30 本屋巡り~魔道書より断然絵本~
アストラもイヴリンも無事お迎え完了で有る。
現在、俺はヨミに腕を引かれて本屋の有る通りへと向かって居た。
見た目相応の反応で可愛いが、俺より長生きで有る。
「御母様の所に居た頃は、御母様が持ってきてくれた絵本を暇さえ有れば眺めて居ましたわ」
「そうだねぇ、特に女の子が冒険する物語がお気に入りだったね」
「前足の鎌でぇ、必死に頁を捲る姿は可愛かったわぁ」
「それは見てみたかったな……お? 見えてきたぞ」
ヨミの昔の話しを聴きながら歩いていると、早速一件本屋を発見した。
発見したのだが……
「何か……怪しい雰囲気だな……」
「まあまあ、掘り出し物が有るかも知れないし入って見ようか!」
「……絵本がある雰囲気では有りませんけど?」
ライを先頭に俺達は怪しい本屋へと足を踏み入れた。
「……いらっしゃい……」
「うわぁ……中まで雰囲気有るな……」
「……ただならぬ空気……」
店主も店の中も怪しさ満載である。
一応駄目もとで店主に絵本が無いか聞いて見る。
「あのすいません」
「何か……お探しですかな」
「絵本は有りますか?」
「ふふふ、この店を選んだからには魔道書に……絵本?」
おお! 怪しい雰囲気の店主が目を点にしている。
「んんっ、この店は王都でも唯一魔道書を置いている書店でございます……改めてお聞きします、お探しの物は?」
「絵本です……」
「……」
「聞こえませんでしたの? 絵本を探しておりますのよ!」
店主さん、すまん魔道書より俺達は絵本が欲しいんです。
結果、ヨミに急かされて店主さんは絵本を数冊持ってきてくれた。
「はぁ、うちにある絵本はこれが全部だよ」
「少ないですわね」
「代わりにちょっと特殊なのさ……魔道書の応用で魔力を使って作って有るからね」
店主の言葉に、ヨミが早速一冊開いてみる。
すると、ヨミは目を輝かせる。
「これ、絵が動いていますわ……!」
「そう、絵本作家と共同して作った魔動絵本……まあ協力してくれる物好きな絵本作家が少なくてあんまり数は無いけどね」
「そもそも何で魔道書は数が少なくなったんですか?」
俺は唯一の魔道書取り扱い店と言っていた事を思い出して店主に聞いてみた。
店主は困ったように頭を書くと話しを聞かせてくれた。
「昔はもう少し魔道書って物は流通していたんだ、魔法が不得手な人でも手軽に魔法が使える便利な物としてね」
「それが今はこの店しか取り扱わなくなった……」
「魔道書を悪用した呪術が流行ったんだその影響を諸に受けてね……魔道書は呪いの書だと言う風潮が世間を占めちまったのさ」
店主の話しを聞き終わると、絵本を見ていたヨミが不思議そうに話しに入ってくる。
「でしたら、この魔動絵本を売れば良いのではなくて?」
「……ほう、確かにしかし、また呪術に利用される可能性も……」
「これは光魔法の応用ですわよね? なら、呪術は心配無いと思いますわ」
ヨミの言葉に店主はハッとした表情をする。
「良く分かったな光魔法だと……しかし、確かに光魔法と呪術は相性が悪い……それなら求められていない魔道書を書くより……誰かが楽しめる魔動絵本を書く方が良い……」
「とても素敵な事だと思いますわ」
「だが、協力してくれる物好きが居ないんだが……」
店主の言葉にヨミはなんでも無いように言う。
「それなら売り込め良いだけですわ……少なくとも一人は物好きな絵本作家ぎ居られるのでしょ?」
「……成る程まずは作品を知って貰うって訳か」
「孤児院や学校で実際に触って貰って、安全性や読み心地を確認して貰うわけだな」
俺の言葉に頷くヨミ、俺達の居た世界でもそう言う商法は一般的だった。
ヨミの提案を聞いた店主は「よし」と言ってやる気に満ち溢れた表情で立ち上がる……最初は怪しい雰囲気だと思ったが今は怪しさは感じない。
「ありがとうな嬢ちゃん、早速アイツにもその話しをしてみるよ」
「……わたくしはただ、素敵な絵本が惜しいと思っただけですわ」
「……良かったらその絵本は貰ってくれ……今回のお礼だ」
「ええ? い、良いんですの?」
店主の申し出に困惑するヨミ、俺は見かねてヨミの頭を撫でる。
ヨミが俺を見上げてくるので頷く。
「分かりましたわ……有りがたく貰い受けますわ」
「ああ! その方が絵本も報われる」
こうして俺達は魔道書を売る本屋を後にしたのだった。
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一つ目の本屋を出て、大事そうに魔動絵本を一冊抱き抱えているヨミに思わず頬が弛む。
因みに他の絵本はライの空間魔法バックに入れてある……因みにそのバックを持っているのはシノブ……下っ端の宿命で有る。
シノブは役に立つが嬉しいようで、ちょっと表情が明るい。
「さあ、ドンドン行きますわよ!」
「ヨミちゃん、あんまり急ぐとぉ転んじゃうわよぉ」
「……本屋は逃げない……」
ユキとシノブがそう言いながらヨミにピッタリと付いて行く。
ライと俺はその後ろを並んで歩いている。
「ふふ、ヨミが楽しそうで何よりだね? マヒトくん?」
「ああ、そうだな……ライは何か無いのか? 好きなこととかさ」
俺の言葉にライは考える素振りを見せると、笑顔で答える。
「私はこうして皆で楽しく居られたらそれで満足なんだ……これ以上に求める物なんて無いよ」
「……そうか」
そう言って遠くを見るライの表情は少し寂しそうに感じた。
だから、俺はそっとライの手を握る。
「マヒトくん?」
「大丈夫だ……ライ、俺達全員はずっと一緒だ……」
「……! そうだね、ありがとう」
俺の言葉にライは手を強く握り返して、微笑み返してくれるのだった。
それから暫く、色々な本屋をまわって絵本を購入して歩いていた。
絵本はほとんどシノブが持っているバックに入っているためかさばることは無い。
「ふふ、満足な買い物が出来ましたわ!」
「しかし、随分と買ったなぁ……クルーデンに戻ったら本棚を買わないとな」
「そ、それは名案ですわね!」
俺の言葉に興奮気味に頷くヨミの頭を撫でながら、昼ご飯の為に屋台が並ぶ市場へと来ていた。
それぞれにお金を渡しておき好きに気になるものを買ってくるようにした。
「ヨミのコミニュケーション能力向上も兼ねてだ、ユキも付いていってくれ」
「分かりましたわ」
「そうねぇ、久々に二人でお出掛けだわぁ」
「た、確かに早く行きましょう! 御姉様!」
ユキの腕を引っ張っていくヨミを見送り、俺達も屋台を物色し始める。
暫くすると、シノブも別れて買い物をすることになった。
「はは、私達も久しぶりの二人きりだね……」
「そうだな……行こうか、ライ」
「うん」
思ったより人が多いため思わずライの手を引っ張る。
ライも意図を察してか大人しく付いて来てくれる。
「はは、何だか気恥ずかしいね」
「あ、ごめん」
顔を赤くするライの言葉に手を離そうとするがライが強く握って離さない。
「このまま……」
「……分かった」
それから、屋台を回って色々買って食べてお腹満たしていく。
その際に一つの露店に視線が止まる。
「どうかしたのかい……この露店はアクセサリーを売ってるみたいだね」
「見覚えのある花のアクセサリーがあったからつい」
その露店で見つけたのはジニアを模したネックレスだった。
俺はそのネックレスを二つ手に取ると、店主に渡してお金を払った。
「二つで銀貨6枚だけど、カップルみたいだし半額の銀貨3枚で良いよ」
「いや、カップル……」
「本当かい? ありがとう」
店主の言葉を否定しようとしたが、その前にライが声を被せてしまう。
そのまま商品を受け取ると、ライと露店を離れる。
「どうしてネックレス何て買ったのかな?」
「ジニアの花言葉には“幸福”や“絆”が有るんだ他に“変わらぬ想い”とかね」
「ふーん、君の想い人の少女……確かユイちゃんだったかな? 彼女に……」
「いや、これは君にだよライ」
「……あげ……え?」
俺の言葉を聞いて、驚いた顔で動きが止まる。
そんなライに構わず俺はそのまま話し続ける。
「俺はさっきの言葉を違えるつもりは無い……これはそれの決意の証だ……だから、君に持っていて貰いたい……ダメかな?」
「ダメじゃないよ……付けて貰ってもいいかな?」
ライは恥ずかしそうにそう言う。
俺はその言葉に頷くと、ライの首にネックレスを付ける。
「ライ、俺は絶対に君を一人にしない」
「うん、信じてるよ……マヒトくん」
俺自信もネックレスを付けて服の中に収まるようにしまう……ライも同じ様にネックレスを服の内側にいれる。
俺達は手を繋いだまま、ユキ達と合流した為質問責めにされたのは別の話し。
二人は付き合ったとかでは無いよ……ただ想いが寄り添っただけ……今はまだ……




