や甲殻になれば話しは別です!」


 ギルネイさんは興奮気味に話を続ける。


「皮や甲殻はそのまま使っても、魔石と合わせても、鉱石と合わせてもその力を発揮します」

「つまり、耐火性能をつけたり?」

「防具で言えばそうですね、このインビジブルリザードの皮なら恐らく迷彩効果が期待出来ます……まあ、あなた方使ってる服の方が能力は上でしょうけど……」


 ここまでの話を聞いて、俺の選択は売却一択……まあ、ステルスとか俺は使わないしな。


「じゃあ、肉以外は売却で!」

「かしこまりました……これ等全てで金貨225枚ですね」

「に、220万円……コカトリスの時と合わせて700万円……持ってるのは不安だな」


 余りの大金に俺が不安を口にすると、アイナさんがとある提案をしてくれた。


「でしたらー、ギルドでお預かり致しますよ?」

「へぇ、そんなシステムが有るんだねぇ」


 良くある銀行みたいな感じだろうか? ライ達には馴染みが薄いのかアイナさんの話を聞いている。


「ギルドカードに登録して置けば引き出しは簡単です!」

「ライ達はあんま馴染み無いだろうけど、俺の居た世界だと割りと普通なんだ……お願いしても良いですか?」


 俺の言葉にライ達は納得したのか、俺に一任してくれる。

 アイナさんにギルドカードとお金をお渡すと、ささっと手続きを終わらせてくれた。

 その後、幾らかお金を引き出しライとシノブを連れてギルドを後にしたのだった。

次回! 領主、再登場(家族を連れて)

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